糖尿病治療薬の副作用と服薬指導ポイント完全ガイド

前回の記事では、糖尿病治療薬の多剤併用療法の注意点や服薬指導のポイントについて解説しました。多剤併用時にリスクが高まる副作用の例として、低血糖や消化器症状、乳酸アシドーシスについても解説しましたが、糖尿病患者さんへの服薬指導では、副作用についての説明が欠かせません。今回は、糖尿病治療薬服用時によくみられる副作用と服薬指導のポイントについて解説します。
糖尿病治療薬服用時によくみられる副作用
糖尿病治療薬服用時によくみられる副作用として、低血糖、体重増加、消化器症状、尿路感染症・性器感染症が挙げられます。以下に、それぞれの副作用が起きやすい薬剤の種類や副作用の発現機序など、詳しく解説します。
1、低血糖
低血糖は、糖尿病治療薬の最も起こりやすい副作用です。特に、SU薬を服用中の患者さんでは注意が必要です。
2008年のACCORD試験では、強力な血糖管理を行っても心血管疾患が減少しないだけでなく、全死亡が有意に増加するという結果が得られました1)。
この結果は、重症低血糖の多発に起因すると考えられ、現在では「低血糖を起こすくらいなら、目標とするHbA1cを少し緩めましょう」という考え方が広く受け入れられています。低血糖を防ぐことがいかに重要であるかをお分かりいただけるのではないでしょうか。
2、体重増加
体重増加も糖尿病治療薬の代表的な副作用です。体重増加を引き起こす糖尿病治療薬の例として、SU薬とチアゾリジン薬が挙げられます。
SU薬はインスリン分泌を促し、チアゾリジン薬はPPARγを刺激して脂肪細胞の分化を促します。エネルギー過剰状態でこれらの薬剤を投与すると、脂肪細胞の肥大を招き、体重が増加するのです2)。
また、SU薬では、空腹時血糖が低下することで空腹感が強くなり、間食が増えて肥満が助長される場合もあります2)。
チアゾリジン薬では、Na再吸収亢進作用による水分貯留が体重増加に関与する場合もあります2)3)。
3、消化器症状
糖尿病治療薬のなかには、消化器症状が副作用としてあらわれるものもあります。
消化器症状を引き起こす代表的な糖尿病治療薬は、α-GI、BG薬およびGLP-1受容体作動薬です。
α-GIの投与では、吸収されなかった糖が大腸に達することで、腹部膨満感、放屁、鼓腸、下痢などの副作用が引き起こされます4)。消化器症状の発現を抑えるためには、少量からの投与が必要といわれています4)。
BG薬による消化器症状の発現頻度は高く、添付文書によると下痢40.5%、悪心15.4%、食欲不振11.8%、腹痛11.5%とされています5)。
消化器症状が生じる明確な機序は不明ですが、小腸からの糖吸収抑制による腸内細菌叢の変化や小腸ブドウ糖代謝の変化などが関与すると考えられています6)。投与初期や増量時には特に注意が必要です。
500mg/日の低用量から開始して週単位で漸増させる方法は、BG薬による消化器症状を軽減できると考えられており、複数の学会ガイドラインで推奨されています7)8)。また、食事毎に分割して投与することで、消化器症状が軽減される場合もあります。
GLP-1受容体作動薬は、胃内容物排出抑制作用や食欲抑制作用があり、悪心や下痢、便秘といった消化器症状を生じやすいと考えられています。
消化器症状の発現を抑えるために、少量から開始することが大切です9)。
4、尿路感染症・性器感染症
SGLT2阻害薬の副作用として、尿路感染症・性器感染症が知られています。糖の再吸収が阻害されることによる尿中糖濃度の上昇が、尿路感染症・性器感染症発症に関与すると考えられています10)。
男性より女性に多く、投与初期から継続期にわたり、いつでも発症する恐れがあるとされています11)。
糖尿病治療薬服用時によくみられる副作用の服薬指導
副作用の初期症状や対処法を説明しておくことは、患者さんの不安を軽減させ、服薬アドヒアランスの向上につながります。以下に、それぞれの副作用について、服薬指導のポイントを解説します。
1、低血糖
糖尿病の服薬指導では、低血糖の症状や対処法、低血糖を引き起こす要因について、患者さんへ説明しておくことが大切です。詳しくはこちらを確認してください。
低血糖の症状をわかりやすく伝える方法として、以下のように「はひふへほ」で説明する方法があります。