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地域の取り組み最前線

更新日: 2018年12月19日 薬剤師コラム編集部

インフル有害事象、薬別の違いは見られず【茨城県薬剤師学術大会レポート】

患者の年齢・投与薬剤ごとの有害事象発現率を調査

インフル有害事象、薬別の違いは見られず【茨城県薬剤師学術大会レポート】の画像
『2017/18シーズン抗インフルエンザ薬調剤患者への後日聞き取り調査』発表資料より

年に一度、茨城県内の薬剤師が集結する「第29回茨城県薬剤師会学術大会(2018年11月18日開催)」に、現役・薬剤師レポーターが密着!今回ご紹介させていただくのは、薬剤師の廣澤 明子氏(絹の里薬局)による口頭発表『2017/18シーズン抗インフルエンザ薬調剤患者への後日聞き取り調査』です。
調査の過程で、「連絡時、ちょうど嘔吐で苦しんでいた患者さんがいました」といったリアルな体験談も。調査結果だけでなく、85%という高い電話回答率が得られた理由にも注目です。

聞き取り調査で有害事象発見。薬剤師から服薬中止を指示

絹の里薬局では、2017/18シーズンのインフルエンザ治療薬を調剤した患者さんに対し、調剤の3日後、電話連絡し、有害事象及びその他の有害事象発現の有無を確認。聴取した副作用について、年齢、性別、投与薬剤によって異常行動及び有害事象が変化するか確認した。

廣澤氏は、電話連絡時のエピソードを語った。「連絡時、ちょうど嘔吐で苦しんでいた患者さんがいました。事前に処方医と相談し、有害事象が発現していた時には、薬剤師の判断で服薬中止を指示してよいとの了承を得ておりましたので、この患者さんには、服薬中止を指示しました。苦しんでいる時に、気にかけてもらえるということは、患者さんにとってそれだけで助けになる事もあります。」

薬剤別の副作用頻度の違いは見られず。年齢別では、10歳未満、10代で頻度高い傾向

インフル有害事象、薬別の違いは見られず【茨城県薬剤師学術大会レポート】『2017/18シーズン抗インフルエンザ薬調剤患者への後日聞き取り調査』 発表資料の画像
調査年代及び有害事象発生年代別結果 
『2017/18シーズン抗インフルエンザ薬調剤患者への後日聞き取り調査』 発表資料

 結果は以下の通り。(口頭発表資料より)

  • 総投与数217名、その内、電話連絡が通じた患者さんは185名
  • 有害事象が発現していた患者さんは22名(12%)、その内、異常行動発現は0名
  • 有害事象内訳:味覚障害、不眠、咳、腹痛、下痢、悪心、嘔吐発熱、発赤、だるさ、悪寒、頭痛
  • 年齢別の患者数、有害事象発現数は以下の通り。
  • 調査年齢 人数 有害事象有人数
    10歳未満 44 10 22.7
    10歳代 65 5 7.7
    20-40歳代 44 3 6.8
    50-60歳代 18 3 16.7
    70歳以上 14 1 7.1
    合計 185 22 11.9
  • 投与薬剤別の患者数、有害事象発現数は以下の通り
    投与薬剤 投与数 有害事象発現数
    タミフル 74 13 17.6
    イナビル 98 9 9.2
    リレンザ 11 0 0
    ゾフルーザ 2 0 0
以上の調査結果から、「有害事象発現患者のうち、約半数は10代以下でした。20代以上では、薬局に来局せず、院内でラピアクタ投与を受けた方もいらっしゃるため、有害事象を把握しきれなかった部分もあります。投与薬剤別の有害事象数からは、投与数に比例して有害事象数が増えており、薬剤別の傾向は認められませんでした。」と述べた。

また、「茨城県薬剤師会では会員の薬局に、処方後に電話連絡を行うよう呼び掛けてきました。今回の聞き取り調査もとてもスムーズに進めることができ、217名のうち、185名もの患者さんから回答が得られました。」と日頃からの、患者さんとの関係構築についても言及した。

今シーズンも、電話連絡、副作用調査を継続

インフル有害事象、薬別の違いは見られず【茨城県薬剤師学術大会レポート】発表者:廣澤明子氏(絹の里薬局)の画像
『2017/18シーズン抗インフルエンザ薬調剤患者への後日聞き取り調査』発表者:廣澤明子氏(絹の里薬局)

今後の展開について、廣澤氏は、「2018/19シーズンにおいては、ゾフルーザの処方量が増えることが予想されること、タミフルのジェネリックが発売になったこと、10代へのタミフル処方制限が解除されたことにより、今回の調査とは異なる傾向が見られる可能性もあります。今シーズンも、引き続き調査を継続していきたいです。」と語った。

取材レポーターO の視点

毎年インフルエンザ流行シーズンになると、薬局カウンターにて「異常行動」に対する注意喚起を行う薬剤師は多いでしょう。しかし、繁忙期である同シーズン、全てのインフルエンザ患者に調剤後の連絡を試みることは、決して容易なことではないと思われます。
取り組みの結果、服薬中止の指示を出して患者さんの有害事象を減少させた、という主体的な関わりは、多職種連携・地域連携の中で、薬剤師の職域を発揮している素晴らしい事例だと感じました。
調査結果は、取り扱う薬剤への理解を深める大変貴重な情報だと思います。1人の薬剤師が1人の患者へ電話をかける、という誰でも始められる地道な活動が意義のある成果に繋がるという、気づきを得ました。

レポーターO
製薬企業、CROの勤務を経て、薬局勤務7年目の管理薬剤師。エビデンスをもとに、ポリファーマシー問題に対応したいと思っている。

シリーズ 地域の取り組み最前線
新たな地域医療「地域包括ケアシステム」で重要な役割を期待される薬剤師。すでに様々な団体が地域・多職種連携を強める活動を行っています。
薬剤師コラム「地域の取り組み最前線」では各種団体・地域のユニークな取り組みを紹介します。

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