薬だけに頼らない、脂質異常症の「生活指導のコツ」
前回の記事では、脂質異常症の基本的な病態に加え、動脈硬化性疾患などの合併症、そして患者さんのリスクに応じた治療方針といった全体的な流れについてご紹介しました。
今回の記事ではその続編として、脂質異常症の管理において基盤となる「生活習慣の改善」に焦点を当て、実臨床で患者指導を行う際に押さえておくべきポイントをより詳しく解説していきます。生活習慣の見直しは薬物療法と並んで治療の根幹となるため、患者さんへの具体的なアドバイスの仕方についても取り上げていきます。
脂質異常症の生活指導について
脂質異常症とは、生活習慣や遺伝などの要因によって脂質代謝に異常が生じ、血液中のコレステロールや中性脂肪が正常範囲を外れた状態を指します。
脂質異常症の最大の問題点は、放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性疾患の発症リスクが高まる点にあります。そのため、早期からの適切な管理が欠かせません。
脂質管理の具体的な目標値は患者さんごとのリスクによって異なります(詳細は前回の記事を参照)。
しかし、共通して重要となるのが「生活習慣の見直し」です。
適切な食事療法や、運動習慣の確立、禁煙、節酒といった生活指導は、薬物療法と並んで脂質異常症治療の中心的な柱です。これらの改善はLDLコレステロールや中性脂肪の低下、将来的な心血管イベントのリスクを大きく下げることにつながります。
脂質異常症における食事療法のポイントとは?
1)エネルギー摂取量の見直し
食事療法を行う上で基本となるのが適正体重の維持です。
1日のエネルギー摂取量を適切に管理することで肥満予防や脂質異常症の改善が期待できます。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」では、目標体重と身体活動量を用いた以下の方法が示されています。
目標体重と身体活動量
目標体重(kg)=【身長(m)】2×目標とするBMI(kg/m2)
年齢別の目標BMI
| 年齢 | 目標とするBMI(kg/m2) |
| 18-49 | 18.5-24.9 |
| 50-64 | 20.0-24.9 |
| 65-74 | 21.5-24.9 |
| 75以上 | 21.5-24.9 |
身体活動量
| 生活活動強度 | 身体活動量(kcal/kg/日) |
| 座位中心・運動量が少ない | 25~30 |
| 軽い活動(立ち仕事・軽運動) | 30~35 |
| 活動量多い(肉体労働・運動習慣あり) | 35~ |
適正エネルギー(kcal/日)=目標体重(kg)×身体活動量(kcal/kg/日)
2)脂質摂取の質と量の適正化
①飽和脂肪酸摂取の制限
肉の脂身、加工肉、バター、ラード、乳製品などに含まれる飽和脂肪酸の過剰摂取はLDLコレステロールの上昇につながります。これらを控え、脂肪の少ない肉(ヒレ肉や鶏むね肉など)や、魚などへ置き換えるとよいでしょう。
②不飽和脂肪酸の積極的な摂取
不飽和脂肪酸は中性脂肪やコレステロールの調節に関わっており、適切に摂取することで脂質異常症の改善が期待できます。不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に大別されます。
一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)はオリーブオイルや菜種油などに多く含まれ、LDLコレステロール低下作用があり、酸化されにくいため加熱にも強いという特徴があります。
多価不飽和脂肪酸にはn-6系とn-3系があり、どちらも体内で合成できない必須脂肪酸です。
リノール酸に代表されるn-6系はLDLコレステロールの低下作用があり生体の構成成分としても重要ですが、植物油(コーン油、ひまわり油など)や加工食品、ドレッシングなど多くの食品に含まれるため、過剰摂取になりやすく、摂りすぎると炎症反応の促進や動脈硬化リスクを高める可能性があります。
一方、n-3系(青魚に多いEPA・DHA、えごま油などに含まれるα-リノレン酸)は中性脂肪の低下や血栓形成の予防効果などから動脈硬化性疾患の予防に有用とされています。
現代の食生活ではn-6系の摂取に偏りやすいため、n-3系を意識的に摂取し、摂取比率をn-6系:n-3系=4~6:1程度にすることが推奨されています。
これらを踏まえ、調理油をオリーブオイルに置き換える、週に2回以上は主菜に魚を選ぶなど、脂質の種類を意識した食事を心がけることが重要です。
ただし、不飽和脂肪酸でも摂り過ぎるとカロリー過多につながるため、脂質は総エネルギー摂取量の20~30%程度に抑えることが推奨されています。