【2024年度改定版】調剤管理料とは?算定要件をわかりやすく解説!
調剤管理料は、薬局業務における対人業務を適切に評価する目的で、2022年度の診療報酬改定で新設された項目です。2024年度改定でも見直しがおこなわれ、評価内容がさらに明確化されました。薬局における対人業務は多岐にわたるため、「どのような業務が調剤管理料の対象になるのかわかりにくい」と感じている方も多いかもしれません。本記事では、調剤管理料の算定要件、2024年度調剤報酬改定のポイント、および関連する各種加算についてわかりやすく解説していきます。
調剤管理料とは?
調剤管理料は、薬局における調剤業務の中で、対人業務に関わる部分を評価するための薬学管理料です。具体的には、患者の情報を基にした薬学的管理や、薬剤服用歴へ適切に記録をおこなった場合等に算定されます。2022年度以前は、調剤業務は主に対物業務として「調剤料」で評価されていました。しかし、2022年度の診療報酬改訂において、薬剤師の対物業務と対人業務を区別して評価するため、調剤料は廃止されました。その後2024年度改訂では、調剤業務は「薬剤調製料(対物業務)」と「調剤管理料(対人業務)」に明確に分けて評価されるようになりました。
薬局の基本業務は主に3項目で評価される
処方箋を受け付けてから、患者が服薬するまでの一連の流れは、主に「調剤管理料」「薬剤調製料」「服薬管理指導料」の3つの項目で評価されます。
ここでは、それぞれが評価する業務段階や項目についてみていきます。
調剤業務の流れ | 算定項目 |
〜処方箋受付〜 ① 患者情報等の分析・評価 (お薬手帳、後発医薬品の希望の有無、 薬剤服用歴等に基づく薬学的分析・評価) ② 処方内容の薬学的分析 (疑義照会を含む) ③ 調剤設計 |
調剤管理料 |
④ 薬剤の調製、取り揃え ⑤ 最終監査 |
薬剤調製料 |
⑥ 服薬指導、薬剤の交付 | 服薬管理指導料 |
⑦ 調剤録・薬剤服用歴への記載 | 調剤管理料・服薬管理指導料 |
1) 調剤管理料
調剤管理料は主に薬剤調製前の対人業務を評価します。薬剤調製前に患者情報をもとにした薬学的分析・評価をおこない、必要に応じて疑義照会をおこなうなど、個々の患者に対して安全で適切な医療を提供する取り組みが評価の対象になります。投薬後の適切な薬歴の管理も調剤管理料を算定する上で求められています。
2) 薬剤調製料
対物業務は薬剤調製料で評価されます。薬剤調製や薬の取り揃え、監査業務といった、薬を正しく準備するといった業務を評価する項目です。
3) 服薬管理指導料
服薬管理指導料は薬剤調製後の対人業務を主に評価します。服薬指導や、その後の服薬状況の継続的な把握が対象となります。また、指導内容等を薬歴に適切に記録していくことも服薬管理指導料の算定項目の一つとなっています。
調剤管理料の2024年度調剤報酬改定のポイント
2024年度改訂では、調剤管理料に関連して以下のような変更がおこなわれました。
1) RMPを用いた薬学的分析・評価が算定条件に追加
調剤管理料の算定要件に「薬剤服用歴や医薬品リスク管理計画(RMP)などの情報に基づいた薬学的分析と評価を行うこと」が加えられました。
医薬品リスク管理計画(RMP)とは、製薬会社が医薬品ごとに作成する文書のことで、承認前から市販後までに収集された副作用リスクを整理し、今後のリスク管理計画についてまとめられています。2024年度改訂においては、より対人業務に力を入れていくために、薬歴やRMPの情報を把握した上で患者の薬学的管理を行うことが定められました。
参照:医薬品リスク管理計画(RMP)/独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
2) 加算項目の名称変更・点数変更
調剤管理料にかかる加算においても以下の通り変更がおこなわれました。
1.「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」→「医療情報取得加算」へと名称が変更。2024年12月以降は2区分から1区分となり、算定点数・算定頻度も以下の通り変更。
【2024年6月〜11月】
医療情報取得加算1 3点
医療情報取得加算2 1点
6ヶ月に1回算定
【2024年12月〜】
医療情報取得加算 1点
12ヶ月に1回算定
2.重複投薬・相互作用等防止加算の「残薬調整に係るものの場合」での算定点数が、30点から20点へ減点。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要(調剤)/厚生労働省
参照:個別改定項目について/厚生労働省
調剤管理料の算定要件
調剤管理料の算定要件は以下のように規定されています。
「処方された薬剤について、患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集し、必要な薬学的分析を行った上で、薬剤服用歴への記録その他の管理を行った場合に、調剤の内容に応じ、処方箋受付1回につき所定点数を算定する。」
調剤管理料算定における施設基準はありません。また、必要な薬学的分析をおこなう上で確認すべき情報として挙げられているのは以下の通りです。
- 投薬歴
- 副作用歴
- アレルギー歴
- 服薬状況等の情報
- 手帳
- 医薬品リスク管理計画
- 薬剤服用歴等
参照:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 厚生労働省 令和6年3月5日
算定点数
調剤管理料は、処方内容に応じて2つに区分され、それぞれ算定できる点数は異なります。 処方箋受付1回につき所定の点数を算定可能です。1・2の併算定はできない他、特別調剤基本料Bを算定している薬局は算定できません。それぞれの算定要件、点数は以下の通りです。
1.内服薬あり(内服用液剤、浸煎薬、湯薬及び頓服薬は除く)
7日分以下 4点
8〜14日分 28点
15〜28日分 50点
29日分以上. 60点
※服用時点が同一である内服薬は、投薬日数に関わらず、1剤として算定。
1回の受付で算定できるのは3剤までとする。
2.①以外
4点
※内服薬以外の場合は、処方箋受付1回につき1回算定可能。
剤数の数え方について
調剤管理料を算定する上で重要となる剤数の数え方ですが、服用時点が同じものを「1剤」として考えます。
例1)
A錠 1錠 1日1回 朝食後 7日分
B錠 2錠 1日1回 朝食後 7日分
→A錠、B錠どちらも服用時点は「朝食後」のため、この場合は1剤です。
例2)
A錠 1錠 1日1回 朝食後 14日分
B錠 1錠 1日1回 夕食後 14日分
C錠 3錠 1日3回 毎食後 14日分
→服用時点は「朝食後」「夕食後」「毎食後」のため3剤です。
算定時の留意点
調剤管理料の算定にあたり、以下の点を確認しておきましょう。
- 調剤管理料は、同一患者の1回目の処方箋受付時から算定できる。
- 処方箋受付1回について4剤以上ある場合は、3剤として算定しなければなりません。
- 隔日投与などの指示により服用しない日がある場合は、実際の投与日数で算定する。
隔日投与の処方における調剤管理料算定の具体例に関しては以下の記事をご覧ください。
分割調剤における日数の考え方
分割調剤をおこなった場合の調剤管理料の算定方法は、2つの分割調剤パターン毎に以下のように考えます。
1.長期投薬/後発医薬品使用による分割調剤の場合
1回目の調剤から通算した日数に対応する点数から前回までに請求した点数を差し引いた点数を算定。
2.医師の指示による分割調剤の場合
所定の点数を分割回数で割り、1分割調剤ごとに算定。
※2回目以降の調剤をおこなう場合には、患者の服薬状況、服薬期間中の体調変化等について医師に情報提供し、薬歴等に記載することが調剤管理料の算定要件となる。
調剤管理料にかかる加算
調剤管理料の加算は3つあり、それぞれ特定の対人業務を評価するものです。それぞれの算定要件の概要は以下の通りです。
加算 | 算定要件 | 点数 |
重複投薬・相互作用 等防止加算 |
提案後に処方変更あり | 残薬調整以外 40点 残薬調整 20点 |
調剤管理加算 | 複数医療機関から合計6種類以上の 内服薬が処方されている患者 |
初来局時 3点 2回目以降 (処方変更・追加) 3点 |
医療情報取得加算 | オンライン資格確認体制、 1年に1回まで |
1点 |
重複投薬・相互作用等防止加算
重複投薬・相互作用等防止加算とは、重複投薬や相互作用がある処方に対し、処方医に疑義照会を行い、処方内容が変更となった場合に算定できる加算です。また、残薬を確認し、処方日数の調整をおこなった場合にも算定が可能です。算定をおこなうにあたり、処方医への問い合わせ内容や変更内容を薬剤服用歴等に記載する必要があります。2024年度の改訂において残薬調整の場合の点数が30点→20点と減点になりました。
重複投薬・相互作用等防止加算について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
調剤管理加算
調剤管理加算は、主にポリファーマシー解消への取り組みを評価するものです。複数の病院から6種類以上の内服薬が処方されている患者に対して、適切な薬学的管理をおこなっている場合に算定可能です。
調剤管理加算について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
医療情報取得加算
医療情報取得加算とは、オンライン資格確認を導入している薬局において、患者から得られる薬剤情報や特定健診情報を活用して調剤を実施することなどを評価する加算です。前述の通り、2024年度の診療報酬改訂において名称や区分、算定点数等が変更になりました。今後、マイナ保険証やオンライン資格確認の普及が予想される中で、対応していく薬局が評価されるようになりました。
医療情報取得加算について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
調剤管理料に関する疑義解釈
調剤管理料における「内服薬」に、浸煎薬及び湯薬は含まれないのか。
出典:疑義解釈資料の送付について(その1) 厚生労働省 令和4年3月31日
内服薬(内服用滴剤、浸煎薬、湯薬及び屯服薬であるものを除く。)と外用薬が同時に処方された場合、調剤管理料1及び調剤管理料2を同時に算定可能か。
引用:疑義解釈資料の送付について(その1)/厚生労働省 令和4年3月31日
対人業務を充実させ、患者に寄り添った医療を目指して
近年、薬剤師が果たす対人業務への期待が高まり、調剤管理料をはじめとする評価項目の重要性が見直されています。算定要件や改定ポイントを理解し、患者一人ひとりに適切な薬学的管理を提供することで、患者に寄り添う医療の実現を目指していきましょう。