【2024年度改定版】自家製剤加算の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

2024年(令和6年)の診療報酬改定で、自家製剤加算の算定要件や点数が変更となりました。今回は、改定に伴い自家製剤加算の詳細と改定ポイントについて詳しく解説していきます。間違えやすい計量混合調剤加算との違いについても説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
自家製剤加算とは
自家製剤加算とは、医師の指示のもと、薬価基準に収載されている医薬品の剤形では対応できない場合に、内服薬・屯服薬・外用薬を、調剤上の特殊な技術工夫を行ったうえで調剤した場合に算定できる加算です。
調剤上の特殊な技術工夫とは、安定剤・溶解補助剤・懸濁剤などの添加剤の使用や、ろ過・加温・滅菌などが該当します。具体的な自家製剤については以下の通りです。
自家製剤の具体的な方法
- 錠剤を粉砕して粉薬にする
- 主薬を溶解して点眼剤を無菌に製する
- 主薬に基材を加えて坐剤にする
ここで注意しておきたいのが、2022年度(令和4年)の診療報酬改定により、錠剤の割線で分割した場合は、所定点数の100分の20相当の点数算定に変更となっています。
さらに、以前同様「分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定不可」という要件に変更はないので、錠剤を分割して自家製剤加算を算定する際には注意してください。
自家製剤加算の算定要件
自家製剤加算の算定点数と、算定要件となる算定対象となる調製業務例を確認していきましょう。
内服薬 | 頓服薬 | 外用薬 |
◯錠剤、丸剤、カプセル剤 、 散剤、顆粒剤、エキス剤 =20点(7日分) ※錠剤割線分割は100 分の20を算定(4点) ◯液剤 =45点(1調剤) |
◯錠剤、丸剤、カプセル剤 、 散剤、顆粒剤、エキス剤 =90点(1調剤) ※錠剤割線分割は100 分の20を算定(18点) ◯液剤 =45点(1調剤) |
◯錠剤、トローチ剤、軟・硬膏 剤 、パップ剤、リニメント剤、 坐剤 =90点(1調剤) ※錠剤割線分割は100分 の20を算定(18点) ◯点眼剤、点鼻・点耳剤、 浣腸剤 =75点(1調剤) ◯液剤 =45点(1調剤) |
参考:診療報酬の算定方法の一部を改正する件 別表第三 調剤報酬点数表/厚生労働省
算定対象となる調製業務例
自家製剤加算の対象となる調剤業務例は、冒頭でも紹介したように「錠剤を粉砕して粉薬にする」「主薬を溶解して点眼剤を無菌に製する」「主薬に基材を加えて坐剤にする」などが該当します。既製剤を小分けにするだけの場合は該当しないので注意してください。
自家製剤を行なった場合は、錠剤・カプセル・顆粒などの固形製剤に添加される添加剤(賦形剤)の名称や分量等を含め、製材工程を調剤録に記載することも算定要件に含まれています。
自家製剤加算について図解やクイズで理解を深めたい方は以下の記事をご覧ください。
自家製剤加算が算定できないケースと注意点
自家製剤加算が算定できないケースは以下の4点です。
自家製剤加算が算定できないケース
- 同一剤形・規格の医薬品が薬価収載されている場合
- 既製の医薬品を小分けするだけの場合
- 外来服薬支援料2との併算定は不可
- 用時溶解する医薬品を交付時に溶解した場合
ただし、医薬品の供給不足により在庫がないケースでは、不足している医薬品の製剤となるよう、他の医薬品を用いて調製した場合も、自家製剤加算を算定することができます。
自家製剤加算を算定する上で注意しておきたいことは、同一剤形・規格のジェネリックの存在も忘れずに確認するということです。半錠にしたあとの規格がジェネリックで存在することもあるため注意してください。
自家製剤加算の算定可否例についてさらに知りたい方は以下の記事をご覧ください。
計量混合調剤加算との違い
計量混合調剤加算とは、薬価基準に収載されている2種類以上の医薬品(液剤・散剤・顆粒剤・軟膏剤・硬膏剤)を計量・混合して、内服薬や屯服薬を調剤した場合や、軟膏剤・硬膏剤等として外用薬を調剤した場合に、投薬量・投薬日数に関係なく、1調剤ごとに算定できる加算です。
自家製剤加算と混同しやすいので、軽量混合調剤加算についての詳しい内容から2つの加算の違いを確認していきましょう。
計量混合調剤加算の算定要件
計量混合調剤加算を算定するための要件は以下のとおりです。
- 薬価基準に収載されている2種類以上の医薬品(液剤・散剤・顆粒剤・軟膏剤・硬膏剤)を計量・混合して、内服薬や屯服薬を調剤した場合や、軟膏剤・硬膏剤等として外用薬を調剤した場合
- ドライシロップ剤を液剤と混合した場合
- 処方された医薬品が微量のため、乳幼児に対してそのままでは調剤又は服用が困難である場合において、医師の了解を得た上で賦形剤・矯味矯臭剤等を混合し、乳幼児が正確に、又は容易に服用できるようにした場合
(ただし、調剤した医薬品と同一剤形及び同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定不可) - 医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合
計量混合調剤加算は、予製剤(あらかじめ想定される調剤のために、複数回分を製剤し、処方せん受付時に投与すること)を処方する場合は点数が異なるので確認しておきましょう。
計量混合調剤加算の予製剤の場合の点数
液剤 | 散剤又は顆粒剤 | 軟・硬膏剤 |
35点 予製剤7点 |
45点 予製剤9点 |
80点 予製剤16 |
自家製剤加算と計量混合調剤加算が同時算定できる場合
自家製剤加算と計量混合調剤加算は原則併算定できませんが、「剤」が異なる場合は、自家製剤加算と一緒に算定することができます。
例えば、レセプト1でA錠を分2で14日分(散剤への剤形変更の指示あり)と、レセプト2のB液10ml+C液10ml+D液10mlを分3で14日分が処方されていた場合は、別剤になるので自家製剤加算と計量混合調剤加算を併算定することが可能です。
2024年度調剤報酬改定における自家製剤加算のポイント
2024年度の改定で、自家製剤加算の評価が見直されたポイントを確認していきましょう。
自家製剤加算と嚥下困難者用製剤加算が一本化
今回の改定では、薬剤調製行為の評価を整理する観点から、嚥下困難者用製剤加算は廃止され、飲みやすくするための製剤上の調製を行った場合、自家製剤加算での評価に一本化されました。
薬剤入手困難等の理由での自家製剤加算の算定が可能に
自家製剤加算では「調剤後の医薬品と同一剤形および同一規格の医薬品が存在する場合」は算定不可となっていまが、今回の改定により、供給上の問題により入手困難で調剤を行う際に必要な数量が確保できない場合、自家製剤加算の算定が可能となりました。
この場合、調剤報酬明細書の摘要欄に調剤に必要な数量が確保できなかった薬剤名とともに、確保できなかったやむを得ない事情を記載してください。
自家製剤加算の処方例
ここからは、自家製剤加算の算定が可能な具体例をみていきましょう。
自家製剤加算の算定例で特に代表的な半錠と粉砕について、算定時の注意点とともにご紹介します。
処方例1:半錠
ワーファリン錠5mg 0.5錠 1日1回朝食後 30日分
【ポイント】
半錠による自家製剤加算算定の可否は、「半錠をした後の規格が薬価収載されているか」で決まります。