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薬剤師のバイブル!病気とくすりのキホン

更新日: 2025年4月30日 セイトン〜脳神経外科の薬剤師〜

【薬剤師必見】心不全ってどんな病気?患者のセルフケアに役立つ知識を解説

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心不全は、心臓の機能低下により全身に血液を十分に供給できなくなる病気で、息切れやむくみ、倦怠感など自覚症状が現れます。心不全は進行性の疾患のため、予兆を見過ごすと治療の機会を失うことにもつながります。本記事では、心不全のステージ分類や症状、予後について説明しながら、適切なケアの重要性について解説します。

心不全の自覚症状とは

心不全とは、心臓の機能が低下することで全身に十分な血液を送れなくなる病気です。その結果、息切れや起座呼吸(横になると苦しい)、むくみや体重の増加、倦怠感や食欲不振といった自覚症状が現れます。

なお、高齢者の心不全は症状がはっきりしないこともあります。症状があっても「年のせい」と放置されてしまうと治療の機会を失うことにもつながるので、適切なセルフモニタリングが不可欠です。

心不全のステージ分類:病の軌跡

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2025年改訂版心不全診療ガイドライン P.20より抜粋

心不全はあらゆる心疾患の終末像とされ、「だんだん悪化し、生命を縮める病気」といわれています。この病気は、進行する疾患であるため、完治することはありません。そのため、心不全の進行度に応じてステージA~Dに分類され、治療は進行を遅らせることが中心となります。

2025年3月末に公開された「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」を元に解説していきます。

重要なのは、息切れなどの自覚症状が改善しても、ステージが前に戻ることはないという点です。つまり、症状が良くなったとしても心不全自体の進行は止まらず、ステージの後戻りはないため、進行を遅らせるための介入が常に必要です。

<心不全のステージ分類>

ステージA(心不全リスク)
心不全の危険因子(高血圧、糖尿病、慢性腎臓病など)を有するが、心機能の異常や症状はない状態。生活習慣の改善や早期の薬物治療が予防につながる。

ステージB(前心不全)
症状はないが、心室駆出率(LVEF)の低下、心肥大、弁膜症などの構造的・機能的異常が認められる段階。BNP/NT-proBNPの上昇がみられる場合も含まれる。HFrEFではβ遮断薬やACE阻害薬等の早期導入が推奨される。

ステージC(症候性心不全)
いわゆる心不全症状(息切れ、浮腫など)が出現し、うっ血やBNPやNT-proBNP高値を伴う状態。GDMT(ガイドラインに準拠した⼼不全薬物療法)を適切に導入し、再入院を防ぐ治療が必要。

ステージD(治療抵抗性心不全)
最適な治療を受けても症状が持続し、NYHA分類III度以上の日常生活制限を伴う重症例。補助人工心臓や心臓移植が検討される段階。

自覚症状に基づく心機能の分類:NYHA分類

NYHA(New York Heart Association、ニーハ)心機能分は、簡便で広く使われる評価法です。患者さんへのヒアリングによって、心不全のどのステージに該当するのか参考にすることができます。ただし、主観的な評価になってしまうため、客観性に欠ける点には注意が必要です。

最も良くなってもⅢ度より改善しない場合は、ステージDへ移行している可能性も考慮する必要があります。

<NYHAの分類と特徴>

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セイトン〜脳神経外科の薬剤師〜
せいとん〜のうしんけいげかのやくざいし〜

某県庁で環境行政を7年間担当。その後、県内の総合病院に転職し、8年目に突入。現在は脳神経外科病棟を担当。抗菌化学療法認定薬剤師、周術期管理チーム認定薬剤師、心不全療養指導士、終末期ケア専門士、心電図検定1級を取得し、医師や看護師と協働して患者さんの薬物療法の最適化に取り組んでいる。

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