【2024年度版】服薬管理指導料の算定要件とは?わかりやすく解説

薬局薬剤師であれば毎日当たり前のように行っている服薬指導や薬歴の記載。それらの業務は服薬管理指導料の算定対象ですが、どのような基準で評価をされているか正しく理解できていますでしょうか? 2024年度の診療報酬改定でも服薬管理指導料を通じて対人業務がより一層評価をされる見直しがされています。この記事では、服薬管理指導料の変更点や点数・算定要件、加算項目などについて詳しく解説します。
服薬管理指導料とは
服薬管理指導料とは、処方箋受付ごとに算定可能な薬剤情報提供・服薬指導を評価する項目です。対人業務を評価する薬学管理料の一つであり、服薬指導を通じて薬の効果・用法用量といった基本的な指導から、副作用や残薬の有無、アレルギー歴や併用薬の確認など、継続して安全に服薬を行ってもらえるように管理することが求められています。
服薬管理指導料には、麻薬管理指導加算や乳幼児服薬指導加算など、服薬指導に関わる 様々な加算項目もあります。
服薬管理指導料の点数
服薬管理指導料は4区分あり、処方箋受付1回につきそれぞれ1回算定可能です。
区分 | 主な算定要件 | 点数 |
服薬管理指導料1 | 3ヶ月以内の再調剤(手帳あり) | 45点 |
服薬管理指導料2 | 1の患者以外 | 59点 |
服薬管理指導料3 | 介護老人福祉施設等入所者(月4回まで) | 45点 |
服薬管理指導料4 | オンライン服薬指導 | 45点/59点 |
服薬指導の特例 | 手帳の活用実績なし/かかりつけ薬剤師連携 | 13点/59点 |
※いずれも特定調剤基本料Bを算定する薬局は算定できません。
服薬管理指導料の区分と算定要件
服薬管理指導料を算定するためには、患者の薬剤服用歴等を確認した上で、必要な薬学薬的管理と指導を行う必要があります。指導内容の詳細については後ほど詳しく説明します。
まずは、区分ごとの対象患者についてみていきましょう。
服薬管理指導料1・2は外来患者に対して算定
服薬管理指導料1・2はどちらも基本的に外来患者に対して算定をします。
【服用薬剤管理指導料1の対象患者:45点】
以下の2つを満たす患者に対して服薬管理指導を行なった場合に算定可能です。
- 3ヶ月以内に再度処方箋を持参
- 手帳を提示した患者
【服用薬剤管理指導料2の対象患者:59点】
基本的には外来患者のうち、1の要件を満たさない患者は2を算定します。
- 初めて処方箋を受け付ける患者
- 前回来局から3ヶ月を超えてから処方箋を受け付ける患者
- 前回来局日にかかわらず手帳の持参がない患者
服薬管理指導料3は介護老人福祉施設等の入居者に対して算定
服薬管理指導料3は、介護老人福祉施設等に入所している患者に対して、施設職員と連携し、必要な指導を行った場合に1回45点、月4回まで算定可能です。
- 地域密着型介護老人福祉施設/介護老人福祉施設に入所している患者
- 介護医療院/介護老人保健施設に入所している患者
- 短期入所生活介護/介護予防短期入所生活介護を受けている患者(ショートステイ)
※上記の患者にオンライン服薬指導を実施した場合も、服薬管理指導料4ではなく服薬管理指導料 3を算定する。
※介護医療院/介護老人保健施設に入所している患者対しては、以下のような、「専門的な薬学的管理を必要とする薬剤」が処方となっている場合のみ算定が可能。
- 抗悪性腫瘍剤
- HIF-PH阻害剤
- 疼痛コントロールのための医療用麻薬
- 抗ウイルス剤
- B型肝炎またはC型肝炎の効能もしくは効果を有するもの
- 後天性免疫不全症候群またはHIV感染症の効能もしくは効果を有するもの
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】/厚生労働省
参照:高齢者の医療の確保に関する法律の規定による療養の給付等の取り扱および担当に関する基準/厚生労働省
服薬管理指導料4はオンライン指導実施時に算定
服薬管理指導料4はオンライン服薬指導を行った場合に算定でき、さらにイとロの2区分がありますが、算定基準は服薬管理指導料1・2と同じです。
【服薬管理指導料4のイ:45点】
- 3ヶ月以内に再度処方箋を持参
- 手帳を提示した患者
【服薬管理指導料4のロ:59点】
- 初めて処方箋を受け付ける患者
- 前回来局から3ヶ月を超えてから処方箋を受け付ける患者
- 前回来局日にかかわらず手帳の持参がない患者
オンライン服薬指導の実施にあたっては、医薬品医療機器等法施行規則(昭和36年厚生省令第1号) 及びオンライン服薬指導の実施要領について 厚生労働省 令和4年9月30日 を確認しながら実施を行うこととされています。
服薬管理指導料の特例は2種類
服薬管理指導料の特例が算定可能な場合は2通りあり、それぞれ以下の通り算定することができます。
【手帳の活用実績が少ない保険薬局:13点】
適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局で服薬指導管理を行った場合に算定できます。
手帳の活用実績が少ない保険薬局とは、3月以内に再度処方箋を持参した患者への服薬管理指導料の算定回数うち、手帳を持参した患者への服薬管理指導料の算定回数の割合が50%以下である保険薬局のことを言います。
【かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合:59点】
かかりつけ薬剤師がやむを得ない事情により業務を行えない場合に、かかりつけ薬剤師と連携する他の保険薬剤師が、かかりつけ薬剤師と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握した上で服薬管理指導を行った場合に算定できます。
参照:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 保医発0304第1号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 令和4年3月4日/厚生労働省
参照:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 令和6年3月5日/厚生労働省
算定に必要な「服薬管理指導」とは
ここからは服薬管理指導料を算定する際に実施しなければならない一連の流れに関して解説していきます。
「服薬管理指導」というのは、主に3つのポイントが重要であり、それは1) 処方内容の確認と説明、2) 薬学的判断に基づいた必要な指導、3) 服薬中のフォローアップです。
1)処方内容の確認と基本的な説明
薬剤服用歴等に基づいて処方内容に対して、重複投薬、相互作用、薬物アレルギー等の問題がないか確認します。
その後薬剤情報提供文書や必要に応じて医薬品リスク管理計画(RMP)を用いて患者に説明を行います。
【基本的な説明内容】
- 薬剤の名称
- 用法用量、効能効果
- 副作用や相互作用
- 服用及び保管や取り扱い上の注意点
- 後発医薬品に関する情報
- 保険薬局の名称、連絡先や薬剤師の氏名
- 必要に応じてRMPの情報
2)薬学的判断に基づいた必要な指導
薬歴や患者、家族からの情報を総合的に判断し、適切な薬学的な管理を行うことが重要です。具体的には以下のことの指導・確認を心がけましょう。
- 服用状況、残薬の確認
- 副作用の有無
- 体質、アレルギー歴
- 疾患に関する情報
- 併用薬との飲み合わせ
- 服用中の体調の変化
必要に応じて、残薬調整やポリファーマシーの解消、医療機関や他保険薬局との連携を積極的に行うことも求められます。
3)服薬中のフォローアップ
薬剤の交付後も、服薬状況や体調の変化等について、継続的な確認を行い、必要に応じて指導等を実施することが大切です。
定期的な確認が必要な場合は電話等でフォローアップすることも推奨されています。
「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(日本薬剤師会) 」を参考にすると良いでしょう。
服薬中フォローアップについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
服薬管理指導料算定における留意点
ここでは、服薬管理指導料を算定するにあたって覚えておくべき注意点を確認していきます。
手帳持参の有無に関して
服薬管理指導料は、「手帳持参の有無」によって算定可能な点数が変わる場合があります。
薬局に手帳を持ってくることで自己負担額が安くなることとあわせて、手帳の役割や重要性を患者に伝えていくことも大切です。
服薬管理指導料を算定する上で、手帳の持参がない患者に対して適切な対応をとることや、行った指導の内容を薬歴へ記録することも必要となるので覚えておきましょう。
【手帳の適切使用への取り組み例】
- 手帳の活用意義を説明する。
-
忘れた場合は、次回の持参を促すとともに、今回分のシールを渡し、自宅での貼付を指導。
また、次回貼ってあることも確認する。 - 複数の手帳を持っている患者には理由を確認し、なるべくまとめるように指導する。
服薬管理指導料と同時算定できない項目
服薬管理指導料と同時算定できない項目は以下の通りです。
- 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
- かかりつけ薬剤師包括管理料
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料
→薬学的管理指導計画書に係る疾病とは別の疾病または傷病に係る臨時処方の場合は算定可能
2024年度診療報酬改定のポイント
2024年度の診療報酬改定では、服薬管理指導料に関わる3つの変更がありました。
服薬管理指導料3の算定対象患者・回数の見直し
今までは、特定養護老人ホームに入所している患者が算定対象でしたが、新たに介護医療院または介護老人保健施設に入所している患者や、ショートステイを利用する患者に対しても、要件を満たすことで服薬管理指導料3が算定できるようになりました。
また、算定回数については「月4回まで」と上限回数が設けられました。
服薬管理指導料の特例の算定範囲拡大
服薬管理指導料の特例に関して、2022年の改定時はかかりつけ薬剤師の代わりに服薬指導ができる薬剤師は、要件を満たす薬剤師1名までとされていました。しかし、2024年度の改定で、条件を満たす「複数人」の薬剤師が対応可能となりました。
調剤後薬剤管理指導加算が独立した算定項目に変更
調剤後薬剤管理指導加算は、今までは服薬管理指導料の加算項目の一つでしたが、2024年度改定で調剤後薬剤管理指導料と名称が変更になり、独立した算定項目となりました。
調剤後薬剤管理指導料は、糖尿病や慢性心不全の患者さんに対しての服薬中フォローを行い、その結果を医師に文書によって情報提供した場合月1回60点を算定できるものです。
服薬管理指導料にかかる加算
服薬管理指導料には多くの加算があり、項目ごとに特定の服薬指導をした際に算定できます。それぞれの算定点数は以下の通りです。
加算項目 | 点数 |
麻薬管理指導加算 | 22点 |
特定薬剤管理指導加算1 | 新たに処方10点 / 指導の必要5点 |
特定薬剤管理指導加算2 | 100点 |
特定薬剤管理指導加算3 | 5点 |
乳幼児服薬指導加算 | 12点 |
小児特定加算 | 350点 |
吸入薬指導加算 | 30点 |
ここでは、加算項目ついてお伝えします。
麻薬管理指導加算
麻薬管理指導加算は医療用麻薬を服用中の患者に対し、以下の要件を満たすことで、22点算定することができます。
- 個々の患者の状況にあわせた服薬指導
- 効果や体調変更の有無についての確認
- 麻薬の服用や保管状況、副作用の有無等を電話などで確認
また、緩和ケアについては以下のガイドラインを参考にすることとされています。
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン (日本緩和医療学会)
新版 がん緩和ケアガイドブック (日本医師会監修 厚生労働科学特別研究事業「適切な緩和ケア提供のための緩和ケアガイドブックの改訂に関する研究」班」)
特定薬剤管理指導加算1・2・3
特定薬剤管理指導加算は1〜3があり、どの項目もリスクが高い薬や、丁寧な説明が必要な薬が処方されている患者に対しての薬学的管理の評価という点では共通していますが、それぞれ算定要件が異なります。
区分 | 対象患者 | 対象薬剤 | 点数 |
特定薬剤管理指導 加算1 |
ハイリスク薬が処方された患者 | ハイリスク薬 | 新たに処方10点 指導の必要5点 |
特定薬剤管理指導 加算2 |
抗悪性腫瘍剤を注射された 悪性腫瘍患者 |
内服の抗悪性腫瘍剤や その他支持療法の薬 |
100点 |
特定薬剤管理指導 加算3 |
イ 処方内容に対してRMPを用いた 指導を受けた患者/新たに発出された イエローレター・ブルーレターに 関して指導を受けた患者 ロ 選定療養の説明や流通不安定のため 変更の必要性がある旨の説明を受け た患者 |
イ 患者向けRMPが ある薬剤 ロ 選定療養の対象と なる先発医薬品/ 流通不安定の薬剤 |
5点 |
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乳幼児服薬指導加算
乳幼児服薬指導加算は、6歳未満の乳幼児の処方が対象です。調剤の際に必要な情報を確認・指導した上で、指導内容を手帳に記載することで12点算定が可能です。
小児特定加算
小児特定加算は、医療的ケア児に対し、患者の状態にあわせた必要な薬学的管理及び指導を行った場合に350点を加算できます。
医療的ケア児とは、NICU等の長期入院後、人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、自宅でのたんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な児童を指します。
参照:医療的ケア児について/厚生労働省
参照:児童福祉法/eGov法令検索
吸入薬指導加算
吸入薬指導加算は、喘息または慢性閉塞性肺疾患の患者に対し、吸入薬が処方となった際にその手技に関する指導を行い、結果を処方医に情報提供した場合に算定できる加算です。3カ月に1回30点が算定可能です。
参照:調剤報酬点数表/厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項/厚生労働省
服薬管理指導に関する疑義解釈
- 電子版のお薬手帳について、「お薬手帳(電子版)の運用上の留意事項について」(平成27年11月27日付け薬生総発1127第4号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知。以下「留意事項通知」という。)に代えて、新たに「電子版お薬手帳ガイドラインについて」(令和5年3月31日薬生総発0331第1号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知。以下「ガイドライン通知」という。)が示されたが、服薬管理指導料における電子版の手帳の扱いについて、どのように考えればよいか。
- 電子版の手帳については、ガイドライン通知の別添の「2.運営事業者等が留意すべき事項」を満たしていれば、紙媒体の手帳と同様の取扱いとする。その際、保険薬局においては、同別添の「3.提供薬局等が留意すべき事項」を満たす必要がある。なお、ガイドライン通知において、「「実装すべき機能」については、本通知の発出から1年を目処として実装」とされているため、令和6年3月末までは従前のとおり、留意事項通知の「第三運営事業者等が留意すべき事項」を満たした手帳であれば、紙媒体の手帳と同様の取扱いとするが、引き続き、保険薬局においては、同通知の「第二提供薬局等が留意すべき事項」を満たす必要がある。
出典:疑義解釈資料の送付について(その46) 令和5年3月31日/厚生労働省
日々の対人業務を丁寧に、患者に寄り添った医療を目指していきましょう
2024年度の診療報酬改定では、服薬管理指導料をはじめとする対人業務の評価がより明確化されました。服薬指導や薬歴管理など、薬剤師が日々取り組んでいる業務に対する期待が改めて示されています。ご自身の服薬指導を含めた対人業務をふりかえり、患者に寄り添った質の高い支援が提供できるよう意識していきましょう。