コロナ禍で行われた国試で感染対策に関する問題が出題!
国試には、その時代背景に合わせた問題が出題されます。既に現場で活躍している薬剤師の方には、「いまの時代に問われている知識や資質」を再確認し、新人薬剤師を採用する会社・店舗の薬剤師の皆さんには、新人薬剤師さんとのコミュニケーションに役立てていただきたいと思います。今回は問345について解説します。
問題345
医療従事者の院内感染対策に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 標準予防策(スタンダードプリコーション)は、院内感染予防の基本的な方策として入院患者に適用される。
- 手袋を適切にはずした後は必ずしも手指消毒は必要ない。
- 季節性インフルエンザに罹患した患者に接する場合、N95 マスクを着用する必要がある。
- 結核患者の病室に入る場合、サージカルマスクを着用する。
- 病院職員が季節性インフルエンザに罹患した場合、数日間は就業を制限する。
解答
解答 1、5
選択肢『1』で『引っかかる』受験生が多数発生!
解説
- 適切。標準予防策(スタンダードプリコーション)は、感染症の有無にかかわらず全ての患者に対して全ての職員が実施する感染予防の基本であり、入院患者にも適用される。
- 不適切。手袋を着用していても手指が汚染される可能性があるため、手袋を適切にはずした後、手指消毒を行う必要がある。
- 不適切。季節性のインフルエンザに罹患した患者に接する際は、サージカルマスク〔細菌を含む粒子(粒子径4.0~5.0μm)を95%以上除去できる〕の着用による対策が推奨されている。
- 不適切。結核患者の病室に入る場合、医療従事者の身を守る感染防護具として、サージカルマスクでは十分な感染対策とならないため、N95マスク〔粒子径0.3μmを95%以上捕集できる〕を着用する。
- 適切。病院職員が季節性インフルエンザに罹患した場合、感染拡大防止の観点から数日間就業を制限する必要がある。また、勤務中に濃厚接触者がいる場合、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与をすることがある。
院内感染対策の基本事項を確認しましょう!
院内感染予防
(1)標準予防策(スタンダードプリコーション)
感染予防に関する基本的対策であり、感染症の有無にかかわらず、すべての患者に対する予防策である。感染を予防する目的で、手袋、マスク、ガウンなどの着用基準が定められている。
(2)普遍的予防策(ユニバーサルプリコーション)
米国疾病管理予防センターの普遍的予防策は、主にHIV感染予防のための血液予防策として、医療従事者の保護を中心とした考えである。
(3)感染経路別予防策
感染経路を接触感染、飛沫感染、空気感染に分類して対応する予防策である。それぞれの病原体の感染経路を知り、その経路を遮断することによって、効果的な感染対策が実施できる。
臨床で経験する内容が国試に出題されています!
選択肢2~5で問われている内容についても、実務実習での体験や指導薬剤師との会話が国試での得点を左右しているかもしれません。『手袋をはずした後の手指消毒』・『病原体にあったマスク選び(N95マスク・サージカルマスク)』・『風邪様症状(季節性インフルエンザ等)による就業制限』は薬剤師として臨床に従事している場合でも知っておくべき知識ですが、それと同時にコロナ禍では、患者からこの様な内容の質問をされた経験のある方も少なくないと思います。他にも、感染対策は、手指消毒の手順やマスクの装着方法など多岐に渡り、薬剤師の方々も適切に応対できるか、わかりやすく説明できるか等、不安があるかも知れません。正確な知識と同時に真摯な応対で患者の不安を取り除ける薬剤師が求められていると思います。