【2024年度】調剤管理加算の算定要件と薬剤師が押さえるポイント
2022年度の診療報酬改定で新設された調剤管理加算。この制度は、薬剤師の対人業務における取り組みを適切に評価するために導入されました。しかし、算定要件を満たしているにもかかわらず、制度を活用できていない薬局も多いのではないでしょうか。本記事では、調剤管理加算導入の背景や算定要件、実施時の注意点について詳しく解説します。
調剤管理加算とは
調剤管理加算は、調剤管理料にかかる加算として、主にポリファーマシー解消への取り組みを評価する制度です。複数医療機関から合計6種類以上の内服薬の処方を受けている患者に対して、適切な薬学的管理をおこなっている場合に加算を算定できるようになりました。
ポリファーマシーについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
調剤管理加算ができた背景と目的
調剤管理加算が導入された背景には以下の目的が挙げられます。
- 対人業務の評価体系の見直し
近年、薬剤師の役割は調剤業務から対人業務に重点を置くようになったことで、患者に対する薬学管理を適切に評価する仕組みが求められるようになりました。 - ポリファーマシーの解消
多剤併用患者では、薬剤間の相互作用や重複投薬のリスクが高まります。また、高齢化が進む中で、高齢者の多剤併用の割合は高く、治療の安全面と医療費削減の両面で薬剤師が貢献していくことが期待されています。 - 服薬指導時間の増加
多剤併用患者に対しては、服薬指導やアセスメントに多くの時間が必要です。特に、高度な薬学的分析や患者への説明に負担がかかるため、これらの業務を評価する仕組みが導入されました。
調剤管理加算の対象患者
調剤管理加算の対象となるのは、以下の2つの条件を満たす患者です。
- 複数医療機関から合計6種類以上の内服薬が処方されている
- 初来局もしくは2回目以降の処方変更・追加時
参照:診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 厚生労働省告示第57号 別表第三調剤報酬点数表(令和6年3月5日)/厚生労働省
対象となる内服薬の数え方
算定の対象となるのは、「6種類以上の内服薬」を服用している場合であり、内服以外の薬は対象外です。内服薬には以下のものが含まれます。
- 錠剤
- カプセル剤
- 散剤
- 顆粒剤
- 内服液剤
- シロップ剤
これらを1銘柄ごとに1種類とカウントするため、錠剤4種類、カプセル2種類のような場合は、合計6種類とみなされます。
調剤管理加算の点数
調剤管理加算の点数は以下の2通りの算定方法があります。
- 初めて来局の場合:3点
- 2回目以降の来局で処方変更もしくは追加があった場合:3点
処方受付1回につき1回のみ算定が可能です。
調剤管理加算の施設基準(実績要件)
調剤管理加算算定には、2つの実績要件が定められています。これらを満たしていれば、算定にあたって地方厚生(支)局長への届出は不要です。
服用薬剤調製支援料の算定実績があること
調剤管理加算算定には、ポリファーマシー解消への取り組みが以前より実施されているという実績が必要です。そのため、過去1年間に1回以上服用薬剤調製支援料を算定している必要があります。服用薬剤調製支援料は6種類以上の内服薬を服用中の患者への取り組みに対しての報酬です。1と2の2種類があり、それぞれの算定要件の概要は以下の通りです。
【服用薬剤調製支援料1】 条件:4週間以上継続して服用している内服薬が6種類以上ある患者について、処方医に提案を行い、内服薬が2種類以上減少した状態が4週以上続いた場合 点数:125点 |
【服用薬剤調製支援料2】 条件:複数医療機関から処方された6種類以上の内服薬に対し、重複投薬の解消などの取り組みを実施した場合 点数: 110点(過去1年以内に重複投薬等解消の実績がある場合)/ 90点(それ以外) |
参照:診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 厚生労働省告示第57号 別表第三調剤報酬点数表(令和6年3月5日)/厚生労働省
お薬手帳の活用実績があること
3ヶ月以内に再来局した患者のうち、50%以上が手帳を提示している実績が必要です。多剤併用患者の服薬状況を正しく把握するために、お薬手帳は非常に重要な役割を果たします。そのため、患者に対してお薬手帳の必要性を十分に説明し、提示を促す取り組みは、服薬管理加算算定においても重要視されています。
参照: 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 保医発0305第6号(令和6年3月5日)/厚生労働省
調剤管理加算で薬剤師がするべきこと
情報を一元的に把握し、必要な薬学的管理を行う必要があります。以下に挙げる項目に意識的に取り組んでいきましょう。
1)重複投与、相互作用の確認
服用する薬の種類が増えることで、重複投与や相互作用のリスクは高くなります。特に複数医療機関から処方が出ている場合、医師が互いの処方内容を把握していない場合もあるため、薬局で慎重に確認をすることが重要です。
2)情報の一元的管理
複数医療機関の薬に関する情報を、薬局で一元的に管理することは、治療の安全性を確保する上で重要です。以下に挙げるものを活用しながら患者の服薬に関する情報を取集しましょう。
- お薬手帳
- オンライン資格確認等システムを活用した診療情報
- 薬剤情報等の情報
- 薬剤服用歴等
- 直接患者、またはその家族等から収集した服薬状況等の情報
3)副作用有無の確認
多剤併用患者の場合、副作用の発現頻度が高くなります。副作用の発生件数は薬剤数にほぼ比例して増加し、6種類以上が特に発生増加に関連したというデータもあるため、薬局で継続的に確認していくことが必須です。
4)薬学的分析と薬歴への記載
多剤併用患者の場合、複数の疾患を治療している場合が多く、幅広く薬学的分析をおこなう必要があります、分析をおこなった結果は通常時と同様全て薬歴に記載を心がけましょう。
5)調剤後の患者の服用薬や服薬状況の把握
調剤後も服薬状況に関して定期的にフォローアップを実施することで、健康状態に変化が出た際は早めに対応することが可能です。
6)必要に応じた処方医への情報提供
重複投与や影響を与える併用薬の有無、副作用の発現が確認されたときには必ず医師への情報提供をおこないましょう。それ以外にも減薬の提案が可能な場合と思われる場合は、積極的に医師への情報提供をおこなうことでポリファーマシーの解消を目指していきましょう。
調剤管理加算の算定注意ポイント
調剤管理加算を算定するにあたり心がけるべきポイントをお伝えします。
内服薬の種類と数え方
先にも述べた通り、1銘柄1種類として6種類以上の内服薬を服用していることが、調剤管理加算の算定要件の一つです。この際、頓服薬は含まれませんので注意しましょう。また、他の薬局で別の病院の薬をもらっている場合、お薬手帳等から情報を得て、全て合わせて6種類とカウントすることは可能です。
副作用に注意
高齢者は多剤服用の割合が多く、副作用の発現のリスクも高いため、特に注意が必要です。患者の服用薬に関連した副作用の可能性を検討する際は、以下に示す資料等を参考にすると良いでしょう。
参照:
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)/厚生労働省
高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別)/厚生労働省
病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方/厚生労働省
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン/日本老年医学会
2回目以降に処方箋を持参した場合
2回目以降の来局の場合、①内服薬の種類が変更となった場合または②内服薬が1種類以上追加になった場合のみ算定が可能です。6種類以上の内服薬のうち、自薬局で調剤しているものに変更・追加があった場合に算定可能となります。この際、今まで調剤していた内服薬と同一薬効分類の有効成分を含む配合剤や内服薬以外の薬剤への変更は「内服薬の種類が変更した場合」とは認められないので注意しましょう。
参照: 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 厚生労働省(令和6年3月5日)/厚生労働省
調剤管理加算に関する疑義解釈
以下に厚生労働省より出されている疑義解釈(令和4年3月31日)の内容もあわせて紹介します。