第1回 調剤報酬改定2018のポイント解説
次々とトピックスが報じられる2018年度調剤報酬改定点について、医薬ジャーナリストの藤田道男氏に解説いただきます。第1回目は薬剤師が必ず押さえておきたい、主要な改定点のまとめをお届けします。
中医協は2月7日、2018年度診療報酬改定を答申しました。調剤報酬については、大型門前薬局の評価引き下げを主眼とした調剤基本料、基準調剤加算の廃止に伴う地域支援体制加算の新設、かかりつけ薬剤師の評価など、全体として「対人業務」「医療機関等との連携」を重視した内容になりました。
「調剤基本料」の大幅減算、新設された「地域支援体制加算」は要実績
調剤基本料関係・調剤基本料
調剤基本料はこれまでの6区分から「基本料1」「基本料2」「基本料3
」「特別基本料」の4区分に再編。
「基本料2」は「月2,000回超」における集中率を90%から85%に引き下げ。
4,000回超の場合、医療モール等におけるすべての医療機関からの処方箋を合算、門前薬局の場合も同一グループの保険薬局分を合算することになりました。
「基本料3」は同一グループの保険薬局の受け付け回数が「4万回超、40万回以下」と「40万回超」に区分。集中率は「85%超」に引き下げ、それぞれ20点と15点となりました。
「特別調剤基本料」は「医療機関と不動産取引等特別な関係にある保険薬局で集中率95%超」のいわゆる敷地内薬局が相当します。
医療資源が少ない地域の薬局に対する特例除外については、特定の区域に医療機関が10施設以下で200床以上の病院が存在しないことに加え、処方箋受け付け回数が月2,500回を超えない場合に適用されます。
調剤基本料の25%減算だった未妥結減算ルールは、「かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に関する業務を実施していない場合」の50%減算に統合。「単品単価契約率」や「一律値引き契約に係る状況」を報告しなかった場合も同様に調剤基本料の50%が減算されます。これまで以上に購入価格交渉での透明化が求められそうです。
またかかりつけ薬剤師業務などの実績がある場合は「基本料1」に復帰できた「特例除外」が廃止されました。
・地域支援体制加算
基準調剤加算に代わって新設された「地域支援体制加算」。これまでの基準調剤加算と違って「基本料1」を算定していなくとも算定できるようになりましたが、その要件を満たすのは容易ではなさそうです。
算定要件としてこれまでの基準調剤加算の内容のほかに8項目の地域医療貢献の実績が求められ、「薬剤総合評価調整管理料」を算定している医療機関と連携して6種類以上の薬剤を2種類以上削減した場合に算定できる「服用薬剤調整支援料」や「麻薬指導管理加算」など医療機関と密接に連携する必要がある項目があるためです。
「基本料1」を算定している薬局は麻薬小売免許、在宅実績、かかりつけ薬剤師届出で算定できます。
注目の「後発医薬品調剤体制加算」はさらに引き上げ
・後発医薬品調剤体制加算
これまでの2区分が3区分となり、数量割合はそれぞれ75%以上、80%以上、85%以上に引き上げられました。また後発医薬品への置き換えが2割以下の薬局は調剤基本料から2点減点されます。医科の一般名処方加算も引き上げられ、政府目標の2020年までに80%以上に向けた対応です。
・分割調剤
分割調剤については、普及に向けて「分割調剤に係る処方箋」の様式を追加すると同時に、具体的な取り扱いを明確にしました。分割の回数は3回までとし、薬剤師は患者に同じ薬局で調剤を受けるよう指導します。患者が別の薬局で調剤を受けることを申し出ている場合は、その薬局に調剤の状況や必要な情報をあらかじめ提供する必要があります。
・調剤料
調剤料は院内外格差で問題視されたところですが、「15日分以上21日分以下」「22日分以上30日分以下」「31日分以上」がそれぞれ3点、2点、1点の減額となりました。14日分以下のいわゆる「日数倍数制」が温存されたのは激変緩和の措置と言えます。また一包化加算も据え置きとなりました。
かかりつけ業務への加算がさらに明確に
薬学管理料
・薬剤服用歴管理指導料
お薬手帳の活用薬剤服用歴管理指導料については「原則、過去6カ月以内にお薬手帳を持参して同じ薬局を繰り返し利用した場合」に相当する現行の38点を41点に、「患者の初回来局時」に相当する現行の50点を53点に、それぞれ引き上げます。
一方、お薬手帳の活用実績が認められない薬局として「6カ月以内に再度、処方箋を持参した患者のうち、お薬手帳を持参した患者割合が5割以下」などの場合は、13点の特例となります。
・かかりつけ薬剤師指導料
かかりつけ薬剤師の施設基準では「当該薬局に6カ月以上」の在籍期間要件は「1年以上」に延長されました。2016年改定時の厚労省案には「1年以上」となっていたこともあり、当初案に戻ったと言えます。
一方、「当該薬局に週32時間以上」の勤務時間については、育児・介護休業法に定める短時間勤務を行う際の例外規定として、週32時間以上勤務する他の薬剤師を届け出た場合、同法で定める期間中は「週24時間以上かつ週4日以上」となります。
また、かかりつけ料の同意を取得する際、かかりつけ薬剤師の必要性や患者の要望などを確認することを要件化し、同意書の様式を整備することになりました。
・服用薬剤調整支援料
新設される「服用薬剤調整支援料」は、薬剤総合評価調整管理料を算定する医療機関と連携し、医薬品の適正使用に貢献した薬局に対する評価として、月1回125点が算定可能になります。
薬剤師が連携する医療機関へ文書で提案し、調剤する内服薬が2種類以上減少した場合に算定するものです。従って医療機関との連携体制がポイントになります。
・重複投薬・相互作用防止等加算
残薬調整とそれ以外の場合に区分、それぞれ30点、40点となります。在宅患者も同様です。残薬調整に関してはあらかじめ医療機関と合意した方法により、その取扱い法を明確にすることになっています。
・服薬情報提供料
服薬情報等提供料については、「医療機関の求めがあった場合」と「患者やその家族の求めがあった場合、または薬剤師が必要性を認めた場合」とで2区分となりました。医療機関の求めがあった場合、医師のニーズを把握しながら文書を作成する手間がかかることなどを考慮したものです。
・在宅患者訪問薬剤管理指導料
これまで同一日に同一建物で指導した人数に応じた「同一建物居住者以外」と「同一建物居住者」の2段階でしたが、2018年度改定では、同一月に同一建物で指導した人数(単一建物診療患者)に応じた3段階の評価になります。
単一建物診療患者が1人の場合650点、2~9人の場合320点、それ以外の場合290点です。なお、介護保険の居宅療養管理指導は、507単位,376単位、344単位です。薬局の場合、圧倒的に居宅療養管理指導の算定回数が多く、こちらも注視する必要があります。
実質マイナス100億円近い引下げは大きな痛手、制度依存体質からの脱却は待ったなし
診療報酬の改定率で調剤は、0.19%増。医科、歯科、調剤の配分も1:1:0.3を維持することになりますが、外枠で大型門前薬局対策として、約0.32%、60億円(国費ベース)が引き下げられた結果、実質的にはマイナス0.13%、100億円近い引き下げとなりました。
調剤の外枠での引き下げは2016年度改定に続く2回目であり、医療費財源を薬価と調剤で補てんする手法が定着する懸念があります。薬価引き下げと相まって収益的には大きな痛手となることは想像に難くありません。
改定項目では、調剤基本料の特例除外が廃止されたことで「基本料1」へ復帰ができなくなることに加え、医療モールや同一グループで複数の薬局を開設して集中率を分散していた薬局への縛りを強くしたことの影響は大きいでしょう。
地域支援体制加算は「基本料1」以外の薬局でも算定できますが、8項目の地域医療への貢献体制をクリアするのは容易ではなく、とくに服用薬剤調整支援料や麻薬指導管理加算を算定するためには医療機関と密接な連携が必要です。この点は地域薬局よりも門前薬局が有利と言えます。
後発医薬品使用促進については、変更率が2割以下の薬局の基本料にはペナルティが科せられますが、これは変更率80%達成の暁に逆戻りしないようにするための布石と見ることができます。
いずれにせよ、「対物から対人」業務へのシフトが明確になった以上、薬学管理料をはじめとする業務を丁寧に実施することが肝要です。それによって今回のマイナスの影響をプラスに変えることも可能になります。また制度依存体質からの脱却も待ったなしの状況を迎えたと言えます。
>>2024年の診療報酬改定に関する記事をまとめました。
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