【2024年度】地域支援体制加算の算定要件や改定内容をわかりやすく解説!

地域医療を支える存在として薬局や薬剤師への期待が高まる中、2024年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算に関して多くの変更がありました。算定要件が多岐にわたるため、自薬局がどの条件を満たして算定をおこなっているのか、把握が難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、地域支援体制加算の概要や点数、実績要件、施設基準を解説するとともに、2024年度改定の具体的な内容についても詳しくご紹介します。
地域支援体制加算とは
地域支援体制加算とは、地域の医療を支える薬局の取り組みを評価するものであり、調剤基本料の加算項目です。薬局のかかりつけ機能や、医療機関・高齢者施設との連携、在宅医療といった地域医療への貢献が期待されています。
2015年に厚生労働省より発表された「患者のための薬局ビジョン」では、「2025年までに、全ての薬局がかかりつけ機能を持ち、薬剤師の業務を対物から対人中心にシフトしていくこと」が目標として掲げられており、このビジョンを実現していくためにも、地域医療への取り組みを充実させていくことが重要です。
地域支援体制加算の2024年度改定における変更点3つ
2024年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算に関して多くの変更がありました。
①「点数」の変更
地域支援体制加算は1〜4の4区分がありますが、全ての区分で7点減点となりました。
②「実績要件」の項目追加・必要な実績数の変更
実績要件に関しては、以下の通り項目の追加や、基準が変更となりました。
- 小児特定加算が新設
- 調剤基本料1を算定している薬局に対して、実績要件が緩和。
→地域支援体制加算を算定しやすくなった。
※調剤基本料1以外を算定する薬局に対しては、おおむね今まで通りの要件。
③「施設基準」の変更・追加
施設基準には以下の体制要件が新設されました。
- 緊急避妊薬
- 一般用医薬品や用指導医薬品等の販売
- 薬局敷地内禁煙、タバコ販売禁止
また、それぞれの変更点を踏まえた算定要件については後ほど詳しく解説します。
地域支援体制加算の点数
2024年度診療報酬改定において全ての区分で7点減点となり、それぞれの算定点数は以下の通り定められました。
2022年 2024年 | |
地域支援体制加算1 | 39点 → 32点 |
地域支援体制加算2 | 47点 → 40点 |
地域支援体制加算3 | 17点 → 10点 |
地域支援体制加算4 | 39点 → 32点 |
※特別調剤基本料Aを算定している薬局では、所定点数を100分の10にし、小数点以下第一位を四捨五入した点数を算定する。
※特別調剤基本料Bを算定している薬局は算定できない。
地域支援体制加算の算定要件
地域支援体制加算の算定要件は、実績要件と施設基準(体制要件)を満たすことです。
実績要件は区分ごとに異なりますが、施設基準は全ての区分に共通のものであり、それぞれ多くの項目が含まれますので確認していきましょう。
地域支援体制加算の実績要件
地域支援体制加算を算定するためには、以下の①〜⑩の実績要件のうち、必要な項目を満たす必要があり、区分ごとにそれぞれ条件は異なります。
2024年度診療報酬改定で、調剤基本料1を算定する薬局は実績要件が緩和されましたが、それ以外の薬局は従来の要件からほとんど変更はありません。
地域支援 体制加算 1 |
地域支援 体制加算 2 |
地域支援 体制加算 3 |
地域支援 体制加算 4 |
|
調剤基本料1 | 調剤基本料1・ 特別調剤基本料B以外 |
|||
①夜間・休日等の加算の実績 | 40回以上 | 400回以上 | ||
②麻薬の調剤実績 | 1回以上 | 10回以上 | ||
③重複投薬・相互作用等防止加算等の実績 | 20回以上 | 40回以上 | ||
④かかりつけ薬剤師指導料等の実績 | 20回以上 | 40回以上 | ||
⑤外来服薬支援料1の実績 | 1回以上 | 12回以上 | ||
⑥服用薬剤調整支援料の実績 | 1回以上 | 1回以上 | ||
⑦単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績 | 24回以上 | 24回以上 | ||
⑧服薬情報等提供料に相当する実績 | 30回以上 | 60回以上 | ||
⑨小児特定加算の算定実績(2024年新設) | 1回以上 | 1回以上 | ||
⑩薬剤師認定制度認証機構が認証している 研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が 地域の多職種と連携する会議への出席 |
1回以上 | 5回以上 | ||
算定基準 | 3項目以上 ④は必須 |
8項目以上 | 3項目以上 ④⑦は必須 |
8項目以上 |
※①〜⑨は当該保険薬局における直近1年間の処方箋受付回数1万回当たりの実績
※⑩は、当該保険薬局当たりの直近1年間の実績
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 保医発0305第6号 令和6年3月5日/厚生労働省
それぞれの区分の実績要件は以下の通りです。
地域支援体制加算1
点数:32点
調剤基本料1を算定している薬局が、「かかりつけ薬剤師指導料等の実績」を含む3つ以上の実績要件を満たすことで算定可。
地域支援体制加算2
算定点数:40点
調剤基本料1を算定している薬局が、8つ以上の実績要件を満たすことで算定可。
地域支援体制加算3
点数:10点
調剤基本料1以外を算定している薬局が、「かかりつけ薬剤師指導料等の実績」「単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績」を含む3つ以上の実績要件を満たすことで算定可。
地域支援体制加算4
算定点数:32点
調剤基本料1以外を算定する薬局が、8つ以上の実績要件を満たすことで算定可。
地域支援体制加算の実績項目の詳細
先ほど示した地域支援体制加算の実績要件について、いくつかの項目について詳しくみていきましょう。
④ かかりつけ薬剤師指導料等の実績
かかりつけ薬剤師包括管理料を算定する場合、以下の項目との併算定はできませんが、地域支援体制加算に必要な実績回数としてカウントすることは可能です。
ただし、算定回数に含める場合は、薬歴等に当該業務を実施した記録を残す必要があります。
- 麻薬管理指導加算
- 重複投薬・相互作用防止等加算
- 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
- 外来服薬支援料
- 服用薬剤調整支援料
- 服薬情報等提供料
⑦ 単一建物診療患者が一人の在宅薬剤管理の実績
以下の項目を算定した場合に実績としてカウントをすることが可能です。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急時等共同指導料
- 居宅療養管理指導費
- 介護予防居宅療養管理指導費
※オンライン服薬指導の場合は回数に含めることはできません。
※在宅協力薬局として連携した場合や、同等の業務を行った場合は回数として含めることができます。
⑩ 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険
薬剤師が地域の多職種と連携する会議への出席
「地域の多職種と連携する会議」とは、以下のような会議が該当し、直近1年間の出席回数を実績とします。
- 市町村または地域包括支援センターが主催する地域ケア会議 ※1
- 介護支援専門員が主催するサービス担当者会議 ※2
- 地域の多職種が参加する退院時カンファレンス
※1介護保険法第115条の48で規定されているもの
※2指定居宅会議支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生労働省令第38号)第13条第9号で規定されているもの
非常勤の薬剤師が参加した場合もカウントすることができます。ただし、複数の薬局に所属する薬剤師の場合、実績として含められるのは1ヶ所の薬局のみです。
参照:介護保険法/e-Gov法令検検索
参照:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準/e-Gov法令検索
地域支援体制加算の施設基準
地域支援体制加算の施設基準は全区分共通で求められているものであり、以下の通り11項目に分かれています。
(1)地域医療に貢献する体制を有することを示す実績(①〜⑩の実績要件) |
(2)地域における医薬品等の供給拠点としての対応 ア 十分な数の医薬品の備蓄、周知(医療用医薬品1200品目) イ 薬局間連携による医薬品の融通等 ウ 医療材料及び衛生材料を供給できる体制 エ 麻薬小売業者の免許 オ 集中率85%超の薬局は、後発品の調剤割合70%以上 カ 取扱う医薬品に係る情報提供体制 |
(3)休日、夜間を含む薬局における調剤・相談応需体制 ア 一定時間以上の開局 イ 休日、夜間の開局時間外の調剤・在宅業務に対応できる体制 ウ 当該薬局を利用する患者からの相談応需体制 エ 夜間・休日の調剤、在宅対応体制(地域の輪番体制含む)の周知 |
(4)在宅医療を行うための関係者との連携体制等の対応 ア 診療所又は病院及び訪問看護ステーションと円滑な連携 イ 保健医療・福祉サービス担当者との連携体制 ウ 在宅薬剤管理の実績 24回以上 エ 在宅に係る研修の実施 |
(5)医療安全に関する取組の実施 ア プレアボイド事例の把握・収集 イ 医療安全に資する取組実績の報告 ウ 副作用報告に係る手順書を作成 |
(6)かかりつけ薬剤師の届出 |
(7)管理薬剤師要件 |
(8)患者ごとに服薬指導の実施、薬剤服用歴の作成 |
(9)研修計画の作成、学会発表などの推奨 |
(10)患者のプライバシーに配慮、椅子に座った状態での服薬指導 |
(11)地域医療に関連する取組の実施 ア 一般用医薬品及び要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売 イ 健康相談、生活習慣に係る相談の実施 ウ 緊急避妊薬の取扱いを含む女性の健康に係る対応 エ 当該保険薬局の敷地内における禁煙の取扱い オ たばこの販売禁止(併設する医薬品店舗販売業の店舗を含む) |
※以下2024年改定における新設・変更
(2)オ:2022年改定時「後発品の調剤割合」は50%→2024年より70%へ
(11)ア、ウ、エ、オ:新設
※(4)ウ:薬局あたりの年間の回数
ここからいくつかの項目について詳しく解説していきます。
(2) 地域における医薬品等の供給拠点としての体制
薬局間が連携して医薬品の融通を行うことで、地域全体で医薬品の安定供給を目指します。
地域医療への貢献として、地域の薬局に対して在庫状況を共有し、医薬品の融通をする薬局が地域支援体制加算において評価されます。
(3) 休日、夜間を含む薬局における調剤・相談応需体制
【ア 一定時間以上の開局について】
地域支援体制加算の施設基準を満たす薬局の開局時間は以下のように定められています。
「平日は1日8時間以上、土曜日または日曜日のいずれかの曜日には一定時間以上開局し、かつ週 45 時間以上開局していること」
土曜日または日曜日の「一定時間」について、具体的な開局時間は定められていませんが、地域医療機関や患者の需要にあわせて対応できるように設定することが求められています。
【エ 夜間・休日の調剤、在宅対応体制(地域の輪番体制含む)の周知】
以下のような施設に対して、休日・夜間等の開局時間外に調剤や在宅業務に対応できる旨を周知する必要があります。
- 地域の行政機関
- 医療機関
- 訪問看護ステーション
- 福祉関係者
参照:疑義解釈資料の送付について(その2)令和6年4月12日/厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その3)令和6年4月26日/厚生労働省
(9) 研修計画の作成、学会発表などの推奨
研修とは、以下のようなものが該当します。
- 地域の薬剤師会による研修
- 研修認定薬剤師制度の対象学会やセミナー
研修時間や講師等の規定は特にありませんが、研修に使用した資料は必要に応じて参照できるよう保存・管理することが求められています。
(10) 患者のプライバシーに配慮、椅子に座った状態での服薬指導
薬局では患者のプライバシーに配慮することがとても重要です。治療や薬に関することなど他の患者にやりとりが聞かれたくない方もいるため、カウンターをパーテーションで区切る、待合室とカウンターの距離を十分に取るなどといった工夫が必要です。
(11) 地域医療に関する取り組みの実施
2024年度の診療報酬改定における、新設項目の詳細は以下の通りです。
【ア 一般用医薬品及び要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売】
48薬効群の医薬品全てを常備する必要があります。ドラッグストア併設の場合は、ドラッグストアで備蓄し、必要に応じて調剤薬局の薬剤師が対応するような形でも問題ありません。
【ウ 緊急避妊薬の取り扱いを含む女性の健康に係る対応】
届出の際の調剤実績は不要です。オンライン診療で調剤する可能性もあるため、緊急避妊薬の調剤に関する研修を受講することが望ましいとされています。
【オ たばこの販売禁止(併設する医薬品店舗販売業の店舗を含む)】
健康増進法、たばこ事業法で定義された以下のものの販売が禁止とされています。
- 葉たばこが含まれる「製造たばこ(喫煙用・かみ用・かぎ用)」
- 製造たばこ以外のもので、喫煙用に販売されているもの
参照:健康増進法/e-Gov法令検索
参照:たばこ事業法/e-Gov法令検索
また、地域医療への貢献のため、上記に含まれない喫煙器具においても適切に対応するように求められています。
参照: 疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日/厚生労働省
地域支援体制加算の届出
地域支援体制加算の施設基準に係る届出書添付書類の 「様式87の3 」と「様式87の3の2 」を届け出る必要があります。
前年5月1日から当年4月末までの実績をもとに、当年6月の最初の開庁日までに届出ることで、当年6月1日から算定が可能です。
地域支援体制加算に関する疑義解釈
- 地域支援体制加算、連携強化加算及び在宅薬学総合体制加算の施設基準において求められる薬局の機能等に係る情報の周知について、行政機関や薬剤師会等を通じた公表の手続を行っているが、これらの加算の届出時点では当該薬局の情報が公表されていない場合であっても届出を行うことは可能か。
- 届出要件を満たすために、保険薬局が所在する地域の行政機関や薬剤師会等に対して当該薬局が公表のための必要な手続きを行っており、情報が公表されることが担保されている場合には、届出時点で当該薬局の情報が公表されていなくても差し支えない。この場合、地域支援体制加算の届出にあたっては、上記内容が確認できる資料(例:公表のための手続を行ったメールの写し等)を添付すること。
また、届出後においては、必要な情報が速やかに公表されていることを確認しておくこと。
なお、「疑義解釈資料の送付について(その3)」(令和6年4月 26 日事務連絡)の別添5の問3のとおり、当該薬剤師会が会員のみを対象として当該情報を収集、整理し、公表している場合は、施設基準を満たさないことに留意すること。
出典:疑義解釈資料の送付について(その6)令和6年5月30日/厚生労働省
地域医療を支える一員として役割を果たしていきましょう
2024年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算に関して点数の引き下げや実績要件・施設基準の変更が行われました。
かかりつけ薬剤師制度や在宅医療が浸透してきている中、今後も薬局・薬剤師が地域医療において果たす役割はますます大きくなっていくでしょう。算定要件を正しく理解し、地域の健康を支える一員として貢献していきましょう。