なんだか筋肉痛ぽいのですが、薬(スタチン)のせいですか?(前編)
ぽんぽこ調剤薬局の経営会議で業績の低迷を指摘されたS村さん。彼が悲壮の想いで決意した起死回生の一策、それこそが医学論文に基づく医療・健康情報の提供サービスなのでした。はたしてS村さんは無事に医学論文を検索し、薬局サービスの向上、ひいては店舗の売上に貢献できるのでしょうか……。
桜の花びら舞う季節に……
在宅医療や健康サポートをはじめ、地域住民に密着した薬局事業がウリのぽんぽこ調剤薬局。本社の一室では、何やら会議が行われている様子です。
時期は桜の花びらが散り始めた4月中旬。どうやら前年度の業績に関する報告と、今年度の事業目標が話し合われているようです。駅前店の薬局長であるS村さんに、鋭い眼差しを向けながら処方箋枚数の減少を指摘しているのは、保険薬局事業を統括しているT山部長なのでした。
ウサカメドラックは、ぽんぽこ薬局と同じ市内に展開する地元密着型のドラックストアなのでした。大手スーパーマーケットと共同開発した冷凍食品が人気で、最近では急速に業績を伸ばしているそう。
何も言い返せないS村さんは小さくうなだれています。
翌日
ぽんぽこ調剤薬局の駅前店は、1日の処方箋応需が30枚ほど。勤務しているのは薬局長のS村さん、事務担当のT川さん、パート薬剤師のO崎さんでした。
T川さんは調剤事務のみならず、登録販売者や栄養士の資格を持ち、積極的に健康サポートを実践してきた逸材なのでした。
そう呟いたのはパート薬剤師のO崎さん。彼女が勤務するのは水曜日と金曜日の週2日だけ。ただ、T医科大学附属病院で長年勤務した経験もあり、S村さんも頼りにしているようです。
S村さんは、面倒くさそうな顔をしつつも、他の薬局では入手できないような医療や健康情報、あるいは患者さんの質問に対して丁寧に情報提供する取り組みを行うことにしたのでした。
【なんだか筋肉痛ぽいのですが、薬(スタチン)のせいですか?】
やや上から目線のこの患者さんは、2週間前にプラバスタチンが新しく追加となった男性です。
――そういえば先日、パート薬剤師のO崎さんが横紋筋融解症について丁寧に説明をしていたなぁ、などと思い返していたS村さん。
可能性……と言ってしまえば、どんな可能性も「ある」には「ある」わけで、大事なのはどの程度「ある」のか、というお話です。ここで当期の取り組みを思い出したS村さんは「ちょっとお調べしますので、お時間よろしいでしょうか?」と患者さんに問いかけた。
こんな日に限って、頼りにしているO崎さんの出勤日ではありません。S村さんは投薬カウンターから戻ると、T川さんと二人で、相談をうけた患者さんの処方歴をみつめます。
【処方箋】69歳男性
- アムロジピンOD錠5㎎
1錠 分1 朝食後 - プラバスタチン錠5㎎
1錠 分1 朝食後
S村さんは添付文書と処方箋を交互に見つめながら必死です。
S村さんは、今にも泣きそうな表情でレセコンの前に座るT川さんを見つめます。
T川さんはため息をつきながら、A4のコピー用紙を取り出すと、そこに「P」「E」「C」「O」と大きく書き出しました
【まずは……PECOで定式化するんです】
PECOとは、臨床的な疑問を構成する4つの要素のことです。具体的には「どんな患者さんに(Patient)」「どんな治療をすると(Exposure)」「何と比べて(Comparison)」「どうなるか(Outcome)」の4要素で、英単語の頭文字をとってPECOと呼ばれます。
S村さんは白紙のコピー用紙に、自分の疑問をPECOでまとめてみました。
パソコンに向き直ったT川さんはGoogleの検索画面にPubMedと入力し、「↵nter」ボタンに軽やかにタッチします。
次回は、パブメドとは何か?S村さんとT川さんが実際に論文を検索していき、知りたい情報にアクセスする方法についてご紹介します!
- 論文は添付文書と同様、疑問解消のツール!
論文検索というと何やら「ムズカシイ」といった印象をお持ちの方もおられるでしょう。ただ、日常業務を行う中で、様々な疑問に遭遇するはずです。臨床で遭遇した疑問に対して、医薬品添付文書やガイドラインを参照する方も多いでしょう。論文もまた、臨床で遭遇した疑問を解決するための参照情報です。特にPECOで定式化できるタイプの疑問に対して、とても有益な示唆を与えてくれるのです。