外来がん治療認定薬剤師やぎざいしの抗がん剤オンラインDI室

更新日: 2023年2月24日 やぎざいし

抗がん剤のオンラインDI室”オシメルチニブ”について外乱がん治療認定薬剤師やぎざいしが解説

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前回は、ゼローダについて解説しました。手術不能または再発乳がん、結腸・直腸(大腸がん)、胃がんと主に3つの癌種に適応のある抗がん剤でしたね。今回は、オシメルチニブについて解説していきます。

1.オシメルチニブの適応

  • EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がん
  • EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法

オシメルチニブ(タグリッソ®)は、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに使用するチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)です。承認当初は「T790M変異」という既存のEGFR-TKIに対する耐性遺伝子を獲得した非小細胞肺がんのみ、つまり2次治療からしか使用することができませんでしたが、現在では1次治療から使用可能になっています。(2次治療から使う場合は、これまで通りT790M変異陽性の場合のみ)

また、術後補助療法にも適応となり、その売上高は全医薬品中第5位。いま肺癌領域では、最も使用されているEGFR-TKIとなっています。

2.オシメルチニブの用法用量

通常、成人にはオシメルチニブとして80mgを1日1回経口投与する。ただし、術後補助療法の場合は、投与期間は36カ月間までとする。なお、患者の状態により適宜減量する。

※他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
※副作用がみられた場合は、症状、重症度等に応じて、既定の基準を考慮して、本剤を休薬、減量又は中止すること。本剤を減量する場合には、40mgを1日1回投与すること。

とってもシンプルですね。1日1回80mgを1錠を毎日飲んで、毒性が強い副作用が出てしまった場合には休薬後に1段階減量して1回40mgにするということになります。特に下記の副作用や重症度の場合には、症状出現時点で中止を考慮しなければいけません。

●間質性肺疾患/肺臓炎

本剤の投与を中止する。

●QT間隔延長

500msecを超えるQTc値が認められる場合:
481msec未満又はベースラインに回復するまで本剤を休薬する。481msec未満又はベースラインに回復した後、本剤を減量し、投与を再開する。3週間以内に回復しない場合は本剤の投与を中止すること。

重篤な不整脈の症状/兆候を伴うQT間隔延長の場合:
本剤の投与を中止する。

●その他の副作用

Grade3以上:
Grade2以下に改善するまで本剤を休薬する。Grade2以下に回復した後、必要に応じて本剤の減量を考慮し、投与を再開する。3週間以内にGrade2以下に回復しない場合は本剤の投与を中止すること。

副作用のGrade判定はCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)に基づいて判断します。詳細については”副作用”の項目でもう少し深く触れていきますね。

3.オシメルチニブの相互作用

併用注意

  • CYP3A誘導剤:フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシンなど
  • P-gpの基質となる薬剤:フェキソフェナジン、ジゴキシン、ダビガトランエテキシラートなど
  • BCRPの基質となる薬剤:ロスバスタチン、サラゾスルファピリジンなど
  • QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤:プロカインアミド、クラリスロマイシン等

オシメルチニブは「CYP3A」によって代謝され「P-gp」「BCRP」を阻害することが分かっています。相互作用のある薬剤の中には、中止することが難しい薬剤もたくさんあります。とはいえ、併用薬を尊重するためにオシメルチニブを減量した際のデータが現時点では揃っていないため、まずは併用薬の減量や変更ができないかどうかを判断する必要があります。

4.オシメルチニブの副作用

ざ瘡用皮疹、口内炎、爪囲炎、下痢、QT間隔延長など

オシメルチニブでまず大切なのは「皮疹、爪囲炎、口内炎」のコントロールです。約30-40%の頻度で発現することが分かっています。皮疹は内服開始から約1か月前後、爪囲炎は1-2か月後から現れ始めることが多く、 QOL を低下させる要因にもなりかねません。僕たち薬剤師がフォローアップすべき重要な確認項目ですね。

また「下痢」が頻繁に起こっていないかの確認も必要です。こちらも約40%の頻度で起こるとされています。基本的な下痢の対処方法は適切な水分補給と整腸薬や止瀉薬の使用です。もし症状がある場合は、どのくらいの頻度でどのような排便があるかは、評価しておきましょう。

最後に、他のEGFR-TKIと比較してオシメルチニブに特徴的で重大な副作用であるのが「QT間隔延長」です。病院で定期的に行われる心電図検査などで発見されることがほとんどですが、QT間隔延長があると、Torsade de pointes(トルサード・ド・ポアント)や心室細動といった非常に危険な不整脈のリスクが高まります。脳梗塞や心筋梗塞、突然死に繋がるケースもあるため、毎回自覚症状の有無は軽くでも必要になります。

参考)
IQVIA トップライン市場データ
https://www.iqvia.com/-/media/iqvia/pdfs/japan/topline-market-data/2021/toplinedata_cy_2021.pdf
タグリッソ 添付文書、適正使用ガイド、患者さん向け資材
https://med2.astrazeneca.co.jp/safety/download/TAG01.pdf

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やぎざいし
やぎざいし

薬剤師/外来がん治療認定薬剤師

経歴:大学卒業後、病院薬剤師として就職。2022年、外来がん治療認定薬剤師の認定取得。入院・外来のがん治療および緩和ケアに従事している。病院勤務の傍ら、当該資格認定を目指す薬剤師向けの支援活動や、「やぎざいし」名義でブログ/Twitterでの薬の知識の発信、医療系ライターとしても活動中。
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