第106回薬剤師国試問題
< 問216~217 >
患者の家族が処方箋を持参した。家族に行う説明として適切なのは?
75歳男性。3年前にパーキンソン病と診断され、レボドパ100 mg・カルビドパ配合錠1日3錠、トリヘキシフェニジル塩酸塩錠2 mg1日3錠で薬物治療を継続していた。3ヶ月前にレボドパ100 mg・カルビドパ配合錠が1日5錠に増量になり(処方1)、さらに、今回から処方3が追加になった。処方2は、用法・用量の変更はなく継続中である。
(処方1)
レボドパ100 mg・カルビドパ配合錠 1回1錠(1日5錠)
1日5回 7時、10時、13時、16時、20時 14日分
(処方2)
トリヘキシフェニジル塩酸塩錠2 mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分
(処方3)
プラミペキソール塩酸塩水和物徐放錠0.375 mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 14日分
< 問216 >
患者の家族が薬局に処方箋を持参した。薬剤師が家族に行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
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処方1は胃腸障害を起こしやすいので、牛乳と一緒に服用しても構いません。
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体の一部が自然に動いてしまう不随意運動を抑えるため、処方3が追加になりました。
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処方3の影響で、暴食を繰り返すような行動が現れることがあるので、そのような症状が現れた場合は主治医に連絡してください。
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処方3により眠気が現れることがあるので、自動車等の運転は避けるようにしてください。
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パーキンソン病の症状が改善されたら、直ちに処方3の薬剤の服用を中止してください。
回答・解説
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3. 処方3の影響で、暴食を繰り返すような行動が現れることがあるので、そのような症状が現れた場合は主治医に連絡してください。
4. 処方3により眠気が現れることがあるので、自動車等の運転は避けるようにしてください。
本患者は、3年前にパーキンソン病と診断され、レボドパ・カルビドパ合剤及びトリヘキシフェニジルにより治療を継続しており、3ヶ月前にレボドパ・カルビドパ合剤が増量されていることから、レボドパの薬効時間が短縮するwearing-off 現象を呈していると考えられる。さらに、今回処方されたプラミペキソールは、既存の処方で症状が十分に改善されなかったため、新たに追加されたと考えられる。
1 不適切。レボドパ・カルビドパ合剤は、牛乳やヨーグルト、バナナなどと同時に服用すると吸収が悪くなることが報告されているため、乳製品などと一緒に服用するのは避ける。
2 不適切。プラミペキソールは、ドパミンD2受容体を刺激することでパーキンソン病の症状を抑えるものであり、既存の処方で症状が十分に改善されなかったために追加処方されたものであると考えられる。問題文中にある「体の一部が自然に動いてしまう不随意運動」とは、主にドパミンの作用が過剰になることが原因の1つとされているジスキネジアの症状をさしているものと考えられ、その改善にドパミンD2受容体を刺激するプラミペキソールを用いるとは考えられないため、家族に行う説明としては不適切である。
3 適切。プラミペキソールの服用により、暴食や病的賭博、強迫性購買などの衝動制御障害が報告されているため、このような症状が現れた場合には主治医に連絡する。また、主治医は、患者及び家族などにこのような衝動制御障害の症状について説明する必要がある。
4 適切。プラミペキソールの服用により、前兆のない突発的睡眠及び傾眠などが見られることがあるため、本剤服用中には自動車の運転、機械の操作、高所作業など危険を伴う作業に従事させないよう家族に説明する必要がある。
5 不適切。パーキンソン病患者において、プラミペキソールの減量、中止が必要な場合、急激な減量又は中止により悪性症候群の誘発や薬剤離脱症候群(無感情、疲労感、疼痛などの症状)が現れることがあるため、医師の指導により漸減する必要がある。
以下、付属問題
< 問217 >
この患者に起きていると考えられる生体内変化はどれか。2つ選べ。
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黒質から線条体に至るドパミン作動性神経の変性が進行した。
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線条体におけるコリン作動性神経からのアセチルコリン放出が減少した。
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線条体で放出されたドパミンの分解が低下した。
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線条体におけるコリン作動性神経のドパミンによる抑制が減弱した。
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末梢血液中のドパ脱炭酸酵素活性が低下した。
回答・解説
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1. 黒質から線条体に至るドパミン作動性神経の変性が進行した。
4. 線条体におけるコリン作動性神経のドパミンによる抑制が減弱した。
1 正。パーキンソン病では、黒質から線条体に至るドパミン作動性神経が変性し、神経細胞からのドパミン放出量が低下している。
2 誤。パーキンソン病では、線条体においてアセチルコリンの放出を抑制するドパミンの放出量が低下しているため、相対的にコリン作動性神経からのアセチルコリンの放出が促進している。
3 誤。黒質から線条体に至るドパミン作動性神経から放出されるドパミンは、モノアミン酸化酵素(MAO)などの酵素によって分解されるが、パーキンソン病でこれらの分解反応が低下しているわけではない。なお、MAOB選択的阻害薬であるセレギリンは、中枢におけるドパミンの分解を抑制し、不足しているドパミンの量を増加させることができる。
4 正。パーキンソン病では、線条体に放出されるドパミンが減少するため、コリン作動性神経のドパミンによる抑制が減弱している。
5 誤。パーキンソン病では、黒質―線条体系におけるドパミン作動性神経の変性が主な病因と考えられており、一般に末梢血液中のドパ脱炭酸酵素(DDC)の活性低下は見られない。またレボドパは、末梢血液中のDDC によって代謝されると脳内移行量が低下するため、脳外組織のDDCを阻害するカルビドパを併用することで、レボドパの脳内移行量を増加させることができる。
※本クイズの内容は2021年10月作成時点のものであり,ご覧いただいた時点で最新情報ではない可能性がございます。