インスリンの「困った!」の解決方法って?保管・手技・打ち忘れ
前回の記事では、インスリン療法について押さえておきたい基本的事項について解説しました。今回はより実践的な内容として、インスリン療法の服薬指導のポイントについて解説します。保管方法や注射手技、打ち忘れた時の対応など、インスリン療法の服薬指導で説明すべき基本的事項をおさらいしましょう。
インスリンの保管方法を知ろう
インスリン療法の服薬指導では、製剤の安定性を保つため、適切な保管方法を患者さんへ説明する必要があります。ここでは未開封時、使用開始後、携帯時に分けて、保管方法1)を解説します。
① 未開封時の保管方法
未開封のインスリン製剤は、冷蔵保存(2~8℃)が原則です。ただし、冷蔵庫の奥や冷凍室付近など凍結しやすい場所での保管は避ける必要があります。一度でも凍結した製剤は、品質が低下したり、注入器が故障したりする可能性があるため使用できません。
② 使用開始後の保管方法
使用開始後のインスリン製剤は室温(30℃以下)での保存が原則です。使用するたびに、冷蔵庫からし入れを行うことは、注入器に結露が生じ、故障につながるおそれがあるため推奨できません。光の影響を避けるため、キャップをつけて保管することも大切です。
使用開始後のインスリン製剤の使用期限は、製品によって異なります。以下に、代表的なインスリン製剤の使用期限についてまとめました。
インスリン製剤使用開始後の使用期限2)
| 種類 | 代表薬 | 使用開始後の使用期限 |
| 超速効型 | ノボラピッドN® | 4週間 |
| ヒューマログN® | 4週間 | |
| フィアスプN® | 4週間 | |
| ルムジェブN® | 4週間 | |
| 速効型 | ノボリンRN® | 6週間 |
| ヒューマリンRN® | 4週間 | |
| 中間型 | ノボリンNN® | 6週間 |
| ヒューマリンN® | 4週間 | |
| 持効型溶解 | レベミルN® | 6週間 |
| ランタスN® | 4週間 | |
| ランタスXRN® | 6週間 | |
| トレシーバN® | 8週間 | |
| アウィクリN𪣜単位 アウィクリN𪩬単位 |
6週間 12週間 |
|
| 混合型 | ノボラピッド30ミックスN® | 4週間 |
| ノボリン30RN® | 6週間 | |
| 配合溶解型 | ライゾデグN® | 4週間 |
使用期限を過ぎた薬剤は、中身が残っていても必ず廃棄するよう指導しましょう。
③ 携帯時の保管方法
携帯時には夏場は30℃を超える高温になり、冬場は凍結のリスクに晒されます。暑い場所では、保冷バッグを利用する(凍結に注意し、保冷剤を入れる場合はタオルに包む)、冷たい飲み物のペットボトルとインスリン製剤を一緒にバッグに入れる、寒い場所では、タオルに包むなどの工夫が必要です。
直射日光にあてない、車の中に置かないなどの基本的注意事項も併せて説明してください。
正しいインスリン注射手技のチェックポイントとは?
インスリン療法の効果を最大限に引き出すためには、患者さんが注射手技を正しく習得し、適切に実践することが何よりも大切です3)4)5)。
インスリン注射の正しい手順は以下の通りです。
① 物品準備、手洗い
② 針をセットして空打ち
③ 単位をセット
④ 消毒して穿刺
⑤ 注入
⑥ 針の抜去と廃棄
それぞれの手順において、服薬指導でチェックすべき主なポイントを以下に示します。
① 物品準備、手洗い
- 正しい注射タイミングを理解しているか(前回記事参照)
- 複数のインスリン製剤を使用している場合、見分けられるか
- 懸濁製剤は正しい方法で混和できているか
- 石けんを使ってしっかり手洗いできているか
② 針をセットして空打ち
- ゴム栓を消毒綿の角を使ってしっかり消毒できているか
- 注射針を真っ直ぐにゴム栓に刺せているか
- 空打ちの際、3~4回はじいて空気を上に集められているか
- 空打ちしても薬液が出ないときの対応を理解しているか(気泡を抜くため空気を上に集めて空打ちを繰り返す→出ないときは、針を交換)
③ 単位をセット
- 注射すべき単位を正しく理解しているか
- 単位窓が正しく見えているか(見えない場合、拡大鏡など補助具の使用を検討)