1. 薬剤師トップ
  2. 薬剤師コラム・特集
  3. 薬剤師の人間力向上講座
  4. 老化の鍵はオートファジーが握っているのか

薬剤師の人間力向上講座

更新日: 2021年5月20日 榎戸 誠

老化の鍵はオートファジーが握っているのか|薬剤師の人間力向上講座

:薬剤師の人間力向上講座メインの画像1

「老化は病気である」と主張する本に驚いたばかりなのに、さらにその上を行く、老化を起こさせない鍵はオートファジーが握っていると主張する大胆な説が出現した。オートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典の愛弟子の著書だけに、医療担当者には看過できない一冊である。

オートファジーとは何か

LIFE SCIENCE――長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(吉森保著、日経BP)の前半の「科学的思考を身につける」、「細胞がわかれば生命の基本がわかる」、「病気について知る」の章は、一般読者に向けての生命科学の講義であるが、目を瞠らされるのは、後半の「細胞の未来であるオートファジーを知ろう」、「寿命を延ばすために何をすればいいか」の章だ。

著者の主張は、5つにまとめることができる。

●オートファジーは、細胞を「若返らせる」機能。
「オートファジーは、簡単にいうと細胞の中の恒常性を保つ役割をするものです。病気にかかるのを防いだり、老化を穏やかにして健康な期間を長くできたりする可能性が見えてきたのです。すでに、がんや感染症、認知症などに新しい治療法が提供できるのではと期待が高まってきています」。

●オートファジーは、細胞の中の物を回収して、分解してリサイクルする現象。「清掃車が積み荷をリサイクル工場に運ぶようなもの」。

●オートファジーは、歳をとると働かなくなる。
「歳をとってオートファジーの働きが悪くなるのは、(オートファジーのブレーキ役のタンパク質)ルビコンの増加が原因なのです」。

●ルビコンを抑えれば、老化を食いとめられる可能性がある。
「ルビコンをなくした線虫やハエの寿命は、オートファジーが活発化することで、平均20%延びました。これ、すごいですよね。今の日本人だと、20%延びたら平均寿命は100歳を超えます。この実験での線虫は、歳をとりながらも、若い頃の体の機能を保っているかもしれないわけです。つまり、生き物はルビコンを抑えると寿命も延び、同時に老化を食いとめられる可能性が示されたのです」。

薬剤師の人間力向上講座2の画像

●薬などでオートファジーを活性化できれば、加齢性疾患、つまり老化の抑制につながる可能性が高い。
「(『LIFESPAN――老いなき世界』の著者)シンクレア教授と私は老化の捉え方が違いますが、目指すものは同じです。老化を抑制し、すべての人が健康なまま長生きする社会です。それは、そう遠からず実現できるのではないかと予想しています」。

オートファジーを活性化する方法

●腹八分で、運動する。脂っこい食事を避ける。
「『オートファジーを活性化させる方法って、意外にふつうなんだな』との声が聞こえてきそうです。その通りです。オートファジーを活性化するには、運動して和食を食べて、食べ過ぎない。そしてお酒が好きな人なら、赤ワインを楽しむ」。

オートファジーが健康寿命に大きく関与していることを学んだ以上、オートファジーを活性化する方法を、早速、今日から実行して、元気で長生きしようではないか。

:薬剤師の人間力向上講座の画像

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

こちらもおすすめ

榎戸 誠の画像

榎戸 誠
えのきど まこと

情熱的読書人間
三共株式会社(現・第一三共株式会社)MR、メバロチンのプロダクト・マネジャー、医薬営業企画部長、イーピーメディカル株式会社社長、株式会社ファーマネットワーク社長、株式会社メディカルライン会長、イーピーエス株式会社顧問等を経て、現在は、千葉県柏市にて、情熱的読書人間として、「未知との出会いをもたらしてくれる本を読む」、「その本の素晴らしさを伝える書評を書く」、「季節の移ろいの一瞬を捉えた写真を撮る」、「1日10,000歩以上歩く」生活。
ブログ「榎戸誠の情熱的読書のすすめ」と、Amazonのレビュー(書評)を毎日更新中。

キーワード一覧

薬剤師の人間力向上講座

この記事の関連記事

アクセス数ランキング

新着一覧

26万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

調剤報酬改定 服薬指導 派遣薬剤師 薬局経営 年収・待遇 OTC医薬品 プロブレム 医療クイズ 選定療養 診療報酬改定