メインテート、ビソノテープ、アーチストが禁忌解除!高血圧妊婦の不安にどう答える?
前回の記事では妊娠高血圧症について詳しくお伝えしました。
2024年4月、これまで妊婦に禁忌とされていた一部のβ遮断薬の添付文書が改訂され「禁忌」から「特定の背景を有する患者への注意喚起」へと位置づけが変更されました。1)
今回は、「妊婦へのβ遮断薬の禁忌解除による変更点」について詳しく解説します。最新の改訂内容を確認し、妊婦にβ遮断薬が処方された際の服薬指導や疑義照会、監査業務にお役立てください。
妊娠高血圧症でβ遮断薬が検討される理由
妊娠高血圧症の治療では、これまでは主にメチルドパやカルシウム拮抗薬などが推奨されていました。2)しかし近年では、一部のβ遮断薬についても使用が検討されるようになっています。
例えば、薬事・食品衛生審議会は、妊娠中のカルベジロール使用に関して以下のような見解を示しています。3)
①動物試験結果の見直し
動物実験では胎児死亡や発育遅延が報告されていますが、いずれも人で使う量の15〜29倍といった高用量によるものでした。通常の使用量では、生殖毒性リスクは低いと考えられています。
このことから、臨床使用におけるリスクは小さいとされており、母体と胎児の状態を慎重に観察しながら使用すれば、安全性は確保できると判断されています。
②海外の添付文書との比較
海外(米国、英国、加国及び豪州)の添付文書では、妊婦へのβ遮断薬の投与が禁忌とされておらず「治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すべき」と位置づけしています。
③疫学研究結果の見直し
β遮断薬を妊娠初期に使用した場合の心奇形リスクは、他の薬剤と同程度でした。
また、妊娠第2三半期(13週以降)では、β遮断薬の投与により胎児発育不全の発生が有意に多い傾向でしたが、症例数が少なく、明確な因果関係は確認されていません。
これらの結果から、妊娠中の使用を一律に禁止すべきとする明確な根拠は得られていないと判断されました。ただし、新生児低血糖やSGA(在胎週数に比して小さいこと)は、β遮断薬群で有意に多く報告されているため、使用時には注意が必要です。
④ガイドラインの見直し
海外のガイドラインにおいてβ遮断薬は「安全」、国内では「おそらく安全」と評価されています。
これらの見解をふまえ、一部のβ遮断薬は妊婦への禁忌から除外され、使用が検討されるようになりました。