我が国の死因上位である肺炎は、ワクチンで予防できる!?
国試には、その時代背景に合わせた問題が出題されます。既に現場で活躍している薬剤師の方には、「いまの時代に問われている知識や資質」を再確認し、新人薬剤師を採用する会社・店舗の薬剤師の皆さんには、新人薬剤師さんとのコミュニケーションに役立てていただきたいと思います。今回は問題227について解説します。
第106回国試【問227】
70歳男性。10年前から2型糖尿病と前立腺がんに罹患し治療を受けている。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断を受け、治療中である。今回友人より、「あなたは70歳だけど肺炎球菌ワクチンの接種をしないのか」と聞かれ、ワクチン接種の相談に薬局を訪れた。患者はインフルエンザワクチンを接種したことはあるが、肺炎球菌ワクチンを接種した経験はなかった。
肺炎球菌ワクチン及びこの患者のワクチン接種に関する注意点について、正しいのはどれか。1つ選べ。
- 糖尿病の治療中のため、肺炎球菌ワクチンの接種不適当者である。
- 前立腺がんの治療中のため、肺炎球菌ワクチンの接種不適当者である。
- 肺炎球菌ワクチンは、室温保存できる。
- 肺炎球菌ワクチンは、筋肉内注射できる。
- インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンは混合して投与できる。
解答
解答 4
高齢者への肺炎球菌ワクチンの接種方法や注意点について理解しましょう。
解説
- 誤。肺炎球菌ワクチンは、糖尿病、心疾患、腎不全、肝機能障害等の基礎疾患のある患者、高齢者などの肺炎球菌により重篤疾患に罹患する危険が高い者の肺炎球菌による感染症の予防に重要である。
- 誤。肺炎球菌ワクチンの接種不適当者は、プレベナー13ⓇとニューモバックスⓇNPで異なるが、前立腺がん治療中の者は接種不適当者に該当しない。ニューモバックスⓇNPの接種不適当者は、2歳未満の者、明らかな発熱を呈している者、重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者、本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者などである。
- 誤。肺炎球菌ワクチンのうちニューモバックスⓇNPは8℃以下、プレベナー13Ⓡは2~8℃で保存するため、日本薬局方における室温(1~30℃)での保存は適切ではない。
- 正。肺炎球菌ワクチンは、筋肉内または皮下に注射する。
- 誤。ワクチンの同時接種(2種類以上のワクチンを別々の注射器や器具を用いて、同一の対象者に対して一度の受診機会に接種すること)は可能であるが、肺炎球菌ワクチンを他のワクチンと混合して接種してはならない。
高齢者は疾病予防が重要です。
我が国の死因上位である肺炎の予防策の1つとして、肺炎球菌ワクチンがあります。超高齢社会である我が国において、高齢者に対する疾病予防が非常に重要である一方、高齢者用肺炎球菌ワクチンの接種率が低いことが課題となっています。高齢者では、問題中の患者さんのように疾患の治療中にワクチンの接種を希望されるシチュエーションが多いため、患者さんの背景・状況から判断した適切なワクチン接種の情報が提供できるようにしましょう。
国民の肺炎予防・ワクチンに対する意識は?
新型コロナウイルス感染症(COVID19)が流行した影響により、肺炎予防・ワクチンに対する意識が今後も高まると予想されます。薬剤師はワクチン接種に対する知識を深め、積極的に疾病予防や健康増進に関与することが求められるでしょう。「患者さんの相談にのる」、「正しい情報を提供する」など薬剤師もワクチン接種に積極的に参加できるようにしましょう。