【2024年度改定版】かかりつけ薬剤師包括管理料の算定要件をわかりやすく解説!

2024年(令和6年)6月1日に診療報酬改定が施行されました。かかりつけ薬剤師包括管理料とかかりつけ薬剤師指導料との違いがわかりにくいと感じている薬剤師さんもいるかと思いますので、この記事では『かかりつけ薬剤師包括管理料』の改定内容について詳しく解説していきます。
算定要件や施設基準についても紹介していますので、かかりつけ薬剤師包括管理料の算定が自店舗でも可能かどうか判断してみてください。
かかりつけ薬剤師とは
かかりつけ薬剤師とは、患者さんが指名した特定の薬剤師のことを指し、その患者さんの処方薬や市販薬の情報を継続的に管理しながら服薬指導を行い、日常の健康相談に24時間応じる役割を担っています。
かかりつけ薬剤師制度は、患者さん個人の薬の情報や健康状態をしっかりと管理・把握することができるので、患者さんが安心して生活を送るためのサポートができるということが最大の特徴です。
かかりつけ薬剤師包括管理料とは
かかりつけ薬剤師包括管理料とは、地域包括診療科/加算もしくは認知症地域包括診療科/加算を算定している患者に対して、医師と連携して服薬状況を一元的かつ継続的に把握した上で、服薬指導などを行った場合に算定できます。
算定には厚生局への届出が必要となりますので、地方厚生局の「様式90 かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準に係る届出書添付書類」 に必要事項を記載・添付の上、提出してください。
かかりつけ薬剤師指導料との違い
かかりつけ薬剤師包括管理料とかかりつけ薬剤師指導料は、「医師と連携して服薬状況を一元的かつ継続的に把握した上で、服薬指導などを行った場合に算定できる指導料」という点が同じということもあり、わかりにくいと感じている薬剤師さんもいるかと思います。そこで、この2つの違いについてわかりやすく解説していきます。
対象患者が異なる
かかりつけ薬剤師包括管理料とかかりつけ薬剤師指導料の大きな違いは対象患者です。
かかりつけ薬剤師指導料では対象患者が限定されていませんが、かかりつけ薬剤師包括管理料の対象者は、医療機関で「地域包括診療加算または認知症地域包括診療加算」または「地域包括診療料または認知症地域包括診療料」を算定していることが要件となります。
では、地域包括診療科/加算・認知症地域包括診療科/加算とはどのようなものなのでしょうか?
地域包括診療科/加算とは
地域包括診療科/加算とは、医科の診療報酬にて定められている項目であり、高血圧症・糖尿病・脂質異常症・慢性心不全・慢性腎臓病(透析を行っていないものに限る)または認知症のうち、2つ以上(疑いは除く)の疾患がある患者さんが対象となります。
項目 | 点数 |
地域包括診療科1 | 1660点 |
地域包括診療科2 | 1600点 |
地域包括診療加算1 | 28点 |
地域包括診療加算2 | 21点 |
認知症地域包括診療科/加算とは
認知症地域包括診療科/加算とは、認知症の患者に対して療養上必要な指導及び診療を行った場合に算定が可能な医科診療報酬項目です。認知症以外の疾患の有無や内服薬の種類数なども算定要件に含まれており、施設基準を満たす医療機関にて算定が可能となっています。
項目 | 点数 |
認知症地域包括診療科1 | 1681点 |
認知症地域包括診療科2 | 1613点 |
認知症地域包括加算1 | 38点 |
認知症地域包括加算2 | 31点 |
算定できる点数が異なる
かかりつけ薬剤師指導料の算定点数は76点・かかりつけ薬剤師包括管理料の算定点数は291点となり、どちらも処方せん受付1回につき算定することができます。この2つは併算定できないので注意してください。
かかりつけ薬剤師指導料について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
かかりつけ薬剤師包括管理料の算定要件
かかりつけ薬剤師包括管理料を算定するための要件や患者さんに対して実施すべきことなどを確認していきましょう。
算定点数
かかりつけ薬剤師包括管理料の点数は291点なので、3割負担の患者さんの場合は870円となります。
算定対象患者
かかりつけ薬剤師包括管理料は、以下の対象となる患者さんに対して医師と連携して服薬状況を一元的・継続的に把握し、服薬指導を行った場合に算定することができます。
- 地域包括診療加算または認知症地域包括診療加算
- 地域包括診療料または認知症地域包括診療料
算定する上で患者に対して実施するべきこと
かかりつけ薬剤師として患者さんに安心して薬を使用していただけるよう、以下の内容を実施してください。
- 使用している薬の情報を一元的・継続的に把握する
- お薬の飲み合わせの確認や説明などはかかりつけ薬剤師が担当する
- お薬手帳に調剤した薬の情報を記入する
- 処方医や地域の医療に関わる他の医療者(看護師等)との連携を図る
- 開局時間内/時間外を問わず、問い合わせに応じる
- 血液検査などの結果を提供いただいた場合それを参考に薬学的な確認を行う
- 調剤後も必要に応じて連絡を行う
- 飲み残したお薬や余っているお薬の整理を手伝う
- 在宅での療養が必要となった場合でも継続して伺う
かかりつけ薬剤師包括管理料算定についての説明・同意の取り方
かかりつけ薬剤師包括管理料を算定するには患者さんの同意が必要となるため、先程解説した「算定する上で患者に対して実施するべきこと」の業務内容の他に、以下の説明をしっかりと行いましょう。
- かかりつけ薬剤師を持つことの意義、役割等
- かかりつけ薬剤師指導料の費用
- かかりつけ薬剤師が必要と判断した理由
かかりつけ薬剤師包括管理料は患者さんにとって決して安くない金額ですので、納得して同意してもらえるように丁寧な説明を心がけてください。
また、患者さんの同意書については地方厚生省の「別紙様式2 」を参考にしてみてください。
かかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準
かかりつけ薬剤師包括管理料を算定するには、以下の施設基準を満たしている必要があります。
- 保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験がある
- 当該薬局で週32時間以上勤務している。ただし、育児・介護休業法の規定により労働時間が短縮された場合は、週 24時間以上かつ週4日以上であればOK
- 施設基準の届出時点で、届出を出す薬局に継続して1年以上在籍している
- 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得している
- 届出時までの過去1年間に医療に係る地域活動の取組に主体的に参加していること
以上の施設基準・保険薬剤師を配置している薬局は、厚生労働省の「様式90(かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準に係る届出書添付書類) 」を記載し、届出を行なってください。
かかりつけ薬剤師としてできること
かかりつけ薬剤師包括管理料の算定対象となる、複数の慢性疾患を抱える患者さんと認知症患者さんに対して、かかりつけ薬剤師として薬学的観点から適切な助言や対応を行うことが大切です。
複数の慢性疾患を抱える患者さんの場合、複数の薬を使用しているケースが多く、飲み合わせが悪い・相互作用による健康被害を起こすケースも少なくありません。そのため、服用している薬の情報を把握・管理して、場合によっては医師に薬を減らしてもらったり、薬を変えてもらったりする提案を行うなどの対応が必要となります。
認知症の患者さんへのサポートとしては、認知症スクリーニングによりハイリスクとされた患者さんを地域包括支援センターに紹介したり、認知症ケアサポートチームの一員として、薬物療法による治療の提案や、使用している薬の内容の確認・中止・減量・変更の提案などのサポートを行いましょう。
2024年度改定におけるかかりつけ薬剤師包括管理料の変更内容
2024年度の診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師包括管理料は大きく2つの点が変更となりました。どのような変更があったのか確認していきましょう。
24時間対応体制の要件の見直し
以前の担当患者さんに対するかかりつけ薬剤師は、『24時間相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝えるとともに、勤務表を作成して患者に渡すこと。かかりつけ薬剤師以外が相談等に対応する場合があるときは、その旨を患者にあらかじめ説明するとともに、当該保険薬剤師の連絡先を患者に伝えることにより、当該薬局の別の保険薬剤師が対応しても差し支えない。』とされていました。
しかし、これでは特定の薬剤師に業務負担が集中する可能性があるため、『かかりつけ薬剤師の勤務日等の必要な情報を伝えること。患者から休日、夜間を含む時間帯の相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝えること。かかりつけ薬剤師以外が対応した場合においては、かかりつけ薬剤師指導料は算定できない。また、やむを得ない事由により、患者からの電話等による問い合わせに応じることができなかった場合は、速やかに折り返して連絡することができる体制がとられていること。』と、やむを得ない場合には薬局単位で対応が可能になりました。
非かかりつけ薬剤師による対応で特例算定が可能に
以前は、かかりつけ薬剤師が対応できない場合に限り、他の薬剤師1名までが対応可能でしたが、今回の改定ではこの条件が削除され、かかりつけ薬剤師以外が対応した場合でも患者さんの同意のもと『服薬管理指導料(59点)』を算定できるようになりました。
かかりつけ薬剤師包括管理料と併算定ができない項目
かかりつけ薬剤師包括管理料と以下の項目は併算定できないので注意してください。
併算定できない |
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かかりつけ薬剤師包括管理料に関する疑義解釈
厚生労働省による、かかりつけ薬剤師包括管理料に関する疑義解釈を紹介します。
- 服薬管理指導料の特例(手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局が算定する服薬管理指導料)の対象薬局について、かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料又は服薬管理指導料の特例(かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合)は算定可能か。
- 不可。
- かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料(以下「かかりつけ薬剤師指導料等」という。)について、かかりつけ薬剤師が情報通信機器を用いた服薬指導を行う場合は算定可能か。
- それぞれの算定要件を満たせば算定可。
引用元:疑義解釈資料の送付について(その1)/厚生労働省保健局医療課
かかりつけ薬剤師として安心できる医療の提供を
2024年度に改正された、かかりつけ薬剤師包括管理料に関する内容を詳しく解説いたしました。
かかりつけ薬剤師になることで、患者さんの服薬状況を一元的かつ継続的に把握し、患者さんに寄り添ったサポートを調剤時以外でも行うことができますが、今回の改正では薬剤師の働き方の見直しとして、24時間体制の要件が見直されました。
かかりつけ薬剤師包括管理料の対象である患者さんや、その家族の薬に対する不安を取り除けるように丁寧な対応を心がけてみてください。