感冒にセフェム系抗菌薬(フロモックス等)が処方される理由と非推奨の理由
薬剤師コラム編集部に寄稿している薬剤師ライターから「抗菌薬に関する疑問」が多数、寄せられました。調剤の現場で判断に迷う事例を、山口浩樹医師に回答いただきます。
今回のテーマは「第三世代経口セフェム系抗菌薬」です。
- 経口第3世代セフェム系抗菌薬(セフェム系抗菌薬 / 経口セフェム)
- セフカペンピボキシル(フロモックス)
- センジトレンピボキシル(メイアクト)
- セフィキシム(セフスパン)
- アモキシシリン(ペニシリン系抗菌薬)
- アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン)
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感冒様症状(風邪 / ウイルス性感冒)、気道感染症、ペニシリンアレルギー(即時型アレルギー / 非即時型アレルギー)、急性中耳炎、成人市中肺炎、慢性心疾患、肺疾患(COPDなど)、糖尿病、悪性腫瘍(がん)、初期治療不能(初期治療失敗 / 治療不応)
<薬剤師から質問>第三世代経口セフェム系抗菌薬の頻用と処方意図を教えてください。
「セフカペンピボキシル(フロモックス)」や「セフジトレンピボキシル(メイアクト)」ですが、腸管からの吸収率(生体内利用率 / バイオアベイラビリティ)が低く、ガイドラインなどでは気道感染症への第一選択から外れることが多いと認識しています。
それでもなお、軽症の感冒様症状などに頻用される背景や、あえてこれらを選択される際の「処方意図」を教えていただきたいです。
「セフカペンピボキシル(フロモックス)」、「セフジトレンピボキシル(メイアクト)」、「セフィキシム(セフスパン)」などに代表される経口第3世代セフェム系抗菌薬は、国内で広く処方されている一方で、近年ではその積極的な使用を控えるべきとされています。
薬剤師の皆さんは処方意図を正確に把握し、必要に応じて疑義照会や適切な服薬指導を行う必要があります。
本剤の推奨度が低い主な理由と、例外的に使用が考慮されるケースについて解説します。
山口浩樹医師の解説「経口第3世代セフェムの使用が推奨されない理由」
① 低い生体内利用率とPK/PD理論からの乖離
経口第3世代セフェムは、消化管内での溶解性が低く、腸管上皮細胞に吸収される前に加水分解されるため生体内利用率は16~40%程度に留まります1)。
セフェム系抗菌薬の殺菌効果は「Time above MIC(血中濃度が最小発育阻止濃度を上回る時間)」に依存しますが、生体内利用率が低いため、原因菌に対して有効な血中濃度を十分な時間維持することが困難です。
結果として、臨床効果が不十分となるだけでなく、中途半端な曝露により耐性菌発生のリスクを高めます。
② 二次性カルニチン欠乏症と低ケトン性低血糖症
吸収性を高めるためにエステル化された「ピボキシル基」を有する製剤は、吸収・代謝の過程で「ピバル酸」を遊離します。
ピバル酸は体内で「遊離カルニチン」と抱合して尿中へ排泄されるため、血清カルニチンが低下します。
特に、筋肉量が少なくカルニチン貯蔵量の乏しい乳幼児や小児において、長期投与や反復投与が行われカルニチンが欠乏すると、糖新生ができずケトン体の産生もできないため、低ケトン性低血糖症を引き起こす恐れがあります。
山口浩樹医師の解説「経口第3世代セフェムの使用が検討される例外的状況」
原則として「アモキシシリン」などのペニシリン系が優先されますが、以下の臨床状況では代替薬として使用されることがあります。
① ペニシリンアレルギー:第一選択薬が使えない「特定のアレルギー」へ対応する場合
第一選択薬であるペニシリン系抗菌薬に対して即時型アレルギーの既往がある場合、交差反応のリスクを考慮した上で、経口第3世代セフェムが代替薬の候補になります。