【2024年度改定版】薬剤調製料の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

2022年度の調剤報酬改定で新設された薬剤調製料。薬局における基本業務を評価する項目として、毎回調剤時に算定されますが、どのように点数が計算されているか、正しく理解できているでしょうか。2024年度の診療報酬改定においても薬剤調製料に関して多くの変更が加えられました。
本記事では、薬剤調製料に関する算定要件や、調剤管理料との違い、診療報酬改定におけるポイントについて詳しく解説していきます。
薬剤調製料とは
薬剤調製料は対物業務の評価項目であり、2022年に新設された調剤技術料です。
厚生労働省が2015年に発表した「患者のための薬局ビジョン」では、薬剤師の業務が対物から対人へとシフトしていくことが求められています。この方針に基づき、対物業務と対人業務の評価を明確に分ける見直しの一環として、薬剤調製料が導入されました。
以前は「薬剤の調製や取り揃え」「最終監査」といった対物業務の一部は調剤料で評価されていましたが、2022年以降は薬剤調製料の対象となりました。
調剤管理料は「対人業務」の評価項目
薬剤調製料は調剤技術料の項目であり、薬の調製や監査といった「対物業務」を評価するものです。薬の種類ごとに算定点数は異なりますが、ここで混同しやすいのは、同様に処方薬の種類で点数を算定する調剤管理料です。
調剤管理料は薬学管理料の一つであり、対人業務を評価します。実際に処方箋を受け付けてから患者が服薬するまでの一連の流れは以下のように「薬剤調製料(対物)」「調剤管理料(対人)」「服薬管理指導料(対人)」の3つの項目で明確に区分がされて評価されています。
調剤業務の流れ | 算定項目 |
〜処方箋受付〜 ① 患者情報等の分析・評価 (お薬手帳、後発医薬品の希望の有無、 薬剤服用歴等に基づく薬学的分析・評価) ② 処方内容の薬学的分析 (疑義照会を含む) ③ 調剤設計 |
調剤管理料 |
④ 薬剤の調製、取り揃え ⑤ 最終監査 |
薬剤調製料 |
⑥ 服薬指導、薬剤の交付 | 服薬管理指導料 |
⑦ 調剤録・薬剤服用歴への記載 | 調剤管理料・服薬管理指導料 |
薬剤調製料と調剤管理料の違いについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:
メトトレキサートの薬剤調整料と調剤管理料
2024年度診療報酬改定における薬剤調製料の変更点
2024年度の調剤報酬改定では、薬剤調製料に係る加算項目見直されました。
① 在宅患者調剤加算:廃止
2022年度診療報酬改定においては薬剤調製料の加算でしたが、同様の業務が「調剤基本料」の在宅薬学総合体制加算1、2で評価されるようになりました。
② 無菌製剤処理加算:算定要件の追加
算定要件に「麻薬の注射薬を無菌的に充填し製剤する場合」が追加になりました。
③ 自家製剤加算:算定基準が緩和
「薬価収載品が供給不足により調剤に必要な数量が確保できなかった場合」にも算定可能となり、近年の医薬品の供給不足に配慮した改定となっています。
④ 嚥下困難者用製剤加算:廃止
薬剤調製に関する評価が整理する目的で廃止となりました。
薬剤調製料の算定要件・点数
薬剤調製料は薬の種類ごとに算定可能な点数が以下の通り異なります。
薬の種類 | 算定要件 | 点数 |
内服薬 | 1剤につき、3剤分まで | 24点 |
屯服薬 | 処方箋受付1回につき | 21点 |
浸煎薬 | 1調剤につき、3調剤分まで | 190点 |
湯薬 | 1調剤につき、3調剤分まで |
7日分以下190点 8-27日分190点 +10点/1日分(8日目以上の部分) 28日分以上400点 |
注射薬 | 処方箋受付1回につき | 26点 |
外用薬 | 1調剤につき、3調剤分まで | 10点 |
内服用滴剤 | 1調剤につき | 10点 |
それぞれの算定要件について個別に詳しくみていきましょう。
内服薬
内服薬は1剤につき24点算定が可能で、処方箋受付1回につき3剤まで算定が可能です。
1剤とは、服用時点が同じ薬のことであり、数え方の詳細は後ほど説明します。
内服薬の数え方について、注意が必要なポイントをお示しします。
内服薬の数え方で注意が必要なポイント
-
内服薬には内服用滴剤や浸煎薬、湯薬は含まれない
→浸煎薬または湯薬を同時に調剤した場合には、浸煎薬または湯薬の調剤数を内服薬の剤数に含める。 -
ドライシロップは液剤もしくは散剤どちらで投与するかで分類が決まる
→液剤(シロップ剤)として投与するときは内服用液剤として算定。
散剤としてそのまま投与するときは内服用固形剤として算定
服用時点が同じものは全て1剤としてカウントしますが、以下の場合は別剤として算定できます。
別剤としてカウントする場合
- 配合不適等調剤技術上の必要性から個別に調剤した場合
- 内服用固形剤(錠剤、カプセル剤、散剤等)と内服用液剤の場合
- 内服錠とチュアブル錠または舌下錠等のように服用方法が異なる場合
薬剤調製料の算定方法に関して、クイズ形式で知識を確認したい方は以下の記事をご覧ください。
屯服薬
屯服薬は、調剤した剤数や回数に関わらず、処方箋受付1回につき21点を算定します。
浸煎薬
浸煎薬とは、生薬を浸煎し、液剤として調整したもののことです。
浸煎薬は日数に関わらず、1調剤につき190点を、処方箋受付1回につき3調剤まで算定可能です。
内服薬または湯薬を同時に調剤した場合には、内服薬については剤数を、湯薬については調剤数を浸煎薬の調剤数に含めることになります。
湯薬
湯薬とは、薬局で2種以上の生薬(粗切、中切または細切したもの)を混合調剤し、煎じる量ごとに分包したもののことです。
湯薬は1調剤につき投薬日数に応じて所定の点数を算定します。 処方箋受付1回につき4調剤以上ある場合は、3調剤まで算定可能です。
内服薬または浸煎薬を同時に調剤した場合には、内服薬については剤数を、浸煎薬については調剤数を湯薬の調剤数に含めます。
注射薬
注射薬は、処方箋受付1回につき26点を算定します。注射薬が複数薬処方されていたり、日数が長期であったとしても算定点数は変わりません。
外用薬
外用薬は、1調剤につき10点を処方箋受付1回につき3調剤までを算定可能です。
以下の点には特に注意が必要です。
外用薬の算定での注意点
- トローチについては、外用薬として算定
- 同一有効成分で同一剤形の外用薬が複数ある場合には、その数にかかわらず、1調剤として取り扱う。
内服用滴剤
内服用滴剤とは、1回量が非常に少ない(1滴〜数滴)内服用の液剤のことです。スポイトや滴瓶などで分割使用するものを指します。ピコスルファート内用液やアルファロール内用液などが含まれます。
内服用滴剤は、投与日数に関わらず1調剤につき10点を算定します。
「剤数」と「調剤数」の考え方
ここでは、それぞれの算定要件における「1剤」と「1調剤」の数え方について確認をしていきます。
1剤とは
まずは内服薬の数え方である1剤の考え方についてみていきましょう。
基本的な考え方として「1剤=服用時点が同じもの」としてカウントします。
ただし、カウントする際には、以下のような注意が必要です。
1剤の数え方の注意点
- ※ 2種類以上の薬剤を調剤する場合、それぞれの内服薬を個別の薬包等に調剤しても服用時点が同一であるものについては1剤として算定
- ※ 服用時点が同一である薬剤は投与日数にかかわらず1剤として算定
- ※ 同一有効成分であって同一剤形の薬剤が複数ある場合は、その数にかかわらず1剤として算定する。
- ※ 服用時点は基本的に「食前」、「食後」、「食間」の3区分であり、「食直前」や「食前30分」は「食前」とみなし、1剤として扱う
1調剤とは
次に、浸煎薬・湯薬・外用薬・内服用滴剤の薬剤調整料を算定する際に必要となる「1調剤」の数え方を確認していきます。
【浸煎薬・湯薬・内服用滴剤の場合】
1調剤:服用時点と処方日数が同一である場合
1剤との違いは、服用時点だけではなく、処方日数も同じである必要があるということです。
【外用薬の場合】
外用薬の1調剤とは、基本的に「1薬品1調剤」と考えます。
ただし、2種類以上の薬の混合指示があるものに関しては混合後のものを1調剤としてカウントします。
参照:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 厚生労働省 令和6年3月5日
注意すべき処方例
ここでは、薬剤調製料を算定する際に注意が必要な処方について見ていきましょう。