「血糖降下作用を減弱する」可能性がある薬剤とは?糖尿病治療の基本
前回の記事では、糖尿病治療薬の薬物間相互作用について、副作用を増強する可能性のある併用例についてお伝えしました。血糖降下作用を増強する可能性のある薬剤についても解説しましたが、糖尿病治療薬の監査では、逆のパターンである血糖降下作用を減弱する薬剤についても注意が必要です。そこで今回は、血糖降下作用を減弱する可能性がある薬剤に焦点をあてて解説します。
「血糖降下作用を減弱する可能性」とはどういう意味?
血糖降下作用を減弱する可能性のある薬剤とは、言い換えると、高血糖を誘発する薬剤です。
前回の記事で、非定型抗精神病薬は、高血糖を生じる可能性があるため糖尿病の患者には禁忌であることをお伝えしました。では、非定型抗精神病薬では、どのような機序で高血糖が引き起こされるのでしょうか。
非定型抗精神病薬では、体重増加に伴うインスリン抵抗性亢進が高血糖発現に関与すると考えられています1)。このように、血糖降下作用を減弱する可能性のある薬剤について、高血糖の発現機序とともに理解すると、頭の中を整理しやすいでしょう。
高血糖の誘発は、主に以下の3つの機序により引き起こされます1)2)3)。
- ブドウ糖の過剰供給
 - インスリン分泌低下
 - インスリン抵抗性亢進
 
血糖降下作用を減弱する可能性のある主な薬剤を知ろう
以下に、血糖降下作用を減弱する可能性のある主な薬剤と血糖降下作用減弱の発現機序を示します。
① 高カロリー輸液
高カロリー輸液の投与では、血糖変動に緩衝する臓器を介することなく直接グルコースが静脈血に流入するため、ブドウ糖の過剰供給による血糖値の上昇を招きやすくなります1)。
高カロリー輸液投与開始時は、血糖値を確認しながら徐々に糖質濃度を高め、高カロリー輸液投与終了後には低血糖に注意しましょう。
② サイアザイド系利尿薬
トリクロルメチアジド、インダパミド等のサイアザイド系利尿薬は、血清カリウムの低下を介して膵β細胞からのインスリン分泌を低下させ、耐糖能を悪化させると考えられています1)2)。
③ フェニトイン
フェニトインは、インスリンの分泌を阻害することで高血糖を誘発すると考えられています1)2)。