特定薬剤管理指導加算3の算定要件をわかりやすく解説!【2024年度新設】
特定薬剤管理指導加算3は2024年度の調剤報酬改定において新設されました。RMPを用いた薬学的管理や、選定療養の導入といった新たな評価基準が設けられたことで、算定要件の全てを把握しきれていない人も多いのではないでしょうか。本記事ではRMPや選定療養といった言葉の意味や算定要件、特定薬剤管理指導加算1・2との違いについて詳しく解説していきます。
特定薬剤管理指導加算3とは
特定薬剤管理指導加算3は、服薬管理指導料とかかりつけ薬剤師指導料にかかるものであり、特に丁寧な説明が必要となる薬剤が処方されている患者への適切な指導を評価するものです。服薬による副作用や相互作用などのリスクに関する指導、選定療養の対象となる先発医薬品の使用を希望する患者への説明や指導を行うことで算定が可能となります。本加算には以下の通りイとロの2区分があります。
特定薬剤管理指導加算3-イ:「患者向けRMP資材」を用いて指導した初回に算定。
特定薬剤管理指導加算3-ロ:調剤前に「長期収載品に関する選定療養の説明」または「流通不安定な薬を変更せざるを得ない場合に説明及び指導」を行った初回に算定。
次に、特定薬剤管理指導加算3の算定要件のキーワードとなるRMPと選定療養について確認をしていきましょう。
RMP(医薬品リスク管理計画)とは
RMP(RMP資材)とは、Risk Management Planの略で、製薬会社が医薬品ごとに作成する「医薬品リスク管理計画」の書類のことです。承認前から市販後までに収集された副作用リスクを整理し、今後のリスク管理計画についてまとめられています。RMPの策定・実施は医薬品の承認条件となっており、その中でも患者向けのものが「患者向けRMP資材」と呼ばれているものです。特定薬剤管理指導加算3を算定するためには、患者向けRMP資材を使用して患者への指導を行うことが定められています。
RMP資材に関しては以下のPMDAのホームページからダウンロードが可能なため、必ずRMP提出品目及び資材の最新情報を確認した上で指導を行いましょう。
RMP提出品目一覧|独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
ただし、RMP提出品目のリストに名前があっても患者向け資材がない医薬品の場合は特定薬剤管理指導加算3が算定できないため注意が必要です。
参照:医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)|医薬品医療機器総合機構(PDMA)
参照:3分でわかる!RMP講座|医薬品医療機器総合機構(PDMA)
参照:今日からできる!How to RMP ~RMPってなに?編~|医薬品医療機器総合機構(PDMA)
RMP資材の目的や入手方法、具体的な活用法を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
選定療養とは
今年度の改定から長期収載品の選定療養の仕組みが導入されました。選定療養とは、患者が保険適応外の治療を希望する際に、追加でかかる費用を患者が負担することにより、保険適用の治療と併せて対象の医療サービスを受けることができるというものです。今回導入されたのは、後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)を選択する場合に対する選定療養であり、患者の希望で長期収載品を使用する場合は、その差額の一部を患者自身で負担することになりました。選定療養の対象となる先発医薬品については、厚生労働省のホームページで一覧が公表されていますので確認をしましょう。
参照:後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省
特定薬剤管理指導加算3の算定要件
特定薬剤管理指導加算3は、イとロの2区分に分かれており、それぞれ対象となる患者や薬剤が異なります。ただし、いずれの場合も算定点数は1回につき5点です。
イ RMPに基づく指導を行った初回
以下のいずれかの条件を満たす場合に算定可能です。
- 患者向けRMPのある医薬品が新たに処方され、RMPに基づいて患者又はその家族等に対し、副作用、併用禁忌等の情報提供や指導をした場合
※患者向けRMP資材がないもの、RMPの策定・実施が解除された医薬品は算定不可 - 緊急安全性情報(イエローレター)、安全性速報(ブルーレター)が新たに発出された際に、安全性に関する情報提供と指導をした場合
ロ 選定療養等の説明・指導を行った初回
以下のいずれかに関して、調剤前に説明・指導をした場合に算定が可能です。
- 長期収載品の選定療養に関する説明をした場合
※説明した結果、後発医薬品を選択した場合も算定可能
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 厚生労働省 令和6年3月28日 - 医薬品供給不安定を理由に、前回と異なる銘柄で調剤・交付する必要があることを説明した場合
特定薬剤管理指導加算3の算定の流れを図解で確認したい方は以下の記事をご覧ください。
算定対象患者
特定薬剤管理指導加算3の算定対象となる患者はそれぞれイ・ロで示されている説明や指導を受けた患者です。患者本人以外の家族や代理人が説明・指導を受けた場合も算定可能です。
ロの条件での算定可否について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
算定上限回数とタイミング
患者一人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定が可能です。
特定薬剤管理指導加算3算定時の注意点
ここでは、特定薬剤管理指導加算3を算定する上での注意点や覚えておくべき実施事項に関して解説をしていきます。
イとロは同時算定が可能である
イとロのどちらの条件も満たす場合は、同時に算定が可能です。また、1回の処方で「イ」に該当する薬と「ロ」に該当する薬が同時に処方されている場合も、それぞれの要件を満たしていればどちらも算定が可能です。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 厚生労働省 令和6年3月28日
自家製剤加算との算定可否に関して知りたい方は以下の記事をご覧ください。
薬剤服用歴・レセプトへの必要事項を記載する
特定薬剤管理指導加算3を算定した場合は、薬剤服用歴やレセプトに対象となる医薬品に関して記載する必要があります。また、以下のような場合もそれぞれ記載を忘れずに行いましょう。
- 「イ」ではRMP資材を用いて行った指導内容の要点を薬歴に記載する。使用した資材の添付や資材名の記載は不要。
- 「ロ(銘柄変更)」は必要数量を確保できなかった薬剤名をレセプトに記載する。
特定薬剤管理指導加算3の算定対象外となる医薬品がある
患者向けRMP資材がない医薬品や、薬機法の再審査が終了してRMP資材の策定・実施が解除された医薬品については、特定薬剤管理指導加算3を算定できません。特定薬剤管理指導加算3のイを算定する場合、RMPが作られている医薬品や資材については、医薬品医療機器総合機構のホームページで最新情報を確認する必要があります。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省
参照:RMP提出品目一覧|医薬品医療機器総合機構(PDMA)
特定薬剤管理指導加算3のよくある質問に関しては以下の記事をご覧ください。
特定薬剤管理指導加算1・2との違い
特定薬剤管理指導料は1-3があり、それぞれ安全管理が必要な薬が処方となった際の管理や指導に対して評価した加算です。
特定薬剤管理指導加算1とは、いわゆるハイリスク薬と呼ばれる薬を対象とした加算であり、抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤など、厚生労働省が定める「特に安全管理が必要な医薬品」について、薬剤の管理や指導などを行った場合に算定できます。
特定薬剤管理指導加算2は、悪性腫瘍の治療を行う患者の服薬サポートを行うことを評価する加算です。レジメンを把握した上で体調変化や副作用などのチェックを行い、医師に対して文書を用いた情報提供が求められます。
それぞれの違いや特徴については以下に示す通りです。
特定薬剤管理指導加算1 | 特定薬剤管理指導加算2 | |
対象患者 | ハイリスク薬が処方された患者 | 抗悪性腫瘍剤を注射された悪性腫瘍患者 |
対象薬剤 | ハイリスク薬 | 内服の抗悪性腫瘍剤やその他支持療法の薬 |
点数 | 新たに処方 10点 指導の必要 5点 |
100点 |
算定頻度 | 処方箋受付ごとに1回 | 月に1回まで |
医師への情報提供 | なし | あり |
患者の同意 | なし | あり |
※同処方内でもそれぞれ条件を満たしているのであれば併算定が可能
参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
2024年度調剤報酬改訂における特定管理指導加算のポイントや現状を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
特定薬剤管理指導加算3に関する疑義解釈
特定薬剤管理指導加算3の「イ」又は「ロ」について、当該患者が継続して使用している医薬品ではあるが、当該医薬品に関して、保険薬剤師が重点的な服薬指導が必要と認め、当該加算の算定要件を満たす説明及び指導を行った場合、初回に限り算定できるか。
出典: 疑義解釈資料の送付について(その8) 厚生労働省 令和6年6月18日
長期収載品の処方等又は調剤について選定療養の仕組み(以下「本制度」という。)が導入される令和6年 10 月1日より前の時点で、本制度の対象となる医薬品について患者に対して説明を行った場合、特定薬剤管理指導加算3の「ロ」は算定できるか。
出典: 疑義解釈資料の送付について(その8) 厚生労働省 令和6年6月18日
薬局での丁寧な説明を算定に繋げていきましょう
特定薬剤管理指導加算3は、RMP資材やブルーレター・イエローレターを活用した指導を通じて、薬剤師の専門性をより一層発揮することを目的としています。また、選定療養の導入に伴い、患者への丁寧な説明が評価されるようになり、薬局薬剤師には対人業務へのさらなる注力が求められています。特定薬剤管理指導加算3を適切に算定するために正しい理解を深め、積極的に新しい制度を活用していきましょう。