高血圧治療のMR拮抗薬~スピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノン

前回は、高血圧薬と食品の併用における注意点をご紹介しましたが、今回は高血圧治療で用いられる「MR拮抗薬」について、基本から服薬指導のポイントまで解説します。MR拮抗薬が高血圧症に使用される多くのケースは、主要薬で効果が不十分な場合に追加されることがあります。この記事を通じて理解を深め、日々の業務にお役立ていただければ幸いです。
MR拮抗薬とはどんな薬?
MR拮抗薬は、腎臓の遠位尿細管にあるMR(ミネラルコルチコイド)受容体を阻害し、カリウムを保持しながらナトリウムと水分の排出を促して降圧効果を示します。1)
2025年4月現在、高血圧に用いられているMR拮抗薬は以下の3種類です。
- スピロノラクトン(アルダクトンA錠)2)
- エプレレノン(セララ錠)3)
- エサキセレノン(ミネブロ錠)4)
MR拮抗薬は、Ca拮抗薬やARBなどの主要降圧薬の服用で効果が十分得られない場合に処方されるケースが多く、低レニン性高血圧症や治療抵抗性高血圧症に有効とされています。1)
また、レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系(RAA系)において、血圧上昇に関連するアルドステロンの作用を阻害します。そのため、原発性アルドステロン症の治療にも用いられます。1)
MR拮抗薬の作用機序をおさらい
MR拮抗薬は、腎臓の遠位尿細管から集合管に存在するミネラルコルチコイド受容体(MR)を阻害し、RAA系経由で産生されるアルドステロンの作用を遮断することで降圧効果を発揮します。1)
ARBやACE阻害薬がRAA系の上流を阻害するのに対し、MR拮抗薬は下流に位置する受容体を直接ブロックする点が特徴です。
アルドステロンは、体内でナトリウム・水分の再吸収とカリウムの排泄を促します。しかしこれが過剰に作用すると循環血液量の増加を引き起こし、血圧が上昇する原因となります。4)
MR拮抗薬はこれを遮断することで、ナトリウムと水分の排出を促し、カリウムを保持しながら血圧を下げられるのです。2)
さらに、アルドステロンは心血管や腎臓に対して障害を引き起こすことが知られており、MR拮抗薬にはこうした臓器障害を抑える保護作用があります。1)5)
MR拮抗薬の副作用と服薬指導時のポイント
次に、想定される副作用や服薬指導時にチェックするポイントを解説します。
①高カリウム血症
MR拮抗薬全般に共通する副作用のひとつが高カリウム血症です。2)3)4)