調剤報酬改定の算定項目をわかりやすく解説

更新日: 2025年3月22日 薬剤師コラム編集部

【2024年度改定版】薬剤調製料の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

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2022年度の調剤報酬改定で新設された薬剤調製料。薬局における基本業務を評価する項目として、毎回調剤時に算定されますが、どのように点数が計算されているか、正しく理解できているでしょうか。2024年度の診療報酬改定においても薬剤調製料に関して多くの変更が加えられました。

本記事では、薬剤調製料に関する算定要件や、調剤管理料との違い、診療報酬改定におけるポイントについて詳しく解説していきます。

薬剤調製料とは

薬剤調製料は対物業務の評価項目であり、2022年に新設された調剤技術料です。

厚生労働省が2015年に発表した「患者のための薬局ビジョン」では、薬剤師の業務が対物から対人へとシフトしていくことが求められています。この方針に基づき、対物業務と対人業務の評価を明確に分ける見直しの一環として、薬剤調製料が導入されました。

以前は「薬剤の調製や取り揃え」「最終監査」といった対物業務の一部は調剤料で評価されていましたが、2022年以降は薬剤調製料の対象となりました。

参照:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)/厚生労働省

調剤管理料は「対人業務」の評価項目

薬剤調製料は調剤技術料の項目であり、薬の調製や監査といった「対物業務」を評価するものです。薬の種類ごとに算定点数は異なりますが、ここで混同しやすいのは、同様に処方薬の種類で点数を算定する調剤管理料です。

調剤管理料は薬学管理料の一つであり、対人業務を評価します。実際に処方箋を受け付けてから患者が服薬するまでの一連の流れは以下のように「薬剤調製料(対物)」「調剤管理料(対人)」「服薬管理指導料(対人)」の3つの項目で明確に区分がされて評価されています。

調剤業務の流れ 算定項目
〜処方箋受付〜
① 患者情報等の分析・評価
 (お薬手帳、後発医薬品の希望の有無、
  薬剤服用歴等に基づく薬学的分析・評価)
② 処方内容の薬学的分析
 (疑義照会を含む)
③ 調剤設計
調剤管理料
④ 薬剤の調製、取り揃え
⑤ 最終監査
薬剤調製料
⑥ 服薬指導、薬剤の交付 服薬管理指導料
⑦ 調剤録・薬剤服用歴への記載 調剤管理料・服薬管理指導料

参照:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)/厚生労働省

薬剤調製料と調剤管理料の違いについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

2024年度診療報酬改定における薬剤調製料の変更点

2024年度の調剤報酬改定では、薬剤調製料に係る加算項目見直されました。

① 在宅患者調剤加算:廃止

2022年度診療報酬改定においては薬剤調製料の加算でしたが、同様の業務が「調剤基本料」の在宅薬学総合体制加算1、2で評価されるようになりました。

② 無菌製剤処理加算:算定要件の追加

算定要件に「麻薬の注射薬を無菌的に充填し製剤する場合」が追加になりました。

③ 自家製剤加算:算定基準が緩和

「薬価収載品が供給不足により調剤に必要な数量が確保できなかった場合」にも算定可能となり、近年の医薬品の供給不足に配慮した改定となっています。

④ 嚥下困難者用製剤加算:廃止

薬剤調製に関する評価が整理する目的で廃止となりました。

参照:令和6年度調剤報酬改定の概要【調剤】/厚生労働省

薬剤調製料の算定要件・点数

薬剤調製料は薬の種類ごとに算定可能な点数が以下の通り異なります。

薬の種類 算定要件 点数
内服薬 1剤につき、3剤分まで 24点
屯服薬 処方箋受付1回につき 21点
浸煎薬 1調剤につき、3調剤分まで 190点
湯薬 1調剤につき、3調剤分まで 7日分以下190点
8-27日分190点
+10点/1日分(8日目以上の部分)
28日分以上400点
注射薬 処方箋受付1回につき 26点
外用薬 1調剤につき、3調剤分まで 10点
内服用滴剤 1調剤につき 10点

参照:調剤報酬点数表/厚生労働省

それぞれの算定要件について個別に詳しくみていきましょう。

内服薬

内服薬は1剤につき24点算定が可能で、処方箋受付1回につき3剤まで算定が可能です。
1剤とは、服用時点が同じ薬のことであり、数え方の詳細は後ほど説明します。

内服薬の数え方について、注意が必要なポイントをお示しします。

内服薬の数え方で注意が必要なポイント

  • 内服薬には内服用滴剤や浸煎薬、湯薬は含まれない
    →浸煎薬または湯薬を同時に調剤した場合には、浸煎薬または湯薬の調剤数を内服薬の剤数に含める

  • ドライシロップは液剤もしくは散剤どちらで投与するかで分類が決まる
    →液剤(シロップ剤)として投与するときは内服用液剤として算定。
     散剤としてそのまま投与するときは内服用固形剤として算定

服用時点が同じものは全て1剤としてカウントしますが、以下の場合は別剤として算定できます。

別剤としてカウントする場合

  • 配合不適等調剤技術上の必要性から個別に調剤した場合
  • 内服用固形剤(錠剤、カプセル剤、散剤等)と内服用液剤の場合
  • 内服錠とチュアブル錠または舌下錠等のように服用方法が異なる場合

薬剤調製料の算定方法に関して、クイズ形式で知識を確認したい方は以下の記事をご覧ください。

屯服薬

屯服薬は、調剤した剤数や回数に関わらず、処方箋受付1回につき21点を算定します。

浸煎薬

浸煎薬とは、生薬を浸煎し、液剤として調整したもののことです。
浸煎薬は日数に関わらず、1調剤につき190点を、処方箋受付1回につき3調剤まで算定可能です。
内服薬または湯薬を同時に調剤した場合には、内服薬については剤数を、湯薬については調剤数を浸煎薬の調剤数に含めることになります。

湯薬

湯薬とは、薬局で2種以上の生薬(粗切、中切または細切したもの)を混合調剤し、煎じる量ごとに分包したもののことです。

湯薬は1調剤につき投薬日数に応じて所定の点数を算定します。 処方箋受付1回につき4調剤以上ある場合は、3調剤まで算定可能です。

内服薬または浸煎薬を同時に調剤した場合には、内服薬については剤数を、浸煎薬については調剤数を湯薬の調剤数に含めます。

注射薬

注射薬は、処方箋受付1回につき26点を算定します。注射薬が複数薬処方されていたり、日数が長期であったとしても算定点数は変わりません。

外用薬

外用薬は、1調剤につき10点を処方箋受付1回につき3調剤までを算定可能です。
以下の点には特に注意が必要です。

外用薬の算定での注意点

  • トローチについては、外用薬として算定
  • 同一有効成分で同一剤形の外用薬が複数ある場合には、その数にかかわらず、1調剤として取り扱う。

内服用滴剤

内服用滴剤とは、1回量が非常に少ない(1滴〜数滴)内服用の液剤のことです。スポイトや滴瓶などで分割使用するものを指します。ピコスルファート内用液やアルファロール内用液などが含まれます。
内服用滴剤は、投与日数に関わらず1調剤につき10点を算定します。

参照:調剤報酬点数表に関する事項/厚生労働省

「剤数」と「調剤数」の考え方

ここでは、それぞれの算定要件における「1剤」と「1調剤」の数え方について確認をしていきます。

1剤とは

まずは内服薬の数え方である1剤の考え方についてみていきましょう。
基本的な考え方として「1剤=服用時点が同じもの」としてカウントします。

ただし、カウントする際には、以下のような注意が必要です。

1剤の数え方の注意点

  1. 2種類以上の薬剤を調剤する場合、それぞれの内服薬を個別の薬包等に調剤しても服用時点が同一であるものについては1剤として算定
  2. 服用時点が同一である薬剤は投与日数にかかわらず1剤として算定
  3. 同一有効成分であって同一剤形の薬剤が複数ある場合は、その数にかかわらず1剤として算定する。
  4. 服用時点は基本的に「食前」、「食後」、「食間」の3区分であり、「食直前」や「食前30分」は「食前」とみなし、1剤として扱う

1調剤とは

次に、浸煎薬・湯薬・外用薬・内服用滴剤の薬剤調整料を算定する際に必要となる「1調剤」の数え方を確認していきます。

【浸煎薬・湯薬・内服用滴剤の場合】

1調剤:服用時点と処方日数が同一である場合

1剤との違いは、服用時点だけではなく、処方日数も同じである必要があるということです。

【外用薬の場合】

外用薬の1調剤とは、基本的に「1薬品1調剤」と考えます。

ただし、2種類以上の薬の混合指示があるものに関しては混合後のものを1調剤としてカウントします。

参照:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 厚生労働省 令和6年3月5日

注意すべき処方例

ここでは、薬剤調製料を算定する際に注意が必要な処方について見ていきましょう。

【処方例①:内服薬1剤とすべきところ、2剤として算定】

A錠10mg 1錠 1日1回 朝食後 14日分

A錠10mg 1錠 1日1回 夕食後 14日分

内服薬の場合は、同一有効成分・同一規格の処方がある場合、1剤として算定することに注意しましょう。

上記の処方は、A錠10mgを1日2回朝・夕食後に服用するため、「内服薬1剤」として算定します。

【処方例②:内服薬を屯服薬として算定】

B錠60mg 3錠 1日3回 毎食後 疼痛時服用

上記の内容は、処方箋のコメントにて「疼痛時服用」という指示が入っていますが、算定する際は「内服薬1剤」になります。

参照:個別指導における主な指摘事項(薬局)/東北厚生局

薬剤調製料の算定に注意が必要な処方例に関してさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

薬剤調製料の加算項目

薬剤調製料の加算項目は以下の6種類です。

薬剤師調整料の加算項目6種類

  • 無菌製剤処理加算
  • 麻薬等加算(麻薬、向精神薬、覚醒剤原料、毒薬加算)
  • 自家製剤加算
  • 計量混合調剤加算
  • 時間外等加算(時間外、休日、深夜)
  • 夜間・休日等加算

それぞれの加算について詳しくみていきましょう。

無菌製剤処理加算

無菌製剤処理加算は、無菌室やクリーンベンチ、安全キャビネットといった無菌環境で、無菌化した器具を使用して無菌製剤処理を行うことで算定できます。

対象となる薬は注射薬のみであり、「中心静脈栄養法輸液」「抗悪性腫瘍剤」「麻薬」の3種類です。

無菌製剤処理加算は、1日分ごとに以下の点数を算定できます。

無菌製剤処理加算の点数

種類 算定要件 6歳以上 6歳未満
中心静脈栄養法輸液 2以上の注射薬を混合 69点 137点
抗悪性腫瘍剤 2以上の注射薬を混合(生理
食塩水等で希釈する場合を含む)
79点 147点
麻薬 麻薬を含む2以上の注射薬を混合(生理
食塩水等で希釈する場合を含む)
または原液を無菌的に充填
69点 137点

麻薬等加算(麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算)

麻薬等加算(麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算)は、1調剤につき以下の点数を算定することができます。

麻薬等加算の点数

種類 点数
麻薬 70点
麻薬以外 8点

上記は、品目数や投薬日数に関係なく算定できますが、薬剤成分の含有量が麻薬等の取り扱いとなる規制含有量に満たない場合は算定できません。

なお、内服薬のほか、屯服薬、注射薬、外用薬についても加算可能です。

自家製剤加算

自家製剤とは、個々の患者の処方に対し、薬価収載されている剤形・規格では対応が難しい場合に、医師の指示に基づき調剤時に特別な対応をした際に算定が可能です。
例として、以下のような内容が、自家製剤の業務に含まれます。

自家製剤加算の主な業務

  • 錠剤を粉砕して散剤とすること
  • 主薬を溶解して点眼剤を無菌に製すること
  • 主薬に基剤を加えて坐剤とすること

調剤した医薬品と同一剤形・同一規格を有する医薬品が薬価収載されている場合は算定できないため注意が必要です。

ただし、2024年度の診療報酬改定において、供給上の問題により当該医薬品が入手困難であり、必要な数量を確保できない場合は自家製剤加算の算定が可能となりました。

自家製剤加算は、1調剤につき以下の点数を算定します。

自家製剤加算の点数

種類 点数
【内服薬】
錠剤、丸剤、カプセル剤、散財、顆粒剤、エキス剤
(予製剤の使用、錠剤を分割した場合は20/100に相当する点数を算定)
液剤
7日分につき
20点

45点
【屯服薬】
錠剤、丸剤、カプセル剤、散財、顆粒剤、エキス剤
液剤

90点
45点
【外用薬】
錠剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤
点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤
液剤

90点
75点
45点

計量混合調剤加算

計量混合調剤とは、2種類以上の医薬品を計量・混合した場合に算定することができます内服薬・屯服薬・外用薬のいずれも算定可能であり、1調剤につきそれぞれ以下の点数を加算します。

計量混合調整加算の点数

種類 点数
液剤 35点
散剤、顆粒剤 45点
軟・硬膏剤 80点

予製剤を使用する場合は20/100を算定します。

時間外等加算

時間外等加算は、時間外・休日・深夜加算の3種類があり、それぞれの対象となる時間帯と加算割合は以下の通りです。
時間帯が被っている場合も重複して算定することはできません。

時間外等加算の点数

算定対象の時間帯 点数
時間外加算 ・6時〜8時、18時〜22時
・休日加算の対象となる休日以外の日を終日休業日とする
薬局の休業日
基礎額の
100%
休日加算 日曜日、国民の祝日、12月29〜31日、1月2〜3日 基礎額の
140%
深夜加算 22時〜翌6時 基礎額の
200%

※基礎額=調剤基本料(加算含む)+薬剤調製料+無菌製剤処理加算+調剤管理料

夜間・休日等加算

夜間・休日等加算は、薬局が以下の時間に開局した場合に処方箋受付1回につき40点算定可能です。

夜間・休日等加算の対象になる時間帯

  • 平日の19時〜翌8時
  • 土曜日の13時〜翌8時

上記の、夜間・休日等加算の対象になる時間帯を、薬局内外に掲示する必要があります。
時間外等加算の要件を満たす場合には、夜間・休日等加算ではなく、時間該当加算を算定します。

参照:調剤報酬点数表に関する事項/厚生労働省

薬剤調製料に関する疑義解釈

内服薬と外用薬の調剤料の取扱いについて、同一の有効成分であって同一剤形の薬剤が複数ある場合は、その数にかかわらず1剤(1調剤)とされているが、「同一剤形」の範囲はどのように考えたらよいか。

下記の剤形については、それぞれ別剤形として取り扱う。

○内用薬 錠剤、口腔内崩壊錠、分散錠、粒状錠、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、経口ゼリー剤、チュアブル、バッカル、舌下錠

○外用薬 軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、液剤、スプレー剤、ゼリー、パウダー剤、ゲル剤、吸入粉末剤、吸入液剤、吸入エアゾール剤、点眼剤、眼軟膏、点鼻剤、点耳剤、耳鼻科用吸入剤・噴霧剤、パップ剤、貼付剤、テープ剤、硬膏剤、坐剤、膣剤、注腸剤、口嗽剤、トローチ剤 (参考:「薬価算定の基準について」(平成28年2月10日保発0210第1号)の別表

1) なお、本取扱いは、内服薬と外用薬に係る調剤料における考え方であり、例えば、調剤時の後発医薬品への変更に関する剤形の範囲の取扱いとは異なることに留意すること。

出典:疑義解釈資料の送付について(その2)平成28年4月25日/厚生労働省

対物業務についての算定項目を正しく理解していきましょう

薬剤調製料は2022年度の調剤報酬改定において新設され、薬剤師の対人業務と対物業務の評価項目が明確に区別されるようになりました。2024年度の調剤報酬改定においても、加算項目の見直しが行われ、評価体系がより一層整理されました。

薬剤の種類ごとに算定基準が異なるため、それぞれの要件を正しく理解し、適切に算定していきましょう。

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薬剤師コラム編集部

「m3.com」薬剤師コラム編集部です。
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