医薬品不足、トラブルは?
調剤室で生まれた「ベン」「ゼン」「カン」の三兄弟。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘するベンゼン三兄弟が、薬剤師に聞いた実態調査をレポートします。
厚生労働省が公表した、医薬品の「欠品・出荷停止」「限定出荷」の状況によると、出荷停止の割合が最も高いのは後発品で10.7%。また限定出荷の割合についても後発品が占める割合が高く30.3%となり、先発品5.3%、その他の医薬品7.2%と比較すると、医薬品の「欠品・出荷停止」「限定出荷」の影響を大きく受けていることが分かります。(2022年8月末時点)
さらに供給不安の報告件数は全体で1991品目(令和4年4月1日~令和5年1月31日)あり、内訳は内用剤76%、注射剤19%、外用剤5%で、このうち後発品が67%を占めています。
厚生労働省では供給不足が生じるおそれがある場合には、製造販売業者に対して速やかに情報提供をするよう求め、有識者の検討会において「後発品企業のビジネスモデル」「不採算品目への対応」に関する課題を明らかにしています。
そこでm3.com薬剤師会員の皆さんに、「医薬品不足のトラブル」ついてうかがったところ、「患者さんとトラブルになったことがある」が最も多く38%、次いで「トラブルになったことはない」35%、「医師とトラブルになったことがある」30%という結果でした。また患者さんへの説明に対しては、「納得してくれる」58%となり、医薬品の「欠品・出荷停止」「限定出荷」に対して、患者さんとトラブルにならないとしても日々苦慮している様子がうかがえました。その他、みなさんから寄せられた実際の対応方法や意見、患者さんへの具体的な説明内容をご紹介します。
参考資料)
資料1 医薬品の安定供給に関する最近の状況
Q1:ご勤務先をお選びください。
ベン:
現場でのリアルな意見が聞けそうだね
Q2:Q1で「薬局・ドラッグストア」「病院・診療所」「医薬品卸」と回答された方にうかがいます。ここ2年ほどの間に、薬の在庫が無いことで、トラブルになったことはありますか?
ゼン:
トラブル対策、知っておきたいぜ
Q3:Q2で「トラブルになったことがある」と回答された方に伺います。よろしければトラブルの内容を教えてください。
医師
- 出荷調整になり入荷しない薬について「大きな病院の門前薬局なら入荷する」とどこかの卸から聞いたらしく、別のところに入るなら入れてもらえと門前医師に無理を言われた
- 薬の安定供給は薬剤師の仕事であり、日数や薬剤変更に医師は関与しないとのこと
- 一部の抗リウマチ薬が品薄欠品となりつつある状況で、医師へ代替案をもって情報提供へ向かうと「これ以外の薬が使えない人が多くいるがどうしたものか」と難色を示された
- 医師より「そこの薬局では入荷がないので別の薬局でもらってください。」と患者さんは説明を受け,他の薬局に処方箋をお願いした。県でも入荷のない薬で、他の薬局から当薬局にクレームが次々に入った
医薬品卸
- 医薬品の供給不足の初期に、急に卸さんから供給できないと言われ、早めに知らせないと対策ができないと怒った
- 違うメーカーの薬剤を購入しようとしても、「新規参入お断り」のことがある
- 対応に問題があった医薬品卸の担当を変えてもらった
- トラブルはないが、情報が分かるのが納品の時になると急いで新たな契約を結ぶことが多い。業務が煩雑になっている
- 卸が「製造はしているが、あなたの薬局には渡せない」と言い、もっと良い断り方は無いのかと喧嘩になった
- 卸の情報が遅く、門前の医師が多く処方される医薬品の入荷が出来なくなり、疑義照会で患者様をお待たせし、クレームに繋がった
製薬企業
- 製薬企業からの説明、案内が全くない
- 問い合わせをしても納得いく説明がない
- 製薬企業に連絡しても、卸には通常出荷しているのでメーカーでは対応できないと断られた
薬局・ドラッグストア
- 院外薬局が適当で探しもせずに病院に変更を求めてくる
患者さんからのクレーム
- 「メーカーがコロコロ変わるのは嫌だ」「薬局なのに薬がないのかよ」とお怒りを買った
- 命の選択を迫られた
- 薬が処方量用意できず、患者同意と医師問い合わせの上、処方日数を減らしたが、体調が悪化したと言われ、後日送ってくれるのかと思ったなどのクレームが何件かあった
- どんな手をつかっても集めろと言われた
- 希望薬剤がタケプロンOD錠15mg、当薬局の採用後発品がAG品(ランソプラゾールOD錠15mg「武田テバ」)で、添加剤や製法製造ラインも先発品と全く同じであることを伝えても理解されなかった
- シナールなど美肌目的の処方だったので供給停止を伝えたら処方を出すのは自由で薬局で困っても関係ないと言われた
- 処方箋を受け付けたが、漢方が入荷しないため、患者が「いつまで待たせるのか」とクレームの電話攻めにあった
- ソラナックスの入荷が滞っていたが、後発への変更はどうしても嫌だという患者さんが何人もいた。メンタルの薬は変更拒否の患者さんが多く対応が大変だった
- 出荷調整による入手困難な理由を説明しても「そんなわけない」と聞く耳もたず、怒り出す患者がいる
- 後発品が入らず、先発なら手に入ったので勝手に先発にしたところ薬代が高くなったのでトラブルに。患者さんからしたら、勝手に変えるなら、高くなる分は薬局が払うべき、と
- 手配出来ないことが理解して貰えず、怒って他店へ行かれた。せっかく確保していた薬の期限が切れた
- 同一成分・別剤形で確保していた薬が気に入らないと、必死に確保した分が無駄になった
- ウロキナーゼが納入されず、どこも在庫がないのに納得されず、メーカーや卸業者、グループの他の病院を巻き込んで薬がないか探し回った
現状に対する意見
- ガイドラインで推奨されている薬がないのは問題
- 薬を準備出来ない際に「問屋なのに何故薬を準備出来ないのか。患者の事を見ていないのではないか」と言われる。薬の流通という重要な仕事だと言う事は理解している。それと同時に、こちらも商売だし、一つでも多くの物を販売したいが、売りたくても物が入荷してこなければ叶わない。怒られてもどうすることもできない。みんな本当に悪いのが何なのかわかっていない。卸も現場も患者もみんな被害者。製薬会社の社員の多くも被害者だろう
- 予定されていた日に納品が間に合わず、患者から叱責を受け、県を跨いで同一グループの薬局まで分譲に行った。
この先の交通費などは全て薬局負担…おかしい話だと思う
Q4:Q1で「薬局・ドラッグストア」「病院・診療所」と回答された方にうかがいます。在庫が無い場合、患者さんへ何と説明していますか。
患者さんへの説明内容
- 患者さんの理解度による。「コロナの影響で」という方から「薬の成分が不足しており、そもそも薬を作る事ができない」という方まで様々
- 調剤出来ないので代替薬の提案、不可なら他薬局へ紹介している
- 出荷規制の関係で入荷できない場合があることを説明した上で,患者さんの意向に沿う形にする
- 全国的に手に入りにくいことを説明。医師には代替案とともに説明
- コロナ以上の大問題になっている状態になっていると、伝える
患者さんへの回答集
- 申し訳ないですが、この薬はうちの薬局には入荷しておりません
- 問屋さんに注文しても お薬が入らない状態で 納品日も未定です。お手持ちにお薬がありお待ちいただけるのであれば処方箋をお受けできます。いかがでしょうか?
- 新患の場合、後発品品薄のため、当薬局に供給されない可能性があるので、いつももらっている薬局に戻った方が確実です
- 入手困難品でうちの薬局では仕入れることが難しいお薬なので、在庫を持っている店舗を紹介するのでそちらに回ってもらえますか?
- 子供用のサイズの薬が入らないので、大人用のお薬を子供の量にしたもので対応させていただきます
- 全国で出荷調整が行われており、お薬が薬局に届かない状態が続いております。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。今回、同じ成分が含まれている別メーカー(又は先発品)でお渡しさせていただいております
- 卸や近隣の薬局へ在庫があるか確認しますがもしなければ代替品への変更を医師と相談させて頂きます
- ただいま在庫が不足しており、周辺の店舗にも確認している状態です。ご用意出来次第、郵送させていただいてもよろしいでしょうか?
Q5:Q4の回答で、患者さんは納得してくれますか?
カン:
できるだけトラブルは避けたいものね
Q6:医薬品の在庫不足によるトラブル回避のために行っていることがあれば教えてください。
トラブル回避のための対策
- 制限がかかった薬は早めに手配または他メーカーに変更する
- メーカーから、処方医師への出荷調整の説明依頼と代替え薬の紹介を依頼
- 普段から卸さんやメーカーさんと良好な関係を築くように努力している
- ジェネリックはその都度、入手出来たもので調剤している
- 在庫の抱え込み。月次決算で薬剤購入額が膨らみ続けている
- 薬局等に納入予定を毎日FAX回答している。そのためのプログラムを開発した
医師への対応
- 門前の医師にはこまめに薬の在庫状況と入荷状況を提供し、あるもので出してくれと泣きついている
- 咳止めなど風邪関係薬は門前医師に時間中でもこまめに入荷と在庫なしを伝える
- 医師に一斉に情報提供して、必要出れば処方できないように制限している
患者への対応
- 誠意をもって自分達のできる最大限の事を正直に話す
- 患者さんの体調や都合をしっかり聞き、要望に沿った形になるよう努める
流通の悪くなった医薬品の原因を調べて、患者さん説明できるように努力していますが、メーカーの対応が、協力的ではないため、トラブルが減ることはありません - FAX処方箋の患者さんは予め電話で連絡して承諾を得ている
- もう何週間も入荷ありません。メーカー欠品など信用できる情報が少なく困っています。患者数には大変ご迷惑をおかけしています。誠に申し訳ございません。と陳謝するしかない
薬局内での対応
- 卸に何度も入手可能か確認している。タイミングによっては入手できるため
- 医薬品が入荷しづらい旨の文書やポスターを作成して、薬局内で掲示
- クリニック、卸さんとの情報交換を常にしているので、患者さんには早めの情報提供に努めている
- 県外の友人にも在庫の有無を相談
- 銘柄を2種類以上準備している
- 入手困難品は常連優先。常連さん分はまず確保。ご新規さんや一見さんお断りしている
- 近隣の薬局との提携
- トラブルにはならなかった。平時より患者、医師、薬剤師の関係性を大事にしてきた結果だと思っている
- 近隣の医療機関と在庫状況についてあらかじめ共有している
- 定期薬は来局予定日に合わせて系列店から集めておく
- もうあきらめた。在庫不足は回避できるレベルじゃない
在庫不足に対する意見
- 品切れ銘柄の予測が付かないので対処不能
- TVやメディアで薬の供給不足をもっと取り上げてほしい。薬が入ってこないというと、うちの薬局のみが「資金繰りが悪くて薬がはいってこないのか?」と勘違いされる。薬の必要性をもっと患者自身で考えて欲しい。休薬して調子悪くなければ必要ない薬だと判断してほしい。と患者に言いたいが、言えない
- もっとテレビで、薬不足に関して報道してほしい。患者さんに怒鳴られている現状を知ってもらいたい。患者に怒鳴られ、医師にもなんとかしろ、と怒鳴られた挙げ句、薬局が卸さんに圧力をかけて 、という無駄なループが減るといいなと思う
ベン:
現場からのリアルな意見を聞くことができたね
ゼン:
患者さんに納得してもらうのも大変だぜ
カン:
1日でもはやく状況が改善されることを願いたいものね
ベンゼン三兄弟
ベン・ゼン・カンの三兄弟。調剤室で生まれ、日々がんばる薬剤師を見て育ってきた。薬剤師に元気を届けながら、自分たちもいつか薬剤師になる日を夢見ている。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘中♪
《 ベン 》
正義感の強い三兄弟のリーダー。勉強熱心でいろいろなことに興味津々。
熱中するとまわりが見えなくなりがち。
《 ゼン 》
明るくてポジティブな三兄弟のムードメーカー。
調子にのりやすく失敗もするが、立ち直りも早い。
《 カン 》
優しくて気配りのできる三兄弟の癒やし系。控えめだけど実はしっかり者。
なぜかゼンへのツッコミは厳しい。
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