薬剤師不足、解消できる?
調剤室で生まれた「ベン」「ゼン」「カン」の三兄弟。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘するベンゼン三兄弟が、薬剤師に聞いた実態調査をレポートします。
平成30年度に実施された「薬剤師の需給動向の予測および薬剤師の専門性確保に必要な研修内容等に関する研究」によると、薬剤師の総数として今後数年間は需要と供給が均衡していく状況が続き、長期的には供給が需要を上回る見込みと予測。さらに薬剤師総数の観点において、現在の水準以上に薬剤師の養成が必要となる状況は考えにくい状況となっています。
ただし、地域により高齢化の状況や医療事情などが異なるため、将来にわたり良質かつ効率的な医薬品提供体制を確保するためには地域ごとの薬剤師の需給状況の現状を詳細に把握し、今後の人口構成の変化や地域の医療提供体制を踏まえた上で将来の薬剤師の需給動向を推計することが必要としています。また調査における変動要因として、以下の内容が挙げられています。
【調査における変動要因】
- 医療需要などの変化:投薬対象者数、処方箋枚数、病床数などの推移
- 業務の変化:対人業務の充実、機械化・ICTの活用における業務効率化など
- 薬剤師の働き方:常勤・非常勤、勤務時間など
そこでm3.com薬剤師会員の皆さんに、「薬剤師の充足状況」ついてうかがったところ、全体の50%以上が勤務場所に関わらず「適切な人数より不足している」と感じていることが分かりました。さらに薬剤師確保に有効な施策として「給与制度の見直しの促進」69%、「病院や薬局における働き方の見直しの支援」44%と回答。その他、自治体や勤務先で奨学金の補助を受けられるような制度や給与に関する要望、教育体制における課題など、薬剤師確保に向け様々な意見が寄せられています。
参考資料)
薬剤師の需給調査
Q1:職場での薬剤師の充足状況に近いものをお選びください。
ベン:
人手が不足している現状が分かったね
Q2:薬剤師確保計画ガイドラインで都道府県における施策の例から「薬剤師確保に有効だ」と思うものを3つまでお選びください。
ゼン:
給与アップや働き方の見直しが必要だぜ
Q3:先進的だと思う薬剤師確保の事例、勤務先の自治体・知事への意見などがあれば教えてください。
自治体・知事への意見
- 医療法による薬剤師の人員数が最も問題。特に精神科病院や療養病院では少な過ぎる。まずは法改正が必要
- 病棟薬剤業務実施加算は現場への負担が大きく実入りが少ない。即刻廃止、または改善を希望
- 自治体レベルでの奨学金支援制度
- 医療業界において、自治体、知事ともに薬剤師についてはどこも後回しになっている
- 中小薬局の構造設備改善のための支援が必要
- 県外進学が前提の当県では、学費や住居費が支給される地域枠の存在は非常にありがたい。ただ、地域の高校や生徒に対するその情報の周知が不十分なのが課題
- 薬剤師教育での疾患教育の充実と資格化、およびリフィル処方箋、風邪、皮膚疾患などの簡易な状態に対する一次対応権を与えること
- 僻地に行けば給与が段違いに良いなどあれば積極的にそこへ行こうという人も一定以上はいると思う。全国的に不足地域へ等支援をすればよい
職場環境・働き方
- 職場環境の改善をすべき。適切な人数に満たされていない職場が多いように感じる
- なるべく地元での就職が有利になるようにしていかないと地域差が大きすぎる。二極化している。また住民には薬剤師の不足そのものが知られずにいる
- 薬剤師アシスタントを採用し、病棟薬剤業務のサポートをしている
- 病院の業務量が増えているにも関わらず、定数は増えていない
- 製薬企業を早期退職した有資格者の積極的採用。若い子は金をかけてもすぐに辞めてしまう。50代は確実にあと10年以上働いてくれる
- 保険点数が下がっているため、雇える人数が黒字にしようとすると人数が限られてしまい、業務で手一杯になるため退職→人手不足になっている気がする
- 人手不足解消のためにも時間を割かなくて点数がとれるように、パートでも週20時間位かかりつけがとれると待遇も良くなると思う
- 病児保育、警報時、夏休みなどの子供の居場所の提供、夜間休日は対応しなくて良いようにする。そもそも医療機関も卸も閉まり、問い合わせすらできないのに開けていても意味がない
薬剤師の給与
- 薬局よりも病院薬剤師の給与は低く、現在の学生は給与面にて薬局を選択する傾向にある。病院薬剤師の中でも、特に中小の病院薬剤師は大病院に比べて少ない傾向。また、地方になればなるほど地方の病院診療所の薬剤師は少なくなる。その実態を把握し、給与面などの改善が必要
- 当院では看護師には奨学金制度を取り入れているが、薬剤師にはない。薬剤師にも病院から奨学金を出して学生の時から契約し人員確保する。また調剤ロボットの活用で人員はそのままでも、業務拡大可能となる
- 給与体系の改善と、人員確保のための病院支援と病院薬剤師手当の拡充
- 人件費が今の診療報酬では足りない。有給,産休,育休をとるためには人が必要
- 病院勤務は人員不足。やはり、初任給の低さが問題。もっと病院薬剤師の給与を増やすべき!!
- 地域によって給与水準に格差があるように感じる
参考となる施策
- 石川県の地域連携薬剤師共育プログラム
- 益田赤十字病院薬剤師奨学金制度
- 山口県在住。薬学部で学ぶ人の授業料を免除して県内で働いてもらう制度がありますが、実際に県内でも人口の多い都市部に就職されたのでは、薬剤師が不足している地域への充足にはならない
- 夜勤専門、兼業可能
- 薬剤師確保手当
- 内定時に支度金として100万円を給付する
- 新卒だけなく、中途の人にも奨学金返済の助成
- 大垣市民病院での専門資格の取得に応じた昇給は素晴らしい
- 日本医科大学武蔵小杉病院薬剤部は離職率が低いことで有名
Q4:薬剤師の地域・業態偏在について、ご意見がありましたらお寄せください。
薬剤師が続かない理由
- 薬剤科の手順が統一されておらず病院特有になっているため薬剤師が続かない
- 人数が少なすぎて一握りの人が大変な思いをしている地域にもう少し人数が行くように自治体なども応援してほしい
- 院内における薬剤師の地位が低いこと。学歴が高いのに地位が低いということは社会的に病院以外にはありえないことではないでしょうか
薬剤師の福利厚生
- 田舎なのに家賃は高く、病院の住宅手当も低い。そんな状況であっても呼び出しや当直、夜勤などがあるため地域の空き家などを無償提供や定額補助などで対応してほしい
- 有給休暇などが取得しやすい環境にないと敬遠される
- 給与より休暇などが優先される
- 認定資格を習得後の学会維持費を病院負担してくれると助かる
- 薬剤師は女性が多い職種だが、多くの病院で産休・育休の補充が行われておらず常に人手不足。男性の育休取得も推進されているが人手不足が深まる
薬剤師の給与や働く環境
- 病院薬剤師の給与は、国家公務員に準じるところが多く、国の給与が上がらないと末端の病院まで給与が反映されない。しかし公務員の給与改定には、社会的な批判を恐れて上がらないのが現状では…
- 民間病院と公立病院での人事交流の活発化(高年齢層の給与格差の是正が課題)
- 6年生になり薬剤師の免許を取得するまでかなりのお金がかかるため、給与が安い病院にいかないのは当たり前。県立病院勤務だが研修して各種認定を取得しても給与に反映されることはなく、有資格者だからと仕事は増える。モチベーションが下がり新人が来ない上に、中堅も毎年やめている状況
- 地方だから給与が高い、だけでは薬剤師が集まらないことにもっと留意すべき。薬剤師の地位が低くキャリアアップ出来ない施設が多いから、給与が高くても人が集まらない。給与が低くても薬剤師としてやりがいがある仕事ができる病院には人が集まっている
- 薬剤師の兼業、特に管理薬剤師の兼業緩和ができれば、空き時間の活用でマッチングが可能だと思う
- 薬剤師の偏在は医師の偏在と関連していると思う。医師の偏在は医療の質に関わっており、医療の質が低いと薬物治療の質も低下する。医療の質や薬物治療の質の低い場所に新卒の薬剤師が就職する動機は生まれにくい。したがって医師不足の解消も薬剤師偏在の解決のためには必要
- 処方箋枚数で薬剤師の数がおよそで決められているため、内容の濃い処方箋の多い病院の門前薬局ではかなり無理がある。経営者にしてみれば、「これが一般的な数です。」と言われるが、限界がある
薬剤師の転職やスキルアップ
- 調剤薬局から病院への転職は難しいとされている。実際、病院の求人は「病院薬剤師経験者」のことが多く、門前払いの状況。業務内容も全く違うので、当然といえば当然ですが、転職に際して「病院実習」ができるような機関があれば必要なスキルを身に着けられるのに…と思う
薬剤師不足の現状と要因
- 地域に関する事ならば、薬学部、薬科大学の偏在が一因としてある
- 薬学部が無い都道府県は薬剤師不足になりがちだと思う
- 薬剤師の数は政府の把握している数字的には多いようですが、田舎とは言えない程度には人口のいる街に勤務していても、薬剤師不足が感じられる
薬学部のカリキュラムや施策
- 大学1年生の段階から、薬剤師の仕事の魅力をPRしていく場が必要でないか。長期実習とは行かないまでも、職場見学のような体験を継続的に行うようなカリキュラムの導入を働きかけていくことが必要ではないか
- 薬剤師免許を取っても、実務ができないこのシステムにも問題。医師や看護師のように現場で給料をもらっての実務経験を必須とすべき
- 医療ドラマなど医師、看護師のドラマは多いが、薬剤師のドラマは少ないため、職業としての馴染みが少ないと思う。小学生の頃から学校に行き、病院薬剤師とはこんなに素晴らしい!と職業に関する授業や病院に学生を招き、職業体験をさせるなど、薬剤師に馴染みのある環境を作ると、関心を持ってもらえるのではないか
- 薬学部を4年制に戻し、4年卒業時に国家試験受験資格を付与する。合格後、2年間の病院での初期研修を義務づけたのち、薬剤師資格を与えるようにする。さらには、5~10年目程度の段階で、病院での後期研修を義務づける。これを行うことで、一定数の病院薬剤師を確保できるのではないか
ベン:
薬剤師不足の現状を知ることができたね
ゼン:
教育面にも課題がありそうだぜ
カン:
少しでも働く環境が良くなるといいね
ベンゼン三兄弟
ベン・ゼン・カンの三兄弟。調剤室で生まれ、日々がんばる薬剤師を見て育ってきた。薬剤師に元気を届けながら、自分たちもいつか薬剤師になる日を夢見ている。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘中♪
《 ベン 》
正義感の強い三兄弟のリーダー。勉強熱心でいろいろなことに興味津々。
熱中するとまわりが見えなくなりがち。
《 ゼン 》
明るくてポジティブな三兄弟のムードメーカー。
調子にのりやすく失敗もするが、立ち直りも早い。
《 カン 》
優しくて気配りのできる三兄弟の癒やし系。控えめだけど実はしっかり者。
なぜかゼンへのツッコミは厳しい。
ベンゼン三兄弟のLINEスタンプ販売中
ベンゼン三兄弟のLINEスタンプ販売中
スタンプ購入はこちら