【2024年度改定版】特定薬剤管理指導加算1とは?算定要件をわかりやすく解説

薬局で毎日目にするといっても過言ではない、ハイリスク薬の処方。安全かつ適正にハイリスク薬の服薬指導をするうえで、薬剤師は重要な役割を担います。
ただ、「服薬指導の時に何を確認したら良いのかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ハイリスク薬指導の注意点や、2024年度の調剤報酬改定のポイントを解説します
特定薬剤管理指導加算1とは
特定薬剤管理指導加算1は、対人業務を評価する薬学管理料のうち、服薬管理指導料及びかかりつけ薬剤師指導料にかかる項目です。ハイリスク薬と呼ばれる薬に関して、通常の服薬指導に加え、疾患の治療状況に応じた服薬管理の徹底や副作用発生時の対応方法などの個別に必要とされる指導をおこなうことで算定が可能です。
ハイリスク薬とは
ハイリスク薬とは、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」において、以下の3つの分類によって定義されています。
Ⅰ. 厚生労働科学研究「『医薬品の安全使用のための業務手順書』作成マニュアル(平成19 年3月)」において「ハイリスク薬」とされているもの
Ⅱ. 投与時に特に注意が必要と考えられる治療領域の薬剤
Ⅲ. 投与時に特に注意が必要と考えられる性質を持つ薬剤
参照:薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン
ただし、ここに含まれるすべての薬が特定薬剤管理指導加算1の対象になるわけではなく、算定対象として定められたもののみです。対象薬については後ほど詳しく解説していきます。
特定薬剤管理指導加算1の算定要件
特定薬剤管理指導加算1の算定要件は、以下のように定められており、必要な施設基準はありません。
特定薬剤管理指導加算1は、服薬管理指導料を算定するに当たって行った薬剤の管理及び指導等に加えて、特に安全管理が必要な医薬品が処方された患者又はその家族等に当該薬剤が特に安全管理が必要な医薬品である旨を伝え、当該薬剤についてこれまでの指導内容等も踏まえ適切な指導を行った場合に算定する。
出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 令和6年3月5日/
算定対象薬剤
特定薬剤管理指導加算1はハイリスク薬が算定対象ですが、先ほども述べた通り、そのすべてではありません。以下の厚生労働省が定める「特に安全管理が必要な医薬品」であり、厚生労働省のホームページからも一覧を確認することも可能です。
【特に安全管理が必要な医薬品】
- 抗悪性腫瘍剤
- 免疫抑制剤
- 不整脈用剤
- 抗てんかん剤
- 血液凝固阻止剤(内服薬)
- ジギタリス製剤
- テオフィリン製剤
- カリウム製剤(注射薬に限る。)
- 精神神経用剤
- 糖尿病用剤
- 膵臓ホルモン剤
- 抗HIV薬
参照:特定薬剤管理指導加算等の算定対象となる薬剤一覧/診療報酬情報提供サービス
算定対象患者と点数
特定薬剤管理指導加算1の算定対象となるのは、ハイリスク薬が処方となっており、以下の条件を満たす患者です。新規処方か継続処方かによって2区分に分かれており、どちらかに当てはまる場合は処方箋受付1回につき1回のみ算定可能です。
イ:ハイリスク薬が新たに処方された患者へ必要な指導を行った場合 10点
ロ:次のいずれかに基づき、保険薬剤師が必要と認めて指導を行った場合 5点
・ハイリスク薬に係る用法又は用量の変更
・ハイリスク薬に係る副作用の発現状況、服薬状況等の変化
出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 令和6年3月5日/
※イについて、自薬局での調剤が初めてでも他薬局からの継続の場合は算定不可。
※イとロは併算定不可。1枚の処方箋に複数のハイリスク薬が処方となり、イとロどちらの条件も満たす場合でもどちらか一方のみ算定を行う。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 令和6年3月28日/厚生労働省
特定薬剤管理指導加算1の算定要件に関するよくある質問について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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特定薬剤管理指導加算1算定時の留意事項
ここでは、特定薬剤管理指導加算1の算定をする際に注意するべきことを確認していきます。
対象となる疾患の確認が必須
ハイリスク薬が処方となった場合は、必ず何の疾患に対しての処方なのかを確認しましょう。特に適応となる疾患が複数ある薬には注意が必要です。厚生労働省が定める「特に安全管理が必要な医薬品」に定められている薬効分類かどうかを確認した上で、特定薬剤管理指導加算1を算定するようにしましょう。
例えばフォシーガの場合、糖尿病の治療目的で処方になっている場合は算定できますが、慢性心不全、慢性腎臓病に対しての場合は算定できません。
【適応症が複数ある医薬品の例】
薬品名 | 算定対象疾患 | 算定非対象疾患 |
フォシーガ | 糖尿病 | 慢性心不全、慢性腎臓病 |
ベンザリン | てんかん | 不眠症、麻酔前投薬 |
サインバルタ | うつ病 | 糖尿病性神経障害、慢性疼痛 |
対象疾患に注意が必要なハイリスク薬についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
確認・指導した内容を薬歴に記載する
特定薬剤管理指導加算1の算定において、対象となる医薬品に関して適切な確認・指導を行った場合は、その内容について薬歴に適切に記載することが重要です。
特に、継続処方において適切な指導を行った「ロ」を算定した場合は、指導が必要と判断した理由もあわせて薬歴に記載するようにしましょう。
2024年度改定時の特定薬剤管理指導加算1に関する変更内容
2024年の診療報酬改定では、特定薬剤管理指導加算1に関しても以下の通り算定要件に変更がありました。
【2022年】
特に安全管理が必要な医薬品が複数処方されている場合には、その全てについて必要な薬学的管理及び指導を行うこと。
出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日 医発0304第1号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
【2024年】
特に安全管理が必要な医薬品が複数処方されている場合には、保険薬剤師が必要と認める薬学的管理及び指導を行うこと。
出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 令和6年3月5日/
つまり、従来は複数のハイリスク薬が処方となっている場合は、全ての薬について必要な薬学的管理・指導が必要でしたが、今回の改定において、「薬剤師が必要と認める薬に関して」実施をすればよいことになりました。
ハイリスク薬の薬学的指導のポイント
ここでは、実際にハイリスク薬が処方となった場合にどのようなポイントを意識して指導を行えば良いのか解説をしていきます。全ての薬に共通して確認すべき事項と、薬の種類ごとに確認するべきポイントがありますので、それぞれ確認していきましょう。
服薬指導で確認すべき共通の5項目
薬学的管理・指導において、全ての薬に共通して確認するべきことは以下の5項目です。
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(飲み忘れ時の対応を含む)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
出典:薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)/日本薬剤師会
ハイリスク薬の種類ごとの確認事項
先ほどの共通の確認事項に追加して、ハイリスク薬では種類ごとに、特に確認・指導すべきことがあります。ここでは血液凝固阻止剤を例に見ていきましょう。
【血液凝固阻止剤に関する確認・指導内容】
- 検査・手術前・抜歯時の服薬休止、服薬再開の確認等、服薬管理の徹底
- 出血傾向の確認(あざ、歯茎からの出血等)、過料投与の可能性の検討
- 納豆等、食事との相互作用の有無
- 日常生活(閉経前の女性に対する生理中の生活指導等)での注意点の指導
他の種類のハイリスク薬も同様に、日本薬剤師会のガイドラインで確認をすることができますので、服薬指導にいかしていきましょう。
参照:薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」(第2版)について/日本薬剤師会
参照:「ハイリスク薬の薬学的管理指導において特に注意すべき事項/日本薬剤師会
特定薬剤管理指導加算2・3との違い
特定薬剤管理指導加算には、1の他に2・3があります。どちらの項目もリスクが高い薬や、丁寧な説明が必要な薬が処方されている患者に対しての薬学的管理の評価という点では、特定薬剤管理指導加算1と共通していると言えます。しかし、それぞれ算定要件が異なりますので、以下で違いを確認していきましょう。
【特定薬剤管理指導加算2・3の主な算定要件】
特定薬剤管理指導加算2 | 特定薬剤管理指導加算3 | |
対象患者 | 抗悪性腫瘍剤を注射された 悪性腫瘍患者 |
イ 処方内容に対してRMPを用いた 指導を受けた患者/新たに発出された イエローレター・ブルーレターに関 して指導を受けた患者 ロ 選定療養の説明や流通不安定のため 変更の必要性がある旨の説明を受け た患者 |
対象薬剤 | 内服の抗悪性腫瘍剤やその他 指示療法の薬 |
イ 患者向けRMPがある薬剤 ロ 選定療養の対象となる先発医薬品/流 通不安定の薬剤 |
算定点数 | 100点 | 5点 |
算定頻度 | 月に1回まで | 当該医薬品に関して最初に 処方された1回 |
医師への情報提供 | あり | なし |
特定薬剤管理指導加算1 との併算定 |
条件を満たせば可能 | 条件を満たせば可能 |
特定薬剤管理指導加算1の算定処方例
ここからは特定薬剤管理指導加算1をどのような処方で算定できるのか、算定点数の区分ごとに具体例をみていきましょう。
処方例:特定薬剤管理指導加算1のイ
患者情報:50歳、男性
2型糖尿病の診断を受け、今回から服用開始。
メトホルミン錠250mg 2錠 分2 朝・夕食後
【ポイント】