【降圧薬一覧付】高血圧薬①分類と特徴について
「高血圧薬の種類が多すぎて、使い分けがよくわからない」「患者さんに薬の特徴をうまく説明できない」。こんな悩みを抱えていませんか?
高血圧治療の目的は、単に血圧を下げることではなく、脳卒中や心疾患などの重大な合併症を防ぐことです。そのため、適切な降圧薬の選択が重要となります。血圧は「末梢血管抵抗×心拍出量」で決まるので、多くの降圧薬は、末梢血管抵抗または心拍出量を減らして血圧を下げる薬です。
この記事では、よく処方される高血圧の薬の分類についてわかりやすく解説します。基本をおさらいし、日々の業務に役立ててください。
高血圧薬は大きく5つに分類される
高血圧の薬物治療で主に使用される処方薬は、次の5つに分類されます1)。
高血圧治療薬の分類 | 薬剤名 | 作用機序 | 血圧に対する効果 |
Ca拮抗薬 | ● アムロジピン (ノルバスク) ● ニフェジピン (アダラート) |
カルシウムチャネルを阻害 | 血管を拡張し、 末梢血管抵抗を減らす |
ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬) | ● アジルサルタン (アジルバ) ● バルサルタン (ディオバン) |
アンジオテンシンⅡがAT1受容体に結合するのを防ぐ | 血管を拡張し、 末梢血管抵抗を減らす |
ACE阻害薬 | ● エナラプリル (レニベース) ● カプトプリル |
アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへの変換を阻害 | 血管を拡張し 末梢血管抵抗を減らす |
利尿薬(利尿剤) | ● トリクロルメチアジド (フルイトラン) ● ヒドロクロロチアジド2) |
ナトリウムの再吸収を阻害 | 塩分と水分の排出を促し、心拍出量を減らす |
β遮断薬 | ● ビソプロロール (メインテート) ● アテノロール (テノーミン) |
心筋のβ1受容体を遮断 | 心収縮力を抑制し、心拍出量を減らす |
高血圧の最初の治療薬として、上記のいずれかが選択される場合が多いです。それぞれの薬には、適応症や禁忌、慎重投与などがあります。そのため、患者様個人の病態や合併症に合わせて適切な高血圧薬を選択する必要があるでしょう。
上記の高血圧薬の基本的な特徴や注意点を、次から解説します。
高血圧薬「Ca拮抗薬」の特徴
Ca拮抗薬は歴史があり、よく処方されている降圧薬です。ARB・ACE阻害薬とCa拮抗薬の大きな違いは、作用機序です。
- Ca拮抗薬:Caチャネルを阻害し、血管を拡張
- ARB・ACE阻害薬:レニンーアンギオテンシン系を阻害し、血圧を上げるアンギオテンシンⅡの活性を抑制
作用機序の違いに伴い、積極的適応や禁忌疾患も異なります。
また、ARB・ACE阻害薬にはないCa拮抗薬の特徴は、次の2点です。
- 妊婦への投与が可能:ARBやACE阻害薬は妊婦に禁忌だが、アムロジピン、ニフェジピン6)7)は服用の効果がリスクを上回る場合に服用可能とされている
- 代謝酵素CYP3A4の影響:CYP3A44)の影響を強く受けるものが多いため、他剤や嗜好品との併用に注意が必要
アムロジピンとニフェジピンの投与も以前は限定的でしたが、2022年12月の改訂で妊婦に対する禁忌は解除されています。