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調剤報酬改定の算定項目をわかりやすく解説

更新日: 2025年3月9日 薬剤師コラム編集部

【2024年度改定版】居宅療養管理指導とは?算定要件をわかりやすく解説

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日本では高齢者の割合が約30%となり、在宅医療の重要性は年々高まっています。薬剤師にとっても、在宅業務を経験したことがある方が多いのではないでしょうか。しかし、居宅療養管理指導の算定要件や、ゼロから在宅を始める際の手順について、不安を感じることもあるかもしれません。この記事では、算定要件だけではなく、居宅療養管理指導の一連の流れをわかりやすく解説していきます。

居宅療養管理指導とは

居宅療養管理指導とは、定期的な通院が困難な患者に対し、薬剤師が自宅や高齢者介護施設などを訪問し、必要な薬学的管理や指導行うことです。

介護保険を利用したサービスであり、患者の療養環境や症状にあわせた服薬の支援を行っていくことで、適切かつ安全に治療を継続することを目指しています。

地域医療全体で患者の生活や健康をサポートする取り組みであり、医師やケアマネージャー、訪問看護師といった他職種との連携も重要です。

居宅療養管理指導の対象患者

居宅療養管理指導は介護保険を利用したサービスであり、以下の患者が対象となります。

  • 要介護1~5の認定を受けている65歳以上の高齢者
  • 40~64歳で、16種類の特定疾病のいずれかにより要介護認定を受けている方

特定疾病とは

介護保険は基本的に65歳以上の高齢者が対象となるものですが、以下に示す特定疾病により、要介護状態または要支援状態と認められた40歳以上65歳未満の患者も介護保険の対象です。

特定疾病は、次のように定義されています。

  • 65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められるなど、罹患率や有病率(類似の指標を含む)等について加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるもの。
  • 3〜6ヶ月以上継続して要介護状態または要支援状態となる割合が高いと考えられる疾患。

参照:特定疾病の選定基準の考え方/厚生労働省

【特定疾病に該当するもの】

  • がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

参照:特定疾病の選定基準の考え方/厚生労働省
参照:介護保険法施行令/e-Gov法令検索

居宅療養管理指導費の算定要件と単位数

居宅療養管理指導では主に以下の条件を実施することが求められています。

  • 医師から居宅療養管理指導の指示を受ける
  • 薬学的管理指導計画に基づいて定期的に患者宅へ訪問、必要な薬学的管理・指導を行う
  • 医師やケアマネージャーに対して訪問の結果を文書で報告

算定の単位数は単一建物居住者数によって異なります。また、薬局薬剤師か病院薬剤師かによっても算定単位や月の実施回数も変わってきますので確認が必要です。

単一建物居住者数 オンライン服薬指導 算定上限回数
1人 2〜9人 10人以上
薬局薬剤師 518単位 379単位 342単位 46単位 4回/月
病院薬剤師 566単位 417単位 380単位 なし 2回/ 月

※訪問の頻度は、通常6日以上の間隔をあけること。
 ただし、以下の患者に関しては週2回かつ8回まで算定可能。

  • 末期の悪性腫瘍患者
  • 中心静脈栄養法の患者
  • 注射による麻薬の投与を受けている患者

参照:居宅療養管理指導/厚生労働省
参照:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和6年厚生労働省告示第86号)令和6年3月15日/厚生労働省

単一建物居住者とは

「単一建物診療患者数」とは「同じ建物に住んでいる人のうち、当該薬局が居宅療養管理指導を実施している患者の人数」のことです。建物ごとに何人居宅療養管理指導を行っているかによって算定できる単位が変わります。

居宅療養管理指導の算定要件についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

2024年度介護報酬改定のポイント

2024年の介護報酬改定では、以下のような変更が行われました。

① 居宅療養管理指導費が1単位引き上げ
単一建物居住者数にかかわらず、全ての基本報酬が1単位引き上げとなりました。

② 2つの加算が新設
居宅療養管理指導に係る加算項目として、「医療用麻薬持続注射療法加算」と「在宅中心静脈栄養法加算」が新設されました。
このような加算項目の追加により、在宅医療におけるさまざまなニーズに薬局が応えていくことがより一層期待されます。
各種加算についての詳細は後ほど説明します。

③オンライン服薬指導に関するルールが緩和
オンライン服薬指導による居宅療養管理費算定のルールが緩和され、以下のような場合も算定が可能です。

  • 初回からオンライン服薬指導を行った場合。
  • 訪問診療で交付された処方箋以外に関してオンライン服薬指導を行った場合。

また、オンライン服薬指導の単位数も以下の通り変更がありました。

改定前 改定後
45単位/回(月1回まで) 46単位/回(月4回まで)

居宅療養管理指導費の加算項目

居宅療養管理指導にかかる加算項目は以下の通りです。

加算項目 算定要件
医療用麻薬持続注射療法加算
(2024年新設)
在宅で医療用麻薬の持続注射療法を受けている患者が対象
麻薬の投薬状況や保管・取り扱いについての指導、副作用
等の確認
250単位/回
在宅中心静脈栄養加算
(2024年新設)
在宅で中心静脈栄養法を行っている患者が対象
患者の状態、輸液製剤の投与や保管方法、
配合変化の防止に関する指導
150単位/回
特別地域加算 厚生労働大臣が定める地域に所属する事業所の薬剤師が
居宅療養管理指導を行った場合に算定
所定単位数の15%
中山間地域等における
小規模事業所加算
厚生労働大臣が定める地域に所在
1月あたりの延べ訪問回数が50回以下
所定単位数の10%
中山間地域等に居住する
ものへのサービス提供加算
厚生労働大臣が定める地域に居住する利用者に対し、
通常の事業の実施地域を超えて実施
所定単位数の5%

参照: 社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)資料5 居宅療養管理指導/厚生労働省
参照:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準 平成12年2月10日 厚生省告示第19号/厚生労働省
参照:厚生労働大臣が定める施設基準 4の3ハ 厚生労働省告示第96号 平成27年3月23日/厚生労働省
参照:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準 平成12年2月10日 厚生省告示第19号/厚生労働省

居宅療養管理指導費算定の流れ

ここからは、実際に居宅療養管理指導を算定するまでの流れを確認していきます。
開始するにあたり、保険薬局については介護保険法における居宅サービス事業者の指定があったものとみなされる(みなし指定)ため、特に必要な手続きはありません。

しかし、居宅療養管理指導を行うためには、重要事項説明書や契約書、個人情報保護に関する確認書などの書類を用意する必要がありますので、実施の依頼が来たらすぐに始められるようにあらかじめ用意しておきましょう。

参照:介護保険法 e-Gov法令検索

1) 居宅療養管理指導の依頼を受ける

居宅療養管理指導を開始する際は、医師やケアマネージャーもしくは訪問看護師から依頼を受けるという場合があります。

薬剤師が要介護認定を受けている患者に対し居宅療養管理指導の必要性を認める場合も処方医に対して開始の提案をすることが可能です。

居宅療養の開始時は医師、ケアマネージャーといった患者に関わる様々な職種の方と連携をとりながら開始をすることになります。

2) 介護認定を受けているかどうか確認する

開始前に必ず介護認定の有無を確認しましょう。
認定を受けていない場合は居宅療養管理指導の実施はできないため注意が必要です。

ただし、介護認定がない場合でも医療保険を利用した在宅患者訪問薬剤管理指導を利用することは可能です。

3) 薬学的管理指導計画を策定する

居宅療養管理指導開始に伴い、薬局では薬学的管理指導計画を作成します。これは、患者の状態や服用薬等の情報に基づき、今後どのような薬学的管理を実施していくのか、どのくらいの頻度で訪問予定なのか等の情報を記載したものです。

また、ケアマネージャーがケアプランと呼ばれる、患者が自立した生活を送れるようになることを目標とした介護サービスの計画書を作成していますので、ケアプラン全体の中で、薬局がどういった役割を果たしていくべきなのかを検討すると良いでしょう。

4) 患者宅を訪問し、薬学的管理指導を行う

患者宅を訪問し、事前に立てた薬学的管理指導計画をもとに必要な服薬指導や支援を行います。また、患者の服薬状況、薬剤保管状況、残薬の確認も重要です。

訪問時に患者の生活を観察することで、健康管理に関わるあらゆる情報を得ることができるので、注意深く確認し、必要な情報があれば他職種に報告をしましょう。

5) 訪問結果を医師・ケアマネージャーに文書にて報告する

訪問後は処方医やケアマネージャーに対して、文書で訪問結果についての情報提供を行います。

決まった様式はありませんので、店舗で採用している報告書に則って作成すれば問題ありません。一般的には以下のような内容を記載します。

  • 薬局の情報
  • 患者基本情報
  • 訪問回数
  • 服薬管理者
  • 管理方法
  • 調剤方式
  • 併用薬
  • 特記事項
  • 次回訪問予定日

必要に応じて訪問看護師等の医療関係職種にも情報提供を行いましょう。

居宅療養管理指導における薬剤師の業務内容

居宅療養管理指導では、地域医療の一員として薬剤師の専門性を活かした活躍が期待されています。

患者の容態にあわせた服薬管理・指導

患者宅を訪問した際に、主に確認や指導が必要なのは以下のような項目です。
薬に関する一般的な確認項目だけではなく、介護が必要な患者には、個々の患者にあわせたサポートが必要なことも意識していくと良いでしょう。

  • 服薬状況の確認
  • 体調変化、副作用の有無
  • OTCやサプリメント、食物との相互作用
  • 薬の保管方法や服用方法
  • お薬カレンダーの使用など、飲み忘れ・飲み間違いのフォロー
  • 服薬補助ゼリー等の服薬支援
  • 必要に応じた剤形や用法用量、処方薬の変更に関して医師に提案

また、終末期医療を実施されている方は、以下のような支援も必要です。

  • 麻薬の管理、副作用の有無
  • 鎮痛薬の服用頻度の確認
  • 無菌調製・輸液の管理
  • 栄養管理の支援

他職種への情報共有や連携

在宅医療は、医師やケアマネージャー、訪問看護師、ヘルパーなどさまざまな職種の方と一緒に取り組みます。その中で薬剤師は専門性を活かして関わっていくことが期待されています。

患者宅への訪問を通じて薬剤師の視点から気づいたことを他職種へ共有することで、患者の治療をより安全に進めることができるでしょう。積極的に情報共有や連携を取り合っていくことがとても大切です。

在宅医療におけるオンライン服薬指導

新型コロナウイルスの流行を境に、オンライン服薬指導の利用状況に大きく変化があったと言えます。2024年度の介護報酬改定においても、オンライン服薬指導のルールが緩和され、より算定しやすくなりました。

オンライン服薬指導は、通院が難しい患者に対しても実施が可能で、感染リスクの軽減といった点でのメリットもあるため、今後在宅医療において、オンライン服薬指導をより活用していくことが期待されるでしょう。

在宅患者訪問薬剤管理指導料との違い

居宅療養管理指導の他に「在宅患者訪問薬剤管理指導」という形で在宅医療を行う場合もあります。どちらも患者宅を訪問し、必要な薬学的管理・指導を行うものであり、薬剤師がするべきことに大きな差はありません。

最大の違いは、居宅療養管理指導は「介護保険」を、在宅患者訪問薬剤管理指導は「医療保険」を利用したサービスであるという点です。

そのため、要介護の認定を受けている人は基本的には優先して居宅療養管理指導を受けることになります。在宅患者訪問薬剤管理指導は介護サービスを利用したものではないため、ケアマネージャーが関わっていない場合がある点も違いと言えるでしょう。

居宅療養管理指導費の算定可否を迷う事例

さまざまなケースにおいて、居宅療養管理指導費が算定できるのか、迷うことがあるでしょう。ここでいくつかの例をご紹介します。

処方箋1枚で複数回訪問を行う場合

1枚の処方箋を複数回に分けて訪問することは可能です。処方薬の服用期間中であれば、1回に限らず訪問ごとに算定ができます。

同居する同一世帯に対象患者が2人以上いる場合

夫婦で2人とも居宅療養管理指導を受ける時は、このような場合に該当します。

単一建物居住者が2人となりますが、このケースは特殊な例となり、「単一建物居住者が1人の場合」を2人分として算定します。

そのため、薬局薬剤師が同居する夫婦2人に対して居宅療養管理指導を行う場合は、518単位×2を算定します。

患者自身が独歩で通院可能な場合

居宅療養管理指導の対象となるのは、「家族・介助者等の助けを借りず、独歩での通院が困難な場合」であるため、自身で通院が可能な場合は居宅療養管理指導費は算定できません。

参照:2021年度介護報酬改定における改定事項について/厚生労働省

自薬局で調剤していない薬の指導を行った場合

居宅療養管理指導費は「当該保険薬局で調剤した薬剤」を服用している患者さんについて、その服用期間中に対して算定するものとされているため、他薬局や院内調剤された薬剤については算定ができません。

居宅療養管理指導に関する疑義解釈

居宅療養管理指導における医師又は歯科医師の指示は、どのような方法で行えばよいか。
指示を行うにあたっては、当該居宅療養管理指導に係る指示を行う医師又は歯科医師と同じ居宅療養管理指導事業所に勤務する者に指示する場合や緊急等やむを得ない場合を除き、診療状況を示す文書、処方箋等(メール、FAX等でも可)(以下「文書等」という。)に、「要訪問」「訪問指導を行うこと」等、指示を行った旨がわかる内容及び指示期間(6月以内に限る。)を記載すること。ただし、指示期間については、1か月以内(薬剤師への指示の場合は処方日数(当該処方のうち最も長いもの)又は1か月のうち長い方の期間以内)の指示を行う場合は記載不要であり、緊急等やむを得ない場合は後日指示期間を文書等により示すこと。
なお、医師又は歯科医師の指示がない場合は算定できないことに留意すること。

出典:「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)(令和3年4月9日)」の送付について/厚生労働省老健局老人保健課、高齢者支援課、認知症施策・地域介護推進課

地域医療の一員として高齢化社会を支えていきましょう

居宅療養管理指導では、患者の適切な服薬管理をサポートし、医師やケアマネージャーなどの他職種と連携をしながら患者の生活の質を向上させることが求められています。

今後ますます加速していく高齢化社会を支えていくために、地域医療のチームの中で薬剤師の専門性を発揮していきましょう。

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薬剤師コラム編集部

「m3.com」薬剤師コラム編集部です。
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