抗がん剤”オキサリプラチン”の使い方を外来がん治療認定薬剤師やぎざいしが解説
「冷たい水で食器を洗っていたら、手が痛くなっちゃって・・・。でも、数日すると治るのよね。」
こんな訴えのある患者さんに出会ったことはありませんか?その患者さんが使っている抗がん剤は”オキサリプラチン”かもしれません。
毎日の臨床でがん治療に関わる「やぎざいし」があなたのオンライン上の同僚として、一緒にオキサリプラチンのDIを情報を読み解いていきます。さっそく見ていきましょう!
1.オキサリプラチンの適応
- 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌(大腸がん)
- 結腸癌における術後補助化学療法
- 治癒切除不能な膵癌
- 胃癌
- 小腸癌
2.オキサリプラチンの用法用量
添付文書通りに読むと、がん治療に慣れていない薬剤師では読み解くのに少し時間がかかってしまうような記載になっています。誰でも見やすいように、表で簡潔にまとめてみます。
投与方法 | 投与量 | 投与間隔 | 併用薬(レジメン) |
A法 |
85mg/m2 (体表面積) |
2週間に 1回 |
・FOLFIRINOX ・FOLFOXIRI ・FOLFOX |
B法 |
130mg/m2 (体表面積) |
3週間に 1回 |
・CAPOX ・SOX |
※各レジメンの詳細について
・FOLFIRINOX/FOLFOXIRI:5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン+イリノテカン
・FOLFOX:5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン
・CAPOX:カペシタビン+オキサリプラチン
・SOX:S-1+オキサリプラチン
3.オキサリプラチンの相互作用
併用注意
他の抗悪性腫瘍剤
放射線照射
・・・骨髄機能抑制等を増強することがあるので、併用療法を行う場合には、患者の状態を十分に観察し、必要に応じて減量するか又は投与間隔を延長する。
※カペシタビン(ゼローダ)のDI情報は、こちらの記事でも紹介しています!
https://pharmacist.m3.com/column/cancer_di/4052
4.オキサリプラチンの副作用
末梢神経障害、下痢、悪心・嘔吐、骨髄抑制、過敏症など
何より大切なのは「末梢神経障害」のコントロールと生活指導です。オキサリプラチン投与中のしびれは患者さん全員に現れるものと考えてください。
オキサリプラチンの末梢神経障害には「急性症状」「慢性症状」の2種類があります。それぞれ発現機序が異なるため、別の対応が必要となりますので順番に見ていきましょう。
末梢神経障害の「急性症状」
神経細胞の細胞膜で、オキサリプラチンによる Naチャネルの流入阻害が原因で起こる症状です。
オキサリプラチン投与直後から1~2日経つと手や足、口の周りなどにピリピリとした痛みやしびれを伴う症状が現れます。この症状は冷感刺激によって増悪することが分かっています。急性の一過性の症状であるため、投与から1週間程度で回復することが多いです。
対処方法:冷たい飲食物を避ける、お風呂でよく温まる、温かい恰好をする。
末梢神経障害の「慢性症状」
オキサリプラチンが蓄積して、神経細胞が障害されることにより起こる症状です。累積投与量が800mg/m2を超えると発現頻度が増加することが分かっています。こちらは細胞障害性の症状であるため回復に時間がかかる、もしくは不可逆的な症状となるケースがあります。
対処方法:オキサリプラチンの減量、休薬、中止を考慮する。
休薬の後に回復してから再導入をする(Stop&Go)
参考資料)
エルプラット インタビューフォーム
オキサリプラチン投与による末梢神経障害への対策
https://www.nc-medical.com/product/doc/XG-477.pdf
オキサリプラチン 適正使用ガイド
https://mink.nipponkayaku.co.jp/product/di/ty_file/oxai_ty_oxa20.pdf