1. 薬剤師トップ
  2. 薬剤師コラム・特集
  3. 薬剤師のバイブル!病気とくすりのキホン
  4. 薬剤師は要注意!リスペリドンの腎機能への影響

薬剤師のバイブル!病気とくすりのキホン

更新日: 2025年12月11日 穴田 わかな

意外な腎機能が低下時に用量調整が必要な薬剤ってなに?

薬剤師のバイブル!病気とくすりのキホンのメイン画像

腎臓は薬物動態において重要な役割を担う臓器です。一般的に、腎機能が低下すると、腎排泄型薬剤の血中濃度が上昇して副作用が出やすくなります。外来処方箋に検査値を併記する病院が増えてきており、処方鑑査時に腎機能に対する薬剤量が適切かどうか判断するスキルが求められています。

体の中の薬物動態は非常に複雑なため、腎機能が低下した際に用量調整が必要な薬剤は必ずしも腎排泄型薬剤だけとは限りません。腎機能低下時に減量が必要な薬剤に、肝代謝型薬剤が含まれていることに疑問を持ったことはないでしょうか。今回は、腎機能低下時に薬物動態が変化する腎排泄型以外の薬剤をいくつかご紹介します。

血糖降下薬「グリメピリド」の腎機能への影響とは?

脂溶性薬剤の一部は肝臓で代謝されると、水溶性が高くなって腎臓から排泄されます。このため、腎機能が低下していると、肝代謝型薬剤から作られた水溶性の代謝物は体に蓄積しやすくなります。

この水溶性代謝物に薬理活性がなければ問題ないのですが、薬理活性がある場合(活性代謝物)は、作用増強や有害事象が発生することがあります。1)

例えば、血糖降下薬の「グリメピリド」は「重篤な肝又は腎機能障害のある患者」では禁忌となっています。グリメピリドは主に肝代謝酵素 CYP2C9の関与により、シクロヘキシル環メチル基の水酸化を受け、その水溶性代謝物(M1)は主に腎臓から排泄されます。腎機能が低下しているとM1は上手く排泄されずに蓄積します。

グリメピリドよりは弱いですが、M1にも血糖降下作用が残っているので、蓄積するほど低血糖を起こす可能性が高くなります。2)

重篤な肝障害がある場合はグリメピリド自体が蓄積しやすく、重篤な腎障害がある場合は活性代謝物M1が蓄積するため、禁忌となっています。

抗精神病薬「リスペリドン」の腎機能への影響とは?

もう一つの例をご紹介します。抗精神病薬の「リスペリドン」は主に肝臓で代謝される薬剤です。その主代謝物の薬理活性は未変化体と同等かやや弱い程度で、半減期も未変化体の約3時間に対して約21時間と長く3)、薬の効果や副作用を考える上で無視できない存在です。リスペリドンの活性代謝物は「パリペリドン」という一般名で、製剤化されて「インヴェガ®」、「ゼプリオン®」として上市されています。

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

穴田 わかなの画像

穴田 わかな
あなだ わかな

保険薬局薬剤師として約20年間、さまざまな現場を経験。2022年に「腎臓病療養指導士」を取得。現在は株式会社ナカジマ薬局(https://www.nakajima-phar.co.jp/)の在宅部門とDI・学術チームに所属。在宅医療の現場で多職種と連携し、患者様の穏やかな日常を守るために奮闘しています。

キーワード一覧

薬剤師のバイブル!病気とくすりのキホン

この記事の関連記事

この記事に関連するクイズ

アクセス数ランキング

新着一覧

28万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

医薬品情報・DI 糖尿病 調剤報酬改定 薬物療法・作用機序 門前薬局 服薬指導 ハイリスク薬 医療過誤・ヒヤリハット 薬局経営 オンライン服薬指導