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国家試験 注目の問題

更新日: 2021年7月22日 堀川 絵里

情報(SNS含む)を正しく整理して、正しく伝えるのは薬剤師の使命です!

第106回薬剤師国家試験【注目の問題】の画像

国試には、その時代背景に合わせた問題が出題されます。既に現場で活躍している薬剤師の方には、「いまの時代に問われている知識や資質」を再確認し、新人薬剤師を採用する会社・店舗の薬剤師の皆さんには、新人薬剤師さんとのコミュニケーションに役立てていただきたいと思います。今回は問324-325について解説します。

問題324~325

震度7の地震が発生した。避難所では、臨時の診療所が開設されており、薬剤師が災害救助要員として参加した。この地域では、吐き気や咽頭痛の症状と共に微熱や悪寒がみられるというウイルス感染症が流行し始めていた。この感染症について、避難者の間ではSNS(Social Networking Service)などで、不正確な感染対策の噂が広まっていた。


問題324(法規)

避難者から「感染対策について色々な噂を聞いて不安になった」と相談を受けた薬剤師の対応として、適切でないのはどれか。1つ選べ。

  • 現時点で判明していること、していないことを整理して伝えた。
  • 薬剤師は法的に薬に関する相談以外には答えることはできないと伝えた。
  • 避難者が聞いた噂や不安になった理由について傾聴した。
  • 避難者が不安になった理由について他職種と共有した。
  • これからも不安なことがあれば遠慮なく相談して欲しいと伝えた。

解答

解答 2

問325(実務))

その後、このウイルスはノロウイルスであることが判明した。この薬剤師の感染対策に関する対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

  • グルタラールでうがいを励行するよう指示した。
  • クロルヘキシジングルコン酸塩はノロウイルスの消毒には有効ではないと説明した。
  • メタノールで手指の消毒をするよう指示した。
  • 床に嘔吐物が付着した場合は、塩素系漂白剤を使用して消毒するよう指示した。
  • 石鹸とベンザルコニウム塩化物の配合液が消毒に有効であると説明した。

解答

解答 2、4

適切な情報提供だけでなく、その情報のエビデンスを評価し、整理することはできていますか?

問324 解説

避難所での薬剤師は、薬に関する相談をはじめ、感染対策や被災者が抱える不安への対応等も求められている。本問では、不正確な感染症対策の噂が広まっていたため、状況を確認しつつ、情報の整理や相談対応が重要である。
他にも①一般用医薬品の保管・管理及び被災者への供給、②医薬品や健康に関する相談、③衛生管理及び防疫対策など、さまざまな活動が求められている。

問325 解説

  • 不適切。グルタラールは、人体には使用できない。グルタラールは高水準消毒薬であり、内視鏡の消毒に使用する。
  • 適切。クロルヘキシジングルコン酸塩は、低水準消毒薬であり、MRSAなどの一般細菌及びヘルペスウイルスなどには有効だが、ノロウイルスには無効である。
  • 不適切。手指消毒にはエタノールを用いる。
  • 適切。塩素系漂白剤には、次亜塩素酸ナトリウムが含まれている。次亜塩素酸ナトリウムは、中水準消毒薬に該当し、ノロウイルスなどのウイルスで汚染された環境の消毒に有効である。
  • 不適切。ベンザルコニウム塩化物は界面活性剤に分類されている。石鹸との併用により、ベンザルコニウム塩化物の効力が減弱するため混合して使用しない。

求められる情報リテラシー(各種の情報源を適切に利用し、必要な情報を収集・整理・発信する能力)!

本問題は災害時の薬剤師活動に関連したものですが、問題自体の難易度は低く、正答率も高かったです。しかし、「SNS上で不正確な情報が上がっていた」といった背景は、現実でも起きていそうなリアルな状況ではないでしょうか。
災害時であっても、薬剤師の情報提供は正確であるべきです。しかし、日常も含めて、薬剤師が入手する情報にはエビデンスの高いものもあれば、経時的に変更される可能性の高いもの、主観的なもの、それらの判断が付きにくいものなど様々です。どんな状況でも薬学の専門家として、最新かつ正確な情報を収集し、適切に利用し、相手に合わせて整理して、ベストな情報提供に繋げていきたいですね。

薬剤師による情報提供・薬学的管理指導とは?

SNSも含め、世の中には情報があふれています。医薬品に関する情報も例外ではありません。情報量だけでいえば、薬剤師個人の頭の中よりネット上の情報の方が多いかも?とも言われ、薬剤師の価値に疑問を持つ人もいらっしゃるかも知れません。しかし、フェイクニュースなんていう言葉もあるように、すべての情報が正確という訳ではないことも忘れてはいけません。
この情報社会で薬剤師による情報提供・指導とは、多すぎる情報の中から、患者さん個々の置かれている状況に応じ、正確な情報を、優先順位をつけて抽出し、相手にとってわかりやすい言葉で提供していくことで、その情報価値を高めることにあるのかもしれません。

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堀川 絵里
ほりかわ えり

学校法人 医学アカデミー 薬学ゼミナール 教育課、講師(法規・制度・倫理)、薬剤師。共立薬科大学大学院(現・慶應義塾大学大学院)卒業。

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