どうなる!? 2025年の薬局薬剤師

更新日: 2017年5月23日 藤田 道男

調剤報酬改定論議の行方vol.5

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薬局、薬剤師が将来直面する問題を予測し、その取り組み方を考えていく連載企画。今回は「2018年度同時改定」での調剤基本料などの具体的な内容について触れます。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 

医療費高騰は調剤報酬のせい!? 薬局インフラの活用を重要視

2018年度診療報酬・介護報酬同時改定は2025年の地域包括ケアシステム構築に向けた基盤整備の意味合いがあることはこれまでも本欄で触れてきたところですが( 第2回 大予測!2018年診療報酬はどう変わる?)、調剤報酬に関しても超高齢社会において薬局・薬剤師の社会的インフラをどう活用するかが大きなポイントになります。

その一方、調剤報酬を巡る環境も踏まえる必要があります。マイナス要因としては、2年前の薬歴未記載問題に続いて、今年は偽造薬問題、調剤報酬の不正請求問題が勃発しました。医療費高騰の要因が調剤報酬の伸びにあると指摘する主張や費用対効果の議論がより強まることが予想されます。

Point
2018年度の改定でポイントになるのは、薬局、薬剤師の社会的インフラ。さらに医療費高騰の原因が調剤報酬に求められる可能性もある。

「処方せん40枚につき1人」の基準はなくなり、リフィル処方せんが導入される!?

プラス要因としては、「処方せん40枚につき薬剤師1名の配置基準の見直し」「リフィル処方せんの導入」等を提言した厚労省医政局主管の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護等働き方ビジョン検討会」の報告書が注目されます。

報告書では、調剤を主体とした現在の業務構造を見直し、業務の効率化を進め、対人業務へのシフトを促した点が注目されます。業務の効率化の方法としては「機械化、オートメーション化できる部分については効率化を進める」と同時に「処方せん40枚につき薬剤師1人に配置基準の見直し」を求めています。その際、欧米ではは主流になっている「箱出し調剤の有用性を検証し、移行すべき」と提言しました。

またリフィル処方せんについても「同じ薬剤処方であれば、再度の診察、処方せん交付は不要とあらかじめ医師から指示されている場合、医師との連携の下で薬剤師によるリフィル処方への対応が可能とし、長期に有効な処方せんが一度出されれば、これを提示することで何度も薬を受け取れるようにすべき」としています。

こうした内容は中医協でも議論される可能性があり、薬剤師業界は薬剤師の職能拡大と医療の効率化の観点から積極的に対応すべきでしょう。

Point
「処方せん40枚につき薬剤師1名」が改定され、業務の効率化がはかられる。同時にリフィル処方せんが議論に挙げられる可能性がある。

調剤基本料は区分の見直しあり。リフィル処方せん、在宅医療は評価が伸びる。

こうした状況を踏まえ、調剤報酬改定論議の行方を占ってみます。全体の方向性は、対人業務へのシフト、在宅関与、他職種との連携、ICTの活用などであり、この枠組の中で具体的な点数設定が行われるとみられます。

ただ、財政的には依然厳しい環境にあることから、現在の報酬体系を見直しつつ合理化(引き下)と評価(引き上げ)を行うことになります。


・調剤基本料について
まず、調剤基本料ですが、そもそも論として「調剤基本料とは何か」が議論される可能性があります。これまで対外的な説明では、「医療機関の初診料・再診料に相当する」との主張がなされてきましたが、この論法が今後も通用する見通しは低いと言えます。単なる施設維持フィーとしか捉えられかねません。

そのため、調剤基本料に何らかの薬局機能を付加し、位置づけを明確化することが必要です。基準調剤加算や薬学管理料で示されている薬局機能を一部付け替えるなどの対応が想定されます。

調剤基本料は前回改定で細分化されましたが、医療モールの増加、門内薬局の設置などを踏まえ、区分の見直しも当然行われるものとみられます。


・調剤料について
調剤料は1~7日、8~14日に日数倍数制が採用されていますが、調剤の手間との関係性が薄いこと、処方薬剤数が減少しても点数が上がるケースもあり、整合性の点で問題視されています。また調剤料は対物業務そのものであり、対人業務にシフトしていく上でも合理化すべきとの主張が出てくるでしょう。

 一方、分割調剤に関しては特に高齢者の服薬改善や将来のリフィル処方せん導入を踏まえ、評価される可能性があります。


・薬学管理料について
薬学管理料では特にかかりつけ薬剤師指導料の算定要件見直しが焦点になりそうです。例えば現在は、常勤薬剤師以外は算定しづらい要件になっていますが、女性薬剤師が多い職場での働き方改革が議論されるでしょう。

前回改定後、かかりつけ薬剤師の指名獲得競争が一部でありましたが、やみ雲に指名獲得に走る動きには批判的な見方が大勢です。そのため、対象患者を高齢者やコンプライアンスに問題がある患者、重複受診・重複服薬の恐れがある患者などに限るべきとの議論が予想されます。


・在宅関連について
 在宅関連ではより充実させる観点から、加算等が新設される可能性があります。在宅患者に対する服薬管理、残薬対応などについても、評価される方向です。

Point
2018年同時改定でも、財政状況の厳しさは変わらない。調剤基本料では、特に医療モール、門内薬局などの区分見直しが行われるだろう。調剤料に関しては、日数倍数制に疑問点が投げかけられている。だが、分割調剤やリフィル処方せんは将来的に評価の対象になりそうだ。薬学管理料では、獲得競争になっていたかかりつけ薬剤師指導料が見直されるはず。在宅関連は、より充実の方向へ進むだろう

調剤基本料
 ・現状の施設維持フィーの考え方で良いのか
 ・現状の区分の見直し(複雑化、モール、門内薬局?)

調剤料
 ・日数倍数制は院内外格差の攻撃材料になっている
 ・分割調剤の評価(リフィル処方せんを見据えて)

薬学管理料
 ・かかりつけ薬剤師指導料(実績を検証、要件見直しも)

在宅関連
 ・充実へ新たな加算新設も

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藤田 道男
ふじた みちお

中央大学法学部卒。医薬関係の出版社、(株)じほう編集局に勤務し、各種媒体の編集長を歴任。退職後フリーの医薬ジャーナリストとして取材・執筆、講演活動を行う。
2010年、薬局薬剤師の教育研修のために一般社団法人「次世代薬局研究会2025」を立ち上げ、代表を務める。
主な著書は『2025年の薬局・薬剤師 未来を拓く20の提言』『かかりつけ薬局50選』『残る薬剤師 消える薬剤師』など多数。

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