外来がん治療認定薬剤師やぎざいしの抗がん剤オンラインDI室

更新日: 2023年6月13日 やぎざいし

抗がん剤”オキサリプラチン”の使い方を外来がん治療認定薬剤師やぎざいしが解説

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「冷たい水で食器を洗っていたら、手が痛くなっちゃって・・・。でも、数日すると治るのよね。」
こんな訴えのある患者さんに出会ったことはありませんか?その患者さんが使っている抗がん剤は”オキサリプラチン”かもしれません。

毎日の臨床でがん治療に関わる「やぎざいし」があなたのオンライン上の同僚として、一緒にオキサリプラチンのDIを情報を読み解いていきます。さっそく見ていきましょう!

1.オキサリプラチンの適応

  • 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌(大腸がん)
  • 結腸癌における術後補助化学療法
  • 治癒切除不能な膵癌
  • 胃癌
  • 小腸癌
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オキサリプラチンは大腸癌、胃癌、膵癌など消化器癌の治療に使われています。原則、オキサリプラチンは単剤で使用することはなく、他の抗がん薬と併用して使われます。次の「用法用量」の部分で、もう少し見ていきましょう!

2.オキサリプラチンの用法用量

添付文書通りに読むと、がん治療に慣れていない薬剤師では読み解くのに少し時間がかかってしまうような記載になっています。誰でも見やすいように、表で簡潔にまとめてみます。

投与方法 投与量 投与間隔 併用薬(レジメン)
A法
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85mg/m2
(体表面積)
2週間に
1回
・FOLFIRINOX
・FOLFOXIRI
・FOLFOX
B法
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130mg/m2
(体表面積)
3週間に
1回
・CAPOX
・SOX

※各レジメンの詳細について
・FOLFIRINOX/FOLFOXIRI:5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン+イリノテカン
・FOLFOX:5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン
・CAPOX:カペシタビン+オキサリプラチン
・SOX:S-1+オキサリプラチン

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一言で表すと点滴の抗がん薬と併用する場合は「A法」内服の抗がん薬と併用する場合は「B法」になります。この投与量の違いは”投与間隔”によるものです。間隔が長くなる分、A法よりもB法の投与量が多くなっているわけですね。

B法で併用する内服薬のカペシタビンとS-1は「通常、14日間内服後に7日間休薬。計21日間が1クール」に設定されており、この内服期間に併せた投与間隔になっています。

3.オキサリプラチンの相互作用

併用注意

他の抗悪性腫瘍剤
放射線照射

・・・骨髄機能抑制等を増強することがあるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を十分に観察し、必要に応じて減量するか又は投与間隔を延長する。

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原則、オキサリプラチンは他の抗がん薬や放射線治療と併用して行われるため副作用発現には注意が必要ですね。単剤投与となる例外的なケースは「CAPOX療法を行っていたが、手足症候群がひどいため、一旦カペシタビンは休薬。今日はオキサリプラチンだけ投与実施。」といった場合です。

※カペシタビン(ゼローダ)のDI情報は、こちらの記事でも紹介しています!
https://pharmacist.m3.com/column/cancer_di/4052

4.オキサリプラチンの副作用

末梢神経障害、下痢、悪心・嘔吐、骨髄抑制、過敏症など

何より大切なのは「末梢神経障害」のコントロールと生活指導です。オキサリプラチン投与中のしびれは患者さん全員に現れるものと考えてください。

オキサリプラチンの末梢神経障害には「急性症状」「慢性症状」の2種類があります。それぞれ発現機序が異なるため、別の対応が必要となりますので順番に見ていきましょう。

末梢神経障害の「急性症状」

神経細胞の細胞膜で、オキサリプラチンによる Naチャネルの流入阻害が原因で起こる症状です。

オキサリプラチン投与直後から1~2日経つと手や足、口の周りなどにピリピリとした痛みやしびれを伴う症状が現れます。この症状は冷感刺激によって増悪することが分かっています。急性の一過性の症状であるため、投与から1週間程度で回復することが多いです。

対処方法:冷たい飲食物を避ける、お風呂でよく温まる、温かい恰好をする。

末梢神経障害の「慢性症状」

オキサリプラチンが蓄積して、神経細胞が障害されることにより起こる症状です。累積投与量が800mg/m2を超えると発現頻度が増加することが分かっています。こちらは細胞障害性の症状であるため回復に時間がかかる、もしくは不可逆的な症状となるケースがあります。

対処方法:オキサリプラチンの減量、休薬、中止を考慮する。
休薬の後に回復してから再導入をする(Stop&Go)

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他にも下痢、悪心嘔吐、骨髄抑制といった一般的な殺細胞性抗がん薬と同じ副作用にも、もちろん注意は必要ですね。

参考資料)
エルプラット インタビューフォーム
オキサリプラチン投与による末梢神経障害への対策
https://www.nc-medical.com/product/doc/XG-477.pdf
オキサリプラチン 適正使用ガイド
https://mink.nipponkayaku.co.jp/product/di/ty_file/oxai_ty_oxa20.pdf

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やぎざいし

薬剤師/外来がん治療認定薬剤師

経歴:大学卒業後、病院薬剤師として就職。2022年、外来がん治療認定薬剤師の認定取得。入院・外来のがん治療および緩和ケアに従事している。病院勤務の傍ら、当該資格認定を目指す薬剤師向けの支援活動や、「やぎざいし」名義でブログ/Twitterでの薬の知識の発信、医療系ライターとしても活動中。

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