疑義照会不要で業務負担を軽減【茨城県薬剤師学術大会レポート】
ひたちなか地域のICTとプロトコールを活用した薬薬連携
『ひたちなか地域における院外処方箋薬物治療管理プロトコールと残薬解消プロトコールに対する評価と有用性』
現役・薬剤師レポーターがお届けする「茨城県薬剤師会学術大会(2018年11月18日開催)」。今回のレポートは、薬剤師 名越 ソッヴィリヤック ヴァッティ氏(友愛薬局ひたちなか店)による口頭発表『ひたちなか地域における院外処方箋薬物治療管理プロトコールと残薬解消プロトコールに対する評価と有用性』です。
茨城県 ひたちなか総合病院において2014年に「ひたちなか健康ITネットワーク」が立ち上げられ、2つのプロトコールが運用されています。厚労省にも好事例として取り上げられた、ポリファーマシー解消が期待される運用方法や、今回の調査でわかった有用性は必見です。
ICTを用いた地域連携
2014年9月より、ひたちなか総合病院において薬薬連携強化を目的に「ひたちなか健康ITネトワーク」が立ち上げられ、臨床検査値、内服薬投与歴、注射薬投与歴、入退院日も情報共有可能に。単に情報公開するのみではなく、病院薬剤部主導により、地域の薬剤師会と連携し、勉強会開催、研修実施、ICTを活用したネットワーク構築も実施している。
2つのプロトコール運用開始により、疑義照会件数削減
2014年11月より「院外処方箋薬物治療管理プロトコール」が、2016年4月より「残薬解消プロトコール」が運用開始となった。
「院外処方箋薬物治療管理プロトコール」は、「同一成分・規格の後発変更、規格違いの後発変更は報告不要、同一成分先発→先発への変更、後発→先発への変更は事後報告、半錠分割、粉砕、一包化は事後報告で良いとするもの」である。一方、「残薬確認プロトコール」では、「患者さんの残薬を確認した際、残薬の種類、数量、残薬の発生した理由、薬剤師の対応を記載し、事後報告することで良いというもの」である。
90%超の薬剤師が評価した「有用性」
『ひたちなか地域における院外処方箋薬物治療管理プロトコールと残薬解消プロトコールに対する評価と有用性』発表者: 名越 ソッヴィリヤック ヴァッティ氏(友愛薬局ひたちなか店)
「今回、プロトコールの有用性についてひたちなか薬剤師会に所属する75店舗の薬局の管理薬剤師を対象にアンケートを実施したところ、以下のような結果となりました。」
以下口頭発表資料より
- 74店舗(98.7%)より回答あり
- 院外処方箋薬物治療管理プロトコールは有益と考える:96.9%
- 残薬解消プロトコールは有益と考える:91.8%
「調査の結果、プロトコール活用により、患者さんの待ち時間短縮、日常業務の負担軽減、在庫負担減少の効果がありました。ひたちなか総合病院では、疑義照会はFAXで受け付けていますので、これまでは1件につき15~30分かかっていました。それが、プロトコール活用により、0分で済むのです。」と有用性について述べ、「有益であると回答いただいた比率は、特に、調剤経験の長い薬剤師程高い傾向がありました。
また、調査対象の薬局から、残薬解消プロトコール活用により、患者さんの残薬持参率が上昇したという意見もありました。」一方、「ひたちなか総合病院からの処方箋応需枚数が少なく、地域薬剤師会の勉強会などにあまり参加していない薬局では、両プロトコールをあまり活用できていない状況」であることもわかったと報告した。
ICT・プロトコールの意外な効果
更に、一歩進んだ取り組みもあった。「残薬が発生する理由の分析が、ポリファーマシー解消につながることもあります。1日3回処方によって残薬が生じている場合などは、疑義照会やトレーシングレポートにより、服用時点数を減らす処方提案も実施しています。」データ化によって、今まで見落としていた事象も発見しやすくなり、より効果的な処方提案が可能となりそうだ。
シリーズ 地域の取り組み最前線
新たな地域医療「地域包括ケアシステム」で重要な役割を期待される薬剤師。すでに様々な団体が地域・多職種連携を強める活動を行っています。
薬剤師コラム「地域の取り組み最前線」では各種団体・地域のユニークな取り組みを紹介します。
取材レポーターO の視点
データ化によって、今まで見落としていた事象も発見しやすくなり、より効果的な処方提案が可能となりそうだ。
レポーターOプロトコール運用によって不要となる疑義照会を省いたとしても、今まで通り、あるいは今まで以上に安全な薬物治療が可能であるという実績を積み上げることが、国の制度を動かし働き方を変えるような大きな成果につながると期待しています。
製薬企業、CROの勤務を経て、薬局勤務7年目の管理薬剤師。エビデンスをもとに、ポリファーマシー問題に対応したいと思っている。