知ってますかAEDの原理、正しく使えますかAED?
国試には、その時代背景に合わせた問題が出題されます。既に現場で活躍している薬剤師の方には、「いまの時代に問われている知識や資質」を再確認し、新人薬剤師を採用する会社・店舗の薬剤師の皆さんには、新人薬剤師さんとのコミュニケーションに役立てていただきたいと思います。今回は問題200-201について解説します。
問200~201
60歳男性が処方箋を持ってかかりつけの薬局を訪れた。処方箋を受付に渡そうとしたところ、男性は胸を押さえながら床に倒れた。男性に意識はなく、正常な呼吸も確認できなかった。薬剤師は、同僚に119番通報及び自動体外式除細動器(AED)の手配を依頼し、AED の到着まで胸骨圧迫を開始した。なお、心肺蘇生は日本蘇生協議会ガイドライン2015 に基づいて実施した。
問200(実務)
AED到着後、手順に従い電極を装着し、機器による判定の後、薬剤師は電気ショックを実施した。電気ショック後に行うべきことはどれか。1つ選べ。
- 呼吸が再開するまで手を触れずに待つ。
- 安全のためにAEDの電源を切る。
- AEDの電極パッドを、次の電気ショックに備えて交換する。
- 別のAEDを持ってくるように依頼する。
- 胸骨圧迫を再開する。
解答
解答 5
問201(物理)
この傷病者に用いたAEDの1回の電気パルスの平均電圧は1,000 V、平均電流は15 A、通電時間は10 msであった。1回のパルスが傷病者に与える仕事の大きさに最も近い値はどれか。1つ選べ。傷病者に取り付けた電極間の抵抗は67Ωとする。
- 2.2 mJ
- 150 mJ
- 2.2 J
- 150 J
- 223 J
解答
解答 4
AEDの使い方や電気パルスの仕事(エネルギー)量の計算ができるようにしましょう。
問200 解説
- 誤。傷病者に触れないように注意が必要なのは、AEDによる心電図解析を行う際と、電気ショックを行う際である。
- 誤。容態が急変する可能性があるため、意識が回復しても救急隊員の指示があるまではAEDの電源を切ったり、電極パッドを体から外してはいけない。
- 誤。電気ショック後、優先的に次の電気ショックに備えての電極パッドの交換は必要ない。しかし、電極パッドは使い捨てタイプのため、一度使用・開封したものは使用後、交換が必要となる。
- 誤。AED本体は、一般にバッテリーが満タン状態であれば、100~200回の電気ショックが可能である。
- 正。電気ショック後、すぐには正常な心拍に戻りにくいため、胸骨圧迫等の心肺蘇生法の継続が必要である。
問201 解説
AEDの電気ショックに必要な仕事の大きさは、電力(W)×時間(s)で表される。電力とは、単位時間あたりの電力量であるため、電気分野における仕事率と考えられる。この仕事率のSI組立単位であるワット(W)は、単位時間に行う仕事の大きさ(J・s-1)として定義されている。また、電力(W)は電流(A)×電圧(V)で表されるため、傷病者に用いたAEDの1回の電気パルスが傷病者に与える仕事の大きさ(J)はV(V)・I(A)・t(s)で表される。ただし、V は電圧、I は電流、t は通電時間である。
仕事の大きさ(J)= V(V)・I(A)・t(s)
=1000 V ×15 A ×10 ms
=1000 V ×15 A ×10×10-3s
=150 J
よって、電気パルスが傷病者に与える仕事の大きさは150 Jである。
AEDの基本情報について確認しましょう。
AED(自動体外式除細動器)とは、心室細動等で心臓がポンプの役割を果たさなくなった際、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器です。
現在では、医療従事者ではない一般市民でも使用できるようになり、病院や診療所、空港、駅、スポーツクラブ、学校、公共施設などを中心に数多く設置されています。薬剤師としては率先して使用できるようにしておきたいですね。
体外式除細動器を使用する際に、思い出して欲しいエネルギーの単位
通電の際、エネルギーの単位にはJ(ジュール)を用います。1Jは、1A(アンペア)の電流が1Ω(オーム)の抵抗中を1秒間流れるエネルギーのことです。
医療用の体外式除細動器には、通電の際にエネルギーを設定するつまみがあり、患者の背景(年齢、体重など)によって使い分けています。薬剤師へのタスクシフティングが叫ばれている中、装置に記載のある数値の単位の意味が分かっていると、頼りになる医療従事者たり得るのではないでしょうか。
日本光電工業株式会社:デフィブリレータ TEC-5600シリーズ カルジオライフ