バイオ医薬品について正しい説明ができますか?
国試には、その時代背景に合わせた問題が出題されます。既に現場で活躍している薬剤師の方には、「いまの時代に問われている知識や資質」を再確認し、新人薬剤師を採用する会社・店舗の薬剤師の皆さんには、新人薬剤師さんとのコミュニケーションに役立てていただきたいと思います。今回は問306-307について解説します。
問306~307
60歳女性。10年前に2型糖尿病の診断を受けた後、インスリン補充療法による薬物治療を行っている。薬剤師が面談したところ、患者は毎月の支払費用を負担に感じていたとのことであった。そこで、医師にインスリングラルギンのバイオ後続品に切り替えることで医療費軽減になることを提案し、医師はバイオ後続品への切り替えを認めた。薬剤師は、このバイオ後続品の添付文書等を確認した上で、患者に説明することになった。なお、併用薬はない。
問306(実務)
このバイオ後続品に切り替えるにあたり薬剤師が説明する内容として正しいのはどれか。2つ選べ。
- 今まで使っていたお薬と比べて効果に変わりないことが確認されています。
- 今まで使っていたお薬と比べて低血糖などの副作用は同様ですので、切り替えた後も同様に注意して生活してください。
- 今まで使っていたお薬より安定性が悪いので、開封後も冷蔵庫で保管してください。
- 今まで使っていたお薬と主成分と添加剤は全く同じです。
- 今まで使っていたお薬と同じ製造販売業者のものです。
解答
解答 1、2
問307(法規)
このバイオ後続品は、先行バイオ医薬品の特許期間、再審査期間の終了後に開発されたものである。バイオ医薬品の場合、一般的な化学合成の医薬品とは特性が異なるため、バイオ後続品の製造販売承認申請に必要な資料は、通常の後発医薬品とは異なる。次のうち、後発医薬品の承認申請には不要であるが、バイオ後続品の承認申請に必要になる資料はどれか。1つ選べ。ただし、吸入粉末剤の後発医薬品は例外とする。
- 製造方法に関する資料
- 費用対効果に関する資料
- 生物学的同等性に関する資料
- 臨床試験成績に関する資料
- 添付文書等記載事項に関する資料
解答
解答 4
後発医薬品とバイオ後続品の特徴の違いを知り、その特性を説明できるようにしましょう。
問306 解説
バイオ後続品(バイオシミラー)とは、国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質の品質、安全性及び有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発される医薬品である。なお、「同等性/同質性」とは、品質特性において類似性が高く、品質特性に何らかの差異があったとしても、最終製品の臨床的有効性・安全性に影響を及ぼさないと科学的に判断できることを意味する。
問307 解説
バイオ後続品の開発では、複雑な構造、生物活性、不安定性、免疫原性等の品質特性から先行バイオ医薬品との同一性を実証することが困難な場合が少なくなく、化学合成医薬品の後発品(後発医薬品)と同様のアプローチは適用できないとされている。そこで開発段階では、生物学的同等性試験ではなく、臨床試験を行い、その有効性等を確認することとなる。
なぜバイオ医薬品は、先行バイオ医薬品と有効成分が同一ではないのでしょうか?
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同一の有効成分を含むのに対し、バイオ後続品は、先行バイオ医薬品と有効成分が同一ではありません。バイオ医薬品の有効成分であるタンパク質は、その構造が複雑であるため、先行バイオ医薬品の有効成分と同一のものを製造することができないからです。そこでバイオ後続品では、先行バイオ医薬品と同等の有効性を持つ製剤として、開発・販売されています。
薬剤師の専門性を生かし、バイオ医薬品の選択を!
バイオ医薬品の登場により、今まで治療が難しかった病気の改善が期待されており、日本だけでなく、世界的に多くのバイオ医薬品が使用されるようになっています。しかし今回の問題にもあるように、バイオ医薬品は非常に高額です。一般的に医薬品の価格を抑えるならジェネリック医薬品という選択肢がありますが、そのジェネリック医薬品に比べ、バイオシミラーの使用環境は整っているとは言えない状況です。
医薬品の効能・効果や副作用を知り、服薬指導に生かせるだけでなく、経済的な問題にも目を向け、情報提供できる薬剤師でありたいですね。