肺高血圧症治療薬「ユバンシ配合錠」の服薬指導法のポイントを徹底解説!

前回の記事では、高血圧薬の服用で起こり得る重大な副作用をお伝えしました。高血圧治療で薬剤の安全性が重要視される一方で、一般的な高血圧症とは異なる「肺高血圧症」の治療薬開発も進んでいます。
肺高血圧症とは、肺動脈圧が平均値(25 mmHg)よりも高くなる疾患です。1)
発症原因が特定できず、予後不良の難治性疾患とされていました。しかし近年では研究が進み、診断や治療法が確立され、新たな治療選択肢も登場しています。
2024年11月20日には、肺高血圧症治療薬「ユバンシ配合錠」が新薬として収載されました。2)今回は、ユバンシ配合錠の基本情報や注意点について解説します。
高血圧薬の新薬「ユバンシ配合錠」の基本情報を紹介
「ユバンシ配合錠」の基本情報は以下の通りです。3)
商品名 | ユバンシ配合錠 |
一般名 | マシテンタン・タダラフィル配合錠 |
効能または効果 | 肺動脈性肺高血圧症 |
服用方法 | 1日1回1錠 |
薬価 | 13,334.90円2) |
製造販売元 | ヤンセンファーマ株式会社 |
ユバンシ配合錠は、肺高血圧の主な治療薬として用いられている「エンドセリン受容体拮抗薬」と「ホスホジエステラーゼ5阻害剤」の合剤です。
ユバンシ配合錠に含まれている2成分の作用機序は、以下のとおりです。
成分名 | 単剤の商品名 | 作用機序 |
マシテンタン | オプスミット錠10mg4) | エンドセリン受容体を阻害し、血管収縮 を抑制する |
タダラフィル | アドシルカ錠20mg5) ザルティア錠2.5mg /ザルティア錠5mg6) シアリス錠5mg /シアリス錠10mg /シアリス錠20mg7) |
「ホスホジエステラーゼ5」を阻害し、 cGMPを増加させて肺血管の拡張を促す |
いずれも、肺動脈に作用することで、肺動脈圧を改善する効果があります。
臨床試験(A DUE試験)では、マシテンタンまたはタダラフィル単剤を服用した対照群に比べ、ユバンシ配合錠を服用した群で肺血管抵抗(PVR)がより改善しました。3)
「ユバンシ配合錠」の副作用を知ろう
代表的な「ユバンシ配合錠」の副作用として、2つ解説します。
①貧血
ユバンシ配合錠で注意すべき重大な副作用として、貧血、ヘモグロビン減少が報告されています。
エンドセリン受容体拮抗薬(マシテンタン)がヘモグロビンを低下させる恐れがあるため、ユバンシ配合錠を服用開始前または服用中では、定期的な血液検査の実施が推奨されています。3)
実際の臨床試験では、ユバンシ配合錠投与群の約2%に顕著なヘモグロビンの減少がみられたとの報告もありました。8)
そのため、投薬時には以下のような貧血の初期症状をあらかじめ説明し、異変があれば相談するように伝えましょう。9)
- 顔が青白くなる
- 疲労感
- 頭重感
- 息切れ
- 動悸
②肝機能障害
ユバンシ配合錠により肝酵素(AST、ALT)の上昇が認められているため、服用前には肝機能検査を必ず行うこととされています。8)
また、投与中にも注意が必要です。以下の兆候があらわれた場合は、服用を中止するよう添付文書に明記されています。3)