第1回 夏に向けて知っておきたい美白成分の基礎
初めまして。薬剤師の花田真理と申します。この度「薬剤師の為の美容基礎知識講座」を連載させていただくことになりました。この連載では美容分野を得意とする薬剤師として、気軽に学べて少しでも皆様のお役に立つ美容の基礎情報を発信できればと思っております。
はじめに
薬剤師の勤務先の1つであるドラッグストアでは健康食品(サプリメント)や化粧品など「医薬品以外の商品」も扱っています。もちろん薬剤師は医薬品の専門家ですが、患者さんが困っているときにちょっとでも相談にのれるような薬剤師がいるお店は素敵ですよね。
今回は夏に向けて知っておきたい美白成分の基礎をご紹介します。
ドラッグストアに並ぶケア製品の「美白」とは?
さて、紫外線が気になる季節になりました。ドラッグストアでは日焼け止めや美白ケア製品が沢山並んでいますね。美白ケア製品には美白成分が配合された製品がありますが、この「美白成分」とはどのようなものかご存じでしょうか?ドラッグストアや調剤薬局で販売される一般的な美白ケア製品は「医薬部外品」「化粧品」の二種類に分類されています。その中で「美白」とキャッチフレーズで使用しているもののほとんどが「医薬部外品」に分類されます。
これは美白という文言を広告やキャッチフレーズとして使用するためには、医薬品医療機器等法(旧薬事法)に沿う必要があるためです。しかしこの医薬部外品による「美白」という文言も「黒い肌が白くなる」「出来てしまったしみ・そばかすをなくす」という意味での使用は禁止されており、必ず「メラニンの生成を抑えて、しみ・そばかすを防ぐ」等と注意書きがあります。つまり、医薬部外品の美白は「メラニンの生成を抑えて、しみ・そばかすを防ぐ」という意味です。
また、化粧品の分類でも「メ-クアップ効果により肌を白く見せる」という意味での美白は使用して問題ありません。
美白成分の3つのタイプ
一般的に美白ケア製品に配合される美白成分は、下記のように3つのタイプがあります。
それぞれの成分について具体例をご紹介します。
(1)メラニン生成を抑制する美白成分の具体例
メラニン生成を抑制する美白成分とは、「しみが出来ないように予防する」成分です。
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アルブチン…
アルブチンは美白成分として有名な「ハイドロキノン」に「ブドウ糖」が結合したハイドロキノン配糖体です。チロシンとチロシナーゼ(メラニン生成に関わる酵素)の結合を防ぐことでメラニンの生成を抑制します。
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ルシノール…
シベリアモミの木に含まれる成分をモデルとして開発された美白成分です。チロシンとチロシナーゼの結合を防ぐことでメラニンの生成を抑制します。
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カモミラET…
カモミールから有効成分を抽出した成分です。情報伝達物質エンドセリンの働きを阻止し、メラノサイトの増殖や活性化を抑えることでメラニンの生成を抑制します。
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エラグ酸…
エラグ酸とは天然のポリフェノールの一種で、ブラックベリーやザクロなどに含まれている成分です。チロシナーゼが働く際に必要な銅イオンを奪い去ることでチロシナーゼの働きを抑制し、メラニンの生成を抑制します。
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コウジ酸…
コウジ酸は、麹菌の発酵過程で作られる成分です。チロシナーゼが働く際に必要な銅イオンを奪い去ることでチロシナーゼの働きを抑制し、メラニンの生成を抑制します。また、糖化により発生する黄ぐすみの原因AGEsの産生を抑える抗糖化作用もあります。
(2)メラニンの排泄を促進する美白成分の具体例
メラニンの排泄を促進する美白成分とは、「しみのもとを排出する」成分です。
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ビタミンA誘導体…
レチノールやパルミチン酸レチノールなどが該当します。肌のターンオーバーを促すことによりメラニンの蓄積を防ぎます。
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エナジーシグナルAMP…
「アデノシン-リン酸二ナトリウム OT」という成分名です。基底層にある母細胞のエネルギー代謝を高めて、ターンオーバーを促すことによりメラニンの蓄積を防ぎます。
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プラセンタエキス…
プラセンタエキスは豚や馬などの動物の胎盤から抽出された成分です。
血流を良くする働きがあるため肌のターンオーバーを促すことによりメラニンの蓄積を防ぎます。また、メラニンの生成を抑制する働きもあります。
(3)メラニンを還元する美白成分の具体例
メラニンを還元する美白成分とは、「出来てしまったしみを薄くする」成分です。
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ハイドロキノン…
ハイドロキノンは、イチゴ類、紅茶、コーヒーなど天然にも存在する成分です。メラニン還元作用とメラニンの生成を抑制する働きがあります。
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ビタミンC誘導体…
ビタミンCを誘導体化させ、肌に吸収されやすくし、吸収後ビタミンCに変化するようにしたのがビタミンC誘導体です。メラニン生成抑制、メラニン還元作用、抗酸化作用などがあります。
患者さんにあわせたコミュニケーションを
ご紹介した美白成分は一例ですが、このような成分が一般的に美白成分といわれるものです。製品を選ぶ際は、上で示した通り成分ごとにタイプが異なることに注意して選ぶ必要があります。もし、患者さんに相談された場合は成分のタイプを考慮しながら、患者さんの状況にあわせたコミュニケーションが出来ると良いかと思います。
医薬部外品は薬剤師の専門である「医薬品」ではありませんが、患者様の健康で美しい生活に役立てるものです。本連載が皆様とお客様とのコミュニケーションに役立てれば何よりです。