心不全治療で「利尿薬」を使う理由とは?
利尿薬は心不全の「症状緩和のための柱」として欠かせない薬剤です。肺うっ血や浮腫といった症状は患者さんの生活の質を大きく損なうため、こうした症状の緩和や心不全の急性増悪の予防において利尿薬は重要な役割を果たします。
一方で、予後改善薬とは異なり、直接的な予後改善効果が確立されているわけではありません。そのため、漫然と使用するとメリットよりも副作用のリスクが上回ってしまうことがあります。
今回は、「ループ利尿薬」や「トルバプタン」の作用機序や服薬指導のポイント、さらに注目される漢方薬について整理し、日々の実践に役立つ知識をまとめます。
心不全治療で「利尿薬」を使う理由とは?
心不全の患者さんは、肺うっ血や浮腫といった体液貯留の症状に悩まされます。これらは呼吸困難や足のむくみとして現れ、結果として患者さんの生活の質を大きく損なうことになります。
「ループ利尿薬」(フロセミド、アゾセミドなど)は、この余分な水分を速やかに排泄して症状を緩和する治療手段として中心的に用いられます。
利尿薬は、生命予後を改善する薬剤(β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、MRA、ARNI、SGLT2阻害薬)とは異なり、直接的な予後改善効果が確立されているわけではありません。しかし、うっ血の解除や症状コントロール、急性増悪の回避には必須の薬剤です。
加えて、「ループ利尿薬」に抵抗性が生じた際の併用薬として、サイアザイド系利尿薬やバソプレシンV2受容体拮抗薬である「トルバプタン」が選択肢となります。つまり、利尿薬は生命予後を改善する薬剤を支える「症状緩和のための柱」として、心不全治療に欠かせない薬剤と言えるでしょう。
「ループ利尿薬」&「トルバプタン」の作用機序
利尿薬は主に静脈系の容量を減少させることで、心臓への前負荷を軽減します。その結果、肺うっ血や下腿浮腫といった症状が改善し、患者さんの呼吸困難や日常生活の制限を速やかに和らげることができます。
「ループ利尿薬」はヘンレ係蹄上行脚のNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害することで、ナトリウムと水の排泄を促進します。「フロセミド」は作用発現が速く即効性が期待できますが、持続時間は短いため症状に応じて分割投与されることがあります。
一方で、「アゾセミド」は作用発現にやや時間を要しますが、持続時間が長く、心血管死や再入院の抑制効果を示す報告もあります。このため、フロセミドからアゾセミドへの切り替えや、両者の併用が行われることもあります。
さらに、バソプレシンV2受容体拮抗薬である「トルバプタン」は、ナトリウム排泄を伴わずに自由水のみを排泄する「水利尿薬」として作用します。低ナトリウム血症を合併した患者さんや、ループ利尿薬抵抗性が疑われる患者さんに有効性が認められています。
心不全治療で「利尿薬」を服用する際の服薬指導と調剤監査のポイント
「利尿薬」は心不全の症状を和らげるうえで不可欠ですが、その効果とリスクは紙一重ともいえるでしょう。何よりも、日々の体重測定とその解釈に関する指導が重要です。