大予測!2018年診療報酬はどう変わる?vol.2
薬剤師の未来を予測する連載第2弾!2018年度の診療報酬・介護報酬の改定は、2025年度の「地域包括ケアシステム」確立に向けた具体的な方策が出ることが予想されます。医療ジャーナリストで、『次世代薬局研究会2025』代表・藤田道男氏がその内容を詳細に語ります。
2025年の地域包括ケアシステム確立に向け具体的な議論が活発化
年が明けて2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定に向けた議論がいよいよ本格化します。薬局・薬剤師にとって昨年2016年は薬局機能や薬剤師職能の在り方について、新たな展開が求められる節目の年となりました。18年度改定では25年の地域包括ケアシステムの確立に向け、診療報酬と介護報酬の整合性など、より踏み込んだ内容となることが予想されます。
具体的には、病院、診療所、薬局、介護施設、在宅、それぞれの役割分担を明確にし、連携できる仕組みを構築することに主眼が置かれます。また、診療報酬を議論する中医協と介護報酬を議論する社会保障審議会・介護給付費分科会との合同会議など、「医療と介護の連携や棲み分け」の議論も行われる見通しです。
同時改定に向けては、従来の議論を前倒ししてペースが早まりそうです。まず、17年当初から集中的に検討を始め、夏ごろまでに主な論点をまとめ、秋ごろまでに各検討項目の具体的な方向性について議論、年末までに基本方針を踏まえた対応が議論される運びです。
薬局ビジョンの方向性がより鮮明に
こうした中、調剤報酬ではどのような論点が挙げられるでしょうか。はっきりしていることは患者のための薬局ビジョンで示された「対物業務から対人業務へ」「立地から機能へ」「バラバラからひとつへ」の方向性がより鮮明になることです。
すでに調剤報酬はこれまでの「プロセス評価」から「アウトカム評価」の方向が打ち出されました。従来のように“届出”だけでは算定要件を満たさず、“実績”に基づいて評価される仕組みへと移行しました。消費税増税が先送りとなり、社会保障財源がひっ迫する中、点数の合理化(引き下げ)と評価(引き上げ)のメリハリをつけるのはやむを得ない状況です。
今後、社会保障財源がひっ迫する中、「患者のための薬局ビジョン」がより強く押し出され、調剤点数の合理化が進められる。結果、調剤報酬は実績に基づく「アウトカム評価」に変わっていく。
調剤料の日数倍数制の是正論議は必至
さて、調剤報酬絡みでは懸念材料があります。ひとつは調剤料、もう一つは薬価です。いずれも薬局経営に大きな影響を与える項目です。
まず、調剤料については昨年暮れの経済財政諮問会議で民間議員が、18年度診療報酬改定に際して、「費用対効果の観点から、院内、院外処方の在り方、技術料の在り方などについて議論したい」と踏み込んだ発言をしました。
諮問会議を所管する石原経済財政政策担当相は、これを是認した上で「諮問会議は日本のマクロ経済の司令塔、中医協は厚労大臣の諮問機関であり、言ってみれば現場」と表現し、両方で議論しても整合性に問題はないとの姿勢を示しました。
その後、日本医師会の横倉会長は安倍首相との電話会談で「診療報酬論議は中医協で行うことを確認した」と発表し、沈静化に努めましたが、民間議員の発言そのものについては「技術料の意味合いをどう捉えるかだと思う。『院内、院外処方の在り方、技術料の在り方』という表現だったので、技術料というのは調剤技術料のことと思う」とも述べ、調剤報酬については諮問会議の議論を容認した格好です。
ただ、調剤報酬体系そのものにも説得性を欠く要素が含まれていることを直視する必要があります。その典型が調剤料の日数倍数制です。患者側から見てもクスリの種類数と費用の面から不合理と映り、薬剤師側からも納得できる説明をするのが難しい状況です。
調剤料は薬学管理料とは異なり、作業フィー(ワーキングフィー)と位置付けられています。言わば調製行為に対する手間賃です。これに対し、薬学管理料は職能フィー(メンタルフィー)であり、薬学的な判断に基づいています。
日数倍数制は、識者の間ではかねてから問題視されていましたが、次回改定では避けて通ることは難しい状況です。この不合理性が医薬分業制度や薬局調剤に対する批判につながることも懸念されます。
そのため当事者たる日本薬剤師会が自ら説得力のある調剤報酬体系への改革を提案することが必要です。経済財政諮問会議などの外部からの圧力に屈して見直しが行われるような事態は避けなければなりません。
薬局としてはワーキングフィーに関わる部分に関しては、できるだけ合理化・効率化を図るため、自動化・ロボット化の導入などに着手する必要があります。
次回改定論議では、リフィル処方せんの導入も俎上に載る見通しですが、一定の患者を薬局・薬剤師に委ねることへの不信感を払拭することや再診料が減額となることに対する手当てもあり、次回改定で地ならしができるかどうかの段階でしょう。
調剤報酬では、かねてから問題視されてきた日数倍数制がついに議題にのぼりそうだ。そうなると医薬分業制度や薬局調剤に対する批判は避けられない。日本薬剤師会側から調剤報酬体系への改革案を提示するなど、踏み込んだ対応が必要になるだろう。
19年度から薬価の毎年改定へ。課題は?
薬価については、昨年暮れの塩崎厚労相、麻生財務相、石原経財政担当相、菅官房長官の4閣僚の間で、全ての医薬品を対象とした毎年の薬価調査、薬価改定などを盛り込んだ薬価制度の抜本改革に向けた基本方針がまとまりました。
効能追加などにより、市場が一定規模以上拡大した医薬品については、新薬収載の機会を最大限活用し、年4回薬価を見直すことや、実勢価格を薬価に適時反映するため、全品を対象に毎年薬価調査を行い、その結果に基づいて薬価改定を行うことなどを盛り込んでいます。具体的な内容については「17年度中に結論を得る」としており、中医協での議論に委ね、実施は19年度からとなります。
薬価が毎年改定されることになれば、薬価の高止まりや、薬局の資産価値の減少だけでなく、医療機関や薬局での在庫の絞り込み、ひいては緊急配送の増加など流通にも支障が出かねない問題です。
2019年度からは、全品毎年の薬価調査、年4回の薬価見直しが行われる予定だ。そうすると、薬価の高止まりだけでなく、在庫の絞込、緊急配送など流通にも問題が生まれる可能性もある。具体的な内容は、2017年度中に決定される。
薬局・薬剤師の在り方を問い直し、今こそ明確な旗印を掲げよう
薬局・薬剤師としては同時改定を見据えた対応が求められますが、同時に中長期的視点から薬局や薬剤師の在り方を問い直すことが必要でしょう。薬局の存在意義、目的を明確にした理念、ビジョンを明確に打ち出し、そのための行動指針を打ち立てることです。
理念、ビジョンが明確であれば、目先の事象に捉われることなく、あるべき姿に向かって邁進できます。薬局・薬剤師にとって真価を問われる時期に差し掛かっているからこそ、明確な旗印が必要になります。またそれを前面に出すことで有能な人材の確保にもつながります。