糖尿病治療薬でまれに起こる「重篤な副作用」を解説!服薬指導ポイントは?

前回の記事では、糖尿病治療薬服用時によくみられる副作用についてお伝えしましたが、糖尿病治療薬の副作用には、頻度としては少ないものの重篤な症状を引き起こすものもあります。重篤な副作用の初期症状や対処法など、糖尿病治療薬の服薬指導で役立つポイントとともにわかりやすく解説します。
糖尿病治療薬服用時にまれにみられる重篤な副作用
糖尿病治療薬服用時にまれにみられる重篤な副作用として、乳酸アシドーシス、心不全、類天疱瘡などが挙げられます。以下に、それぞれの副作用が起こりやすい薬剤の種類、副作用の初期症状や発現機序について、詳しく解説します。
1、乳酸アシドーシス
乳酸アシドーシスとは、血中の乳酸値が上昇することで著しい代謝性アシドーシスとなる状態をいいます1)。
頻度は高くないものの、「BG薬(ビグアナイド薬)」投与患者において乳酸アシドーシスの発症が報告されており2)、BG薬の服薬指導の際には必ず伝えるべき副作用です。
BG薬の服用により、肝臓における糖新生が抑制されることで乳酸の消費が減り、体内に過剰な乳酸が蓄積されることが乳酸アシドーシスの発症要因であると考えられています3)。
乳酸アシドーシスの初期症状としては、悪心、嘔吐、下痢などの胃腸症状や倦怠感、筋肉痛などが挙げられます。進行すると、過呼吸や低血圧、低体温、昏睡などの症状がみられます。しばしば予後不良で、死亡例も報告されているため、発症した際は、適切かつ迅速な治療が必要です2)。
2、心不全
糖尿病治療薬のなかには、心不全の発症リスクを高めるものがあります4)。特に注意が必要な薬剤は「チアゾリジン薬」です。
チアゾリジン薬は、PPARγの活性化を介し、腎の遠位尿細管および集合管におけるNa再吸収を促進します。この作用により体液量増加を来たし、心不全発症リスクを高めると考えられています4)。
「ピオグリタゾン錠」の添付文書には、以下のような記載があります5)。
「心不全が増悪あるいは発症することがあるので、浮腫、急激な体重増加、心不全症状・徴候(息切れ、動悸、心胸比増大、胸水等)がみられた場合には投与を中止し、ループ利尿剤等を投与するなど適切な処置を行うこと」。
発症機序は不明ですが、一部の「DPP-4阻害薬」においても、心不全発症リスクが増加する可能性が指摘されています4)。
2016年には、「サキサグリプチン(オングリザ)」と「アログリプチン(ネシーナ)」について、特に心疾患や腎疾患を合併する症例において心不全発症に注意するよう、FDAから警告が発出されました6)。
サキサグリプチン投与による心不全は、65歳以上、罹病歴10年以上あるいはBMI30以上の患者でリスクが増大する可能性も示唆されています7)。
一方で、アログリプチンに関しては、心不全発症リスクが増大しないとの報告もあり8)、議論の余地が残っています。
3、類天疱瘡
「DPP-4阻害薬」の副作用として、類天疱瘡が発現する場合があります。
類天疱瘡発現までのDPP-4阻害薬の投与期間は、投与開始後早期から数年の事例まで幅広く報告されており9)、投与期間は全期間にわたって注意が必要です。
症状としてそう痒感を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらん等が挙げられます9)。類天疱瘡の発現が疑われる場合、直ちにDPP-4阻害薬を中止し、皮膚科医に相談することが大切です。
DPP-4阻害薬服用中の水疱性類天疱瘡の発症機序はいまだ解明されていませんが、HLA-DQB1*03:01というHLA遺伝子が関与することが明らかとなっています10)。
糖尿病治療薬服用時にまれにみられる重篤な副作用の服薬指導
上記に解説した副作用は、発現頻度としては低いものの、初期症状を見逃した場合、命に危険が及ぶほど重篤となる場合があります。
服薬指導においては、これらの副作用を予防する方法や、副作用発現時の症状や対処法について、しっかりと伝えておくことが大切です。以下に、それぞれの副作用について、服薬指導のポイントを解説します。