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どうなる!? 2025年の薬局薬剤師

更新日: 2017年1月10日 藤田 道男

意識改革、必須!薬剤師を取り巻く環境変化vol.1

第1回 意識改革、必須!薬剤師を取り巻く環境変化の画像

「調剤報酬の改定」「地域包括ケアシステム」など、薬剤師を取り巻く環境が劇的に変化しています。これから先、薬剤師の将来はどうなっていくのか?生き残りをかけ必要なスキル、知識は何なのか?医薬ジャーナリストであり、『次世代薬局研究会2025』代表の藤田道男氏に、今後10年の薬剤師業界の動向をお伺いしました。正念場を迎える薬局・薬剤師にエールを送る連載コラムです。

(参考)厚生労働省【患者のための薬局ビジョン】 

正念場を迎えた薬局・薬剤師

2016年は薬局・薬剤師にとって極めて重要な課題が提起された年となりました。ここ数年の調剤報酬改定や行政動向からある程度の方向性は見えていましたが、具体的に動き出したことで到達点が明らかになりました。

薬局・薬剤師が地域生活者の医療や健康に貢献し、確固たる存在意義を示すことができるかどうか、正念場を迎えたといえます。従来の業務の延長線上ではなく、どのような薬局を目指していくのか、どのような地域貢献を果たすのかという明確なビジョンのもとで具体的な行動に移すことが求められます。

すべての施策は地域包括ケアシステムへ

日本は総人口の減少と少子化・高齢化が並行して進行しています。こうした人口構造の変化は、経済活力や社会資本の維持に大きな影響をもたらします。中でも、社会保障制度の持続可能性が最大の焦点です。社会保障費は国家予算の3分の1を占めています。高齢化の進行とともに急速な増加が見込まれる医療・介護ニーズに対する政策課題が山積しています。

13年8月、社会保障制度改革国民会議は今後の社会保障制度改革の道筋を示した最終報告書をまとめました。
 その内容は、
 (1) 社会保障制度を1970年代モデルから2025年モデルへ
 (2)「病院完結型医療」から「地域完結型医療」へ
 (3) 健康の維持・増進、疾病予防の充実
 (4) 医療機能の分化と連携、地域包括ケアシステム構築
でした。この方向は、その後の日本再興戦略や骨太の方針(経済財政改革の基本方針)等に盛り込まれ、現在も継続中です。

報告書における到達目標は、医療、介護、住まいを一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築と健康寿命の延伸にあることは明らかです。16年度は、診療報酬(調剤報酬)改定において、明確に打ち出し、また健康ポート薬局制度創設など健康寿命延伸にも踏み出しました。

今後、診療報酬においては18年の介護報酬との同時改定を含め、20年、22年の3回の改定でその枠組みを固めることになります。直前の24年改定は、地域包括ケアシステムを遂行する上での診療報酬体系の総仕上げとして位置付けられるでしょう。

Point

少子高齢化社会が進み医療と介護の負担(社会保障費)がとてつもなく増大した。国は、地域包括ケアシステムという、高齢者が住み慣れた地域で最後まで暮らせるシステムで乗り切ろうと考えている。
すべての施策は「地域包括ケアシステムへの移行」を明確に示している。

2020年まで調剤報酬体系は大きく変わる

一方、こうした施策を実施するための財源は厳しい状況にあります。財務省は20年度にプライマリー・バランス(基礎的財政収支)を黒字化する目標を掲げています。消費税増税が先送りになり、経済面でアベノミクスの効果が判然としない中、目標達成には疑問符が付けられています。財務省はさらなる歳出抑制に動かざるを得ない情勢です。

こうした中、医療政策、とりわけ診療報酬や薬価については厳しい対応が予想されます。薬価については経済財政諮問会議での民間議員の提言を受けた「薬価の毎年改定」「効能追加などで市場が拡大した医薬品の取り扱い」が焦点ですが、これには総理が強い決意を持っていると伝えられており、業界にとっては厳しい結果が予想されます。

薬局・薬剤師業務については、患者のための薬局ビジョンで「立地から機能へ」「対物業務から対人業務へ」「バラバラ~ひとつへ」という方向性が示されました。これらは「門前で医師の処方通り調剤し、薬を渡せば終わり」―—といった従来の薬局業務のあり方からの転換を促すものです。

その具体的な現れが、16年度調剤報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」や基準調剤加算の要件見直しです。すなわち、調剤報酬については、従来のプロセス評価やストラクチャー評価から、実績評価、アウトカム評価の方向が鮮明になりました。今後2020年までの3回の改定では、調剤報酬体系は大きく変わっていくことが確実です。

Point

国は増大し続ける医療費を抑えたい。それゆえ、薬価・調剤報酬に対し厳しい姿勢を示している。
16年度調剤報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」や基準調剤加算の要件見直し同様、2020年までの3回の改定では大きく調剤報酬体系が変わることは確実。

ICT活用で薬剤師職能の向上。薬局独壇場の健康寿命延伸への取り組みも必須

地域包括ケアシステムを構築する上ではICT(情報通信技術)の活用がポイントです。多職種連携のもとでは医療・介護情報の共有化が必須です。現在、ICTを活用した医療情報の共有の普及に向け、規格の標準化や、セキュリティーの確保、基盤整備が進められています。

医療現場でも、電子カルテの普及が進んでいるほか、地域医療情報連携ネットワークの整備が図られるなど、医療情報の共有に関するICT技術の活用が進みつつあります。


16年度は電子お薬手帳が紙媒体と同様に認められました。また、処方せんの電子化についても環境整備が進んでいます。薬局側からすれば調剤情報の一元化とともに病名や検査値も含めた情報の双方向性が重要です。

ただ、ICT活用はそれ自体が目的ではなく、それによって薬局の機能や薬剤師職能が向上し、地域生活者の疾病治療や健康の維持増進に貢献することがゴールです。

同時に健康寿命延伸に向けた取り組みも必須です。この取り組みはまさに薬局の独壇場です。膨大な健康関連市場に薬局・薬剤師が積極的に介入することで地域貢献の場が広がります。

2025年まで残された時間はあまりありません。今こそあるべき薬局・薬剤師像に向かって意識改革と行動を起こす時です。

Point
ICTの活用で、薬剤師が地域医療に大きく貢献する時代がやってくる。同時に、健康寿命を伸ばす取り組みも必須。
2025年までにあるべき薬局・薬剤師像に向かい意識改革と行動が必要です!!

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藤田 道男
ふじた みちお

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、(株)じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために一般社団法人「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。
主な著書は『2025年の薬局・薬剤師 未来を拓く20の提言』『かかりつけ薬局50選』『残る薬剤師 消える薬剤師』など多数。

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