【2024年度改定版】調剤基本料の算定要件と改定内容をわかりやすく解説!
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「自分の薬局の調剤基本料の算定要件や施設基準がどれに当てはまるのか知りたい」「調剤基本料にかかる加算にはどのようなものがあるのか知りたい」といった悩みを抱えている方も多いことでしょう。
本記事では2024年に改定された調剤基本料の算定要件や変更点をわかりやすく解説します。
調剤基本料とは
調剤基本料とは、調剤薬局で受付1回につき支払う基本料のことです。保険薬局は厚生労働省によって定められた点数を処方箋を受付時に算定します。
調剤薬局は、調剤報酬点数表と呼ばれる、国で定められた点数表をもとに点数を算定します。調剤報酬は2年おきに改定されるため、定期的に学ぶことが求められます。
2024年度改定における変更内容
2024年度調剤報酬改定で、調剤基本料の引き上げや調剤基本料2の対象範囲拡大、特別調剤基本料の細分化・点数引き下げ、調剤基本料の加算の新設・見直しが変更になりました。
調剤基本料1〜3の点数引き上げ
2024年度の調剤報酬改定により、調剤基本料がそれぞれ3点ずつ引き上げられました。
調剤基本料1〜3の点数は以下のとおりです。
- 調剤基本料1 42点→45点
- 調剤基本料2 26点→29点
- 調剤基本料3 イ 21点→24点
- 調剤基本料3:ロ 16点→19点
- 調剤基本料3:ハ 32点→35点
今回の改定では、地域医療に貢献する調剤薬局の役割を評価し、薬剤師や事務員の賃上げを促進し、人材の確保を目的としています。
調剤基本料2の対象範囲拡大
2024年度調剤報酬改定により、1か月の受付回数が4,000回を超え、かつ処方箋受付回数が多い上位3位の医療機関の調剤が7割を超える薬局も対象になります。
2024年度調剤報酬改定は、地域医療を支える薬局の役割をより公平に評価することを目的としています。改定を機に、地域のニーズに応える体制の強化がますます期待されるでしょう。
特別調剤基本料の細分化・点数引き下げ
特別調剤基本料は、病院の敷地内にある調剤薬局が対象となる調剤基本料のことです。以前は、病院の敷地内に調剤薬局があることは禁止されていました。その後、2016年に厚生労働省が病院と同じ敷地内に薬局があることを解禁し、病院の敷地に薬局があることで、患者に便利となった一方で、薬局としての独立性が確保されないという課題が残るため減さんとなっています。
参照:保医発 0331 第6号 平成 28 年3月 31 日 「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」 の一部改正について/厚生労働省
調剤基本料にかかる加算の新設・見直し
2024年度調剤報酬改定によって「医療DX推進体制整備加算」と「在宅薬学総合体制加算」の点数が新設されました。
医療DX推進体制整備加算は、月に1回(4点)算定できます。
医療DX推進に係る体制として別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険薬局において調剤を行った場合は、医療DX推進体制整備加算として、月1回に限り4点を所定点数に加算する。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要 【調剤】/厚生労働省保険局医療課
また今回の調剤報酬改定により、在宅患者調剤加算が廃止になり、在宅薬学総合体制加算が新たに新設されました。
在宅薬学総合体制加算は、在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うにつき必要な体制を評価するものであり、在宅患者訪問 薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料若しくは在宅患者緊急時等共同指導料又は介護保険における居宅療養管理指 導費若しくは介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者等が提出する処方箋を受け付けて調剤を行った場合に算定できる。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要 【調剤】/厚生労働省保険局医療課
2024年度調剤報酬改定で「地域体制支援加算」と「連携強化加算」も見直されました。
地域支援体制加算は、地域の医薬品の供給が行える拠点として整備された際にかかる加算です。2024年度の改定によって地域体制加算1〜4がすべて7点マイナスになりました。
連携強化加算も見直され、2点から5点に引き上げとなっています。結果として、保険薬局は調剤基本料に3点追加され、地域支援体制加算の届け出は不要になりました。
調剤基本料の点数
2024年度調剤報酬改定で調剤基本料が引き上げになり、調剤基本料2の対象範囲が拡大しましたが、一定の基準に満たしていないと、調剤基本料の50%が減算となる場合もあるため注意が必要です。
調剤基本料が減算となる場合
以下に該当すると調剤基本料の50/100に減算されます。
- 医薬品の妥結率が50%以下である場合
- 医薬品の妥結率、医薬品の流通に関する状況を地方厚生(支)局長に報告していない保険薬局
- 保険薬剤師のかかりつけ機能に係る基本的業務を1年間実施していない保険薬局
調剤基本料の算定要件及び施設基準
受付回数 | 店舗数 | 集中率 | 点数 | |
①調剤基本料1 | 処方箋受付1回につき | ー | 集中率が70%超 | 45点 |
②調剤基本料2 | 4,000回超 / 月 | ー | 上位3位医療機関の集中率が70%超 | 29点 |
月2,000回超 / 月 | ー | 集中率85%超 | ||
月1,800回超 / 月 | ー | 集中率95%超 | ||
特定の医療機関が月4,000回超 / 月 | ー | ー | ||
調剤基本料3 イ) | いずれかに該当する場合 | 集中率95%超 | イ)24点 | |
同一グループの保険薬局 3,500万回超〜4万回以下 / 月 | ー | |||
同一グループの保険薬局 4万回超〜40万回以下 |
ー | 集中率85%超 | ||
同一グループの保険薬局 3,500万回超&特定の医療機関と不動産の賃貸借取り引き |
ー | ー | ||
調剤基本料3 ロ) | いずれかに該当する場合 | 集中率85%超 | ロ)19点 | |
同一グループの保険薬局 40万回超 / 月 | 同一グループの薬局が300店舗以上 &特定の医療機関と不動産の賃貸借取り引き | |||
調剤基本料3 ハ) | いずれかに該当する場合 | 集中率85%以下 | ハ)35点 | |
月40万回超 | 同一グループの薬局が300店舗以上 | |||
特別基本料A | 医療機関と同一敷地内 | ー | 集中率50%超 | 5点 |
特別基本料B | 調剤保険料に係る届出をしていない薬局 | ー | ー | 3点 |
調剤基本料の違いは、薬局の環境や役割に応じて公平に評価し、グループ店や地域貢献の高い薬局に適切な料金を算定する仕組みになっているためです。
調剤基本料1
調剤基本料1は、処方箋受付1回につき算定できる料金区分の一つです。調剤基本料2・3や特別調剤基本料A・Bが適用されない場合、または近隣に医療機関が少ない地域で運営する保険薬局が対象となります。
調剤基本料2
調剤基本料2は、受付回数と集中率に応じて4つの区分に分類され、いずれかの条件を満たす場合に29点が算定可能です。病院やクリニックのすぐ近くにある薬局が該当します。
ただし、同一建物内に複数の医療機関がある場合、受付回数は合算する点に注意が必要です。
調剤基本料3
調剤基本料3は、「イ」「ロ」「ハ」の3つの区分に分けられているのが特徴です。同一グループの薬局数が300店舗を超える場合や、一定の集中率の要件を満たすことで算定できる点数です。大規模なチェーン薬局が対象となり、個人経営や店舗数が少ない薬局は該当しません。
特別調剤基本料A
2024年度調剤報酬改定により、特別調剤基本料Aが7点から5点に引き下げられました。特別調剤基本料Aは、医療機関と同一敷地内にあり、処方箋集中率が50%を超える薬局が対象です。
特別調剤基本料B
2024年度調剤報酬改定により、特別調剤基本料Bが新設されました。この点数は、調剤基本料の施設基準に係る届け出を行っていない薬局を対象としています。同じ敷地内にある薬局に比べ、届け出を行っていない薬局に対しては厳しい評価が適用されることとなりました。
調剤基本料の算定上限回数
調剤基本料は、処方箋受付1回につき1回算定します。同一の医療機関で歯科と歯科以外の科の処方箋が交付された場合は、受付回数は2回と数えます。
処方箋受付回数の数え方
処方箋受付回数の数え方は以下の通りです。
- 処方箋受付日でカウントする
- 同じ病院の場合は1回でカウントする
- 医科と歯科の処方箋は別受付となる(同じ医療機関でも歯科は別受付)
- 別の医療機関はそれぞれカウントする
例えばA病院からの処方箋を応需した場合は、受付回数を1回としてカウントします。同じ医療機関で昨日(3月1日)の処方箋と今日(3月2日)の処方箋2枚を同日に受け付けた場合は1回でカウントします。
A病院の内科と心療内科の2つの科を受診し、それぞれの科の処方箋を持参した場合は、受付回数は1回です。
同じ病院でも内科と歯科で受付回数は2回と数えるのが特徴です。
AクリニックとB病院と別々の医療機関の処方箋を同時に持ってきた場合は、受付回数は2回とカウントします。
実績の判定期間
処方箋の受付回数の実績は、前年の3月1日から当年の2月末日までの期間を判定基準としています。処方箋回数の資料の提出は、薬局が適切に基準を満たしているかを判断するためです。
参照:保医発 0305第6号令和6年3月5日 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて/厚生労働省
受付回数に含めない処方箋
受付回数に含めない処方箋は以下のとおりです。
- 薬剤調剤料の時間外加算、休日加算、深夜加算または夜間・休日等加算を算定した処方箋
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料または在宅患者緊急時等共同指導料の基となる調剤に係る処方箋(在宅患者訪問薬剤管理指導料(在宅患者オンライン服薬指導料を除く)の処方箋は、単一建物診療患者が1人の場合は含める)
- 居宅療養管理指導費または介護予防居宅療養管理指導費の基となる調剤に係る処方箋(ただし、単一建物同居人が1人の場合は含める)
調剤基本料にかかる加算
今回変更になったのは、以下の4つです。
- 地域支援体制加算
- 連携強化加算
- 後発医薬品調剤体制加算
- 在宅薬学総合体制整備加算(2024年度新設)
- 医療DX推進体制整備加算(2024年度新設)
地域支援体制加算
2024年度調剤報酬改定により、地域支援体制加算がかかりつけ機能として厳格化されました。
地域支援体制加算は、2018年に新設された制度で、地域医療に貢献する調剤薬局の役割を評価する加算点数です。
地域支援体制加算を算定するためには、薬局における体制の要件を満たし、調剤基本料の区分を満たす必要があります。24時間対応することや在宅医療への積極的な取り組みなど、地域密着型のサービス提供が求められる点が特徴です。
地域支援体制加算はすべての加算が7点マイナスに変更になりました。
連携強化加算
連携強化加算は2022年度の調剤報酬改定で新設されました。災害や新興感染症性が発生した場合に、医薬品の供給や管理など、地域のために薬局としての役割を果たしている体制を整えている薬局に対しての評価とも言えます。1回につき5点算定が可能です。
連携強化加算は、地域支援体制加算を算定している薬局で、施設基準を満たしている場合に対象となります。
後発医薬品調剤体制加算
後発医薬品調剤体制加算は、国内で医療費が増え続けている状況を鑑み、少しでも医療費を削減することを目標に作られた点数です。処方箋に医師が一般名を記述することで、先発医薬品と後発医薬品を患者さん自身が選択できます。
参照:後発医薬品調剤体制加算:令和6年度診療報酬改定の概要 【個別改定事項(Ⅱ)】/厚生労働省
在宅薬学総合体制加算(2024年度新設)
これまでの在宅患者調整加算(15点)が廃止され、新たに在宅薬学総合体制加算1(15点)と在宅薬学総合体制加算2(50点)が新設されました。
なお、特別調剤基本料Aを算定する保険薬局の場合、加算点数は100分の10に相当する点数が適用されます。また、特別調剤基本料Bを算定している保険薬局は、加算1・2のいずれも算定できません。
在宅薬学総合体制加算についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
医療DX推進体制整備加算(2024年度調剤報酬改定で新設)
電子処方箋やマイナンバーカードによるオンラインの保険の資格確認、診療や薬剤情報を取り入れている場合の評価が新設されました。電子処方箋や電子薬歴、保険情報など多くの情報が確認できることから、今まで以上に質の高いサービスが求められています。
調剤基本料に関する疑義解釈
【医療DX推進体制整備加算】
- 医療DX推進体制整備加算の算定要件として、「紙の処方箋を受け付け、 調剤した場合を含めて、調剤結果を電子処方箋管理サービスに登録」する こととされているが、保険薬局において1週間分の調剤結果をまとめて登 録するような場合でも要件を満たすか。
- 不可。処方医への疑義照会を踏まえた薬剤の変更等を含め、最新の薬剤情 報を活用できるようにするため、調剤後速やかに調剤結果を電子処方箋管理サービスに登録すること。
出典:疑義解釈資料の送付について(その2)令和6年4月12日
【医療情報取得加算】
- 医療情報取得加算1又は2について、6月に1回に限り所定点数に加算することとされているが、同一患者が複数の保険医療機関から交付された 処方箋を受け付けた場合に、医療機関ごとに算定できるか。
- 算定不可。患者につき6月に1回に限り算定する。
出典:疑義解釈資料の送付について(その4) 令和6年5月10日
【調剤基本料】
- 保険薬局の新規指定を受ける際に、例えば以下の場合について、同一グ ループ内の薬局数についてどのように考えればよいか。
①令和6年8月に新規指定を受ける場合
②令和7年4月に新規指定を受ける場合 - 指定の日の属する月が5月から 12 月であれば当年4月末時点の、1月か ら4月までであれば前年4月末時点の同一グループの薬局数(当該保険薬 局を含む。)で判断されたい。したがって、①及び②のいずれについても令 和6年4月末時点の同一グループの薬局数(当該保険薬局を含む。)で判断 することとなる。
出典:疑義解釈資料の送付について(その3)令和6年4月 26 日
調剤基本料を通じて求められている薬局の役割を理解しましょう
2024年度の調剤報酬改定の変更点や調剤基本料、処方箋受付回数の数え方などを解説しました。調剤基本料1〜3が引き上げとなった一方で、特別調剤基本料の細分化・点数の引き下げなども変更となりました。
2024年度調剤報酬改定では、地域に貢献している薬局を評価する傾向にあり、在宅訪問やかかりつけ薬局としての在り方が求められています。