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地域の取り組み最前線

更新日: 2018年12月13日 薬剤師コラム編集部

薬剤師からの処方提案、コツは「患者さん」

4師会が協力体制にある茨城県薬剤師会。信頼が生まれたエピソード

茨城県薬剤師会の会長 根本清美氏のインタビュー第2回。医師と強い信頼関係を築いたエピソードや、処方提案のコツなどを、調剤薬局勤務レポーターが伺いました。
前回の記事はこちら「困ったら、一番に薬剤師を思い浮かべてほしい」


住宅地図を広げて開業医に集患アドバイス。感謝が「信頼」に

──第29回茨城県薬剤師会学術大会において、4師会が一堂に会するのは、非常に珍しいことと感じましたが。

茨城県は、人口当たり医師数が47都道府県中ワースト2位で、医師不足が深刻です。そのため茨城県では、医師会、歯科医師会、薬剤師会の3師会の協力関係は以前からありましたが、そこに看護協会を加えた4師会が相互に協力する体制ができており、信頼関係を築いてきました。

──具体的に4師の連携ではどのようなことができるのでしょうか。

例えば日常業務においても、薬剤師の在宅訪問時、口腔衛生の保たれていない患者を確認すると、歯科医を受診勧奨するという連携が行われています。

また、地域に密着している薬局だからこそ可能なアドバイスもしてきました。以前、薬局の近くに、眼科医院が開業しました。プールの季節など流行り病の時は混雑するものの、それ以外の季節は常に集患に苦戦しているようでした。

そこで薬局が持つ地域情報を生かして、住宅地図にピンを立てながら、地域のどこにクリニックの看板を出す必要があるか、どんな疾患の診療を周知することが集患に有効かを眼科医院の院長に伝えたのです。院長には非常に喜んでいただき、今では年間を通じて、安定した集患ができるようになりました。

医師と相談。薬剤師が文献を探して症状改善

薬学的な知見を活かす場面でも薬剤師ができることは多いと思います。
腎機能の安定しない患者さんについて、医師と相談し、文献を探してきたことがありました。球形吸着炭製剤先発品のクレメジンとジェネリックにおいて、吸着能に違いがあったとして、2009年ジェネリック医薬品品質情報検討会が結論付けたもの※でした。文献をもとに、クレメジンで調剤するようになり、患者さんの腎機能は安定するようになりました。

医師が見つけることが難しかった文献を、薬剤師の知識を生かして探し出し、患者さんの症状改善に成功しました。病院と連携しプロトコールが行われている地域があることも、長年、地域で信頼関係が構築されてきたからだと思います。こうした活動を通じて日頃から多職種連携ができているからこそ、処方提案にも真摯に対応してくれるようになりました。

※レポーター注:各ジェネリック医薬品メーカーは、その後吸着性を改良し、現在はクレメジンと一定の同等性の認められた製品を販売しています。

薬剤師による処方提案。成功率をアップさせるコツ。

薬剤師からの処方提案、コツは「患者さん」 平成14年より茨城県薬剤師会会長を務めている 根本先生の画像
平成14年より茨城県薬剤師会会長を務めている 根本先生

──今では医師から厚い信頼が寄せられているということですが、最初から処方提案が受け入れられていたわけではなかったと思います。何か、処方提案のコツなどありましたら、伝授いただけないでしょうか。

今でも、医師への処方提案が全て受け入れられるわけではありません。もちろん、医師にも考えがあって処方されていると思います。医師にきちんと伝えたい、という時には、患者さんを味方につけることが一番です。患者さんから「薬を減らしたい」と医師に直接伝える方法や、薬剤師から「患者さんが薬を減らしたいと言っている」と伝える方法が、最も医師に響きやすいのです。

また、薬を飲み始めて数日で副作用が起きなかったら、恒久的に副作用が起きないというものではありません。長年飲み続けている薬が原因で副作用が生じることもあります。「何十年も飲み続けている薬だから安心」と思っている患者さんは多く、たとえ薬の副作用でふらついて骨折しても、薬のせいではない、と信じ続けています。こういった患者さんに対して、薬を長く飲み続けているとどうなるのか、副作用をきちんと伝えることも、薬剤師の仕事です。

「今までと同じですね」と伝えるだけの指導は必ずしも最善ではないかもしれません。きちんと患者さんと向き合うことで、患者さんとも信頼関係が築かれると良いですね。

日頃からの医師・歯科医師と薬剤師との信頼関係ももちろん重要。患者さん、医師、歯科医師から「この薬剤師が言うのだから」と思われるようになれば、提案は通りやすくなります。

取材レポーターO の視点

かかりつけ薬剤師として継続的に患者さんと関わっていくと、今の薬を飲み続けてよいのか心配になる事があります。薬学的アセスメントを行った結果、飲み続けた方が良い薬だけでなく、飲まなくてもよいかもしれない薬、中止した方が良い薬と疑義が生じることもあります。継続中の薬を中止するのは簡単なことではありませんが、根本先生から伝授されたコツを踏まえて医師・歯科医師との信頼関係、患者さんとの信頼関係を築き、ポリファーマシー問題と向き合っていきたいと思いました。

そのためにも地域の中で協力関係を築いていくことが重要だと認識しました。医師や歯科医師に対して始めから根本先生のような提案をするのは難しいかもしれませんが、まずは近隣の先生と、少しでも接点を持つことを心がけたいと思います。

根本先生の「薬剤師の仕事って、調剤だけじゃないんです。薬剤師には、もっと多くの可能性があります。」という言葉が強く心に残りました。

レポーターO
製薬企業、CROの勤務を経て、薬局勤務7年目の管理薬剤師。エビデンスをもとに、ポリファーマシー問題に対応したいと思っている。

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薬剤師コラム編集部

「m3.com」薬剤師コラム編集部です。
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