【2024年度改定版】無菌製剤処理加算の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

無菌製剤処理加算は、調剤技術料の中にある薬剤調製料に対する加算です。2024年の診療報酬改定で一部見直しが行われました。
本記事では、無菌製剤処理加算について、その算定要件や施設基準、改定でどのように見直されたのかなどを解説していきます。
無菌製剤処理加算とは
無菌製剤処理加算とは、対象薬剤を無菌室やクリーンベンチ、安全キャビネット等の無菌環境下で無菌的に製剤した場合に、1日分製剤するごとに所定点数を薬剤調製料に加算できる点数です。
算定するにあたって、あらかじめ届出が必要な加算となります。
また、無菌製剤処理を実施できる体制をとることは、地域連携薬局の認定要件にも含まれています。
2024年度調剤報酬改定における変更点
2024年度調剤報酬改定により、対象薬剤である麻薬について条件が変更され、麻薬を無菌的に充填して製剤する場合も、無菌製剤処理加算の算定対象となりました。
改定前まで、麻薬に関しては、生理食塩水等で希釈する場合も含め、2つ以上の注射薬を混合し、無菌的に麻薬を製剤する場合にのみ算定可能でした。
しかし、麻薬を希釈せずに無菌調剤するケースが4分の1を越えていることがわかり、2023年11月8日に行われた、中央社会保険医療協議会のなかで議題にあがりました。
この現状を踏まえ、希釈や混合をせずに製剤した場合でも、算定可能と、今回の改定で変更されました。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】厚生労働省保健局医療課
無菌製剤処理加算の算定要件
無菌製剤処理加算の算定要件は、以下の通りです。
算定対象薬剤
次に示す注射薬を無菌的に製剤した場合、算定対象となります。
無菌製剤処理加算の対象となる注射薬と、算定要件
対象薬剤 | 算定要件 |
中心静脈栄養法用輸液 | 2以上の注射薬を混合 |
抗悪性腫瘍剤 | 2以上の注射薬を混合 (生理食塩水等での希釈を含む) |
麻薬 | 2以上の注射薬を混合 (生理食塩水等での希釈を含む) 麻薬注射薬を無菌的に充填 |
ここにある「麻薬注射薬を無菌的に充填」という部分が、2024年に改定された部分となります。
抗悪性腫瘍剤で無菌製剤処理加算の対象となる薬剤は、悪性腫瘍等に対して用いる細胞毒性を有する注射剤として厚生労働大臣が指定した医薬品のみとなります。
また、無菌処理が必要なため、患者さん自身が投与時に混合する場合では無菌製剤処理加算は算定できません。
算定対象患者
算定できる点数は対象患者様の年齢によっても変わってきます。
無菌製剤処理加算の対象となる注射薬と、対象年齢ごとの点数
対象薬剤 | 6歳以上 | 6歳未満 |
中心静脈栄養法用輸液 | 69点 | 137点 |
抗悪性腫瘍剤 | 79点 | 147点 |
麻薬 | 69点 | 137点 |
つまり、無菌製剤処理加算の点数は一律ではなく、使用する薬剤や患者さんの年齢によって変わってきます。
算定条件
無菌製剤処理加算は、無菌的に製剤した場合に限り、1日につき1回算定ができます。
中心静脈栄養法用輸液、抗悪性腫瘍剤又は麻薬のうち、2つ以上をあわせてひとつの注射剤とした場合、重複しての加算はできません。
麻薬注射剤を無菌製剤処理した場合に算定可能な加算
麻薬注射剤を無菌製剤処理した場合、無菌製剤処理加算に加えて算定可能な加算もあります。
無菌製剤処理加算の対象となる麻薬と、算定要件
加算の種類 | 算定要件 |
麻薬加算 | 麻薬を調剤した際、1調剤につき70点が薬剤調製料に加算可能 |
麻薬管理指導加算 | 麻薬の服用、保管状況、副作用の有無などを確認し、必要な 管理や指導を行なった場合に100点または22点が加算可能 |
麻薬管理指導加算は、加算の元となる指導料やオンラインか対面かによって、算定できる点数が異なります。
麻薬管理指導加算について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考ください。
無菌製剤処理加算の施設基準
無菌製剤処理加算の施設基準は以下の通りです。
無菌製剤処理加算の施設基準
- 2名以上の保険薬剤師がいること(うち1名以上が常勤の保険薬剤師)
- 無菌製剤処理をおこなうため、無菌室(共同利用可能)、クリーンベンチ、安全キャビネットを備えていること
共同利用が可能なのは無菌室だけであり、クリーンベンチ、安全キャビネットは自身の薬局の設備でないと加算の届出は出来ません。
無菌調剤室を共同利用する場合
他の薬局の無菌調剤室を借りて調剤することで、無菌製剤処理加算は算定可能です。
その場合、無菌調剤室を提供していただける薬局と、共同利用に関して必要な事項を記載した契約書を事前に作成しておく必要があります。
また、無菌調剤室を共同利用する場合の費用は、両者で決めることとなっています。
無菌製剤処理加算を算定するための必要な届出
無菌製剤処理加算を算定するためには、前もって、地方厚生局等に届出が必要です。
また、無菌調剤室を共同利用する場合にも、提供していただける薬局と契約を取り交わし、その旨を届けることも必要です。
届出書類には以下の項目への記入が必要です。
無菌製剤処理加算を算定するための必要な届出
- 常勤・非常勤の保険薬剤師人数
- 無菌処理施設・設備について
- 無菌調剤室提供薬局の名称・所在地
他の薬局の無菌調剤室を借りて無菌調剤処理をおこなう場合のみ、無菌調剤室提供薬局の名称と所在地を記載します。また、提供薬局と交わした契約書等の写しの添付も必要となります。
以下は関東信越厚生局の届出書類です。薬局が所在する地域の地方厚生局のホームページからダウンロード可能です。
参照:別添2 特掲診療料の施設基準に係る届出書特掲診療料の施設基準に係る届出書/関東信越厚生局
参照:様式88 無菌製剤処理加算の施設基準に係る届出書添付書類無菌製剤処理加算の施設基準に係る届出書添付書類/関東信越厚生局
無菌製剤処理加算に関する疑義解釈
無菌製剤処理加算に関する疑義解釈の内容は、今まで解説してきましたが、再度まとめて記載いたします。
- 施設基準に適合した薬局において麻薬を無菌製剤処理した場合、無菌製剤 処理加算と併せて麻薬加算も算定可能と理解して良いか。 さらに、当該麻薬の服用及び保管状況等について説明の上で必要な薬学管理 等を行った場合は、無菌製剤処理加算及び麻薬加算と併せて麻薬管理指導加算 についても算定可能と理解して良いか。
- いずれも貴見のとおり。
- 中心静脈栄養法用輸液及び抗悪性腫瘍剤のうち1以上に加えて麻薬を合わせて一つの注射剤として無菌製剤処理を行い、主たるものとして、中心静脈栄 養法用輸液又は抗悪性腫瘍剤の所定点数のみを算定した場合であっても、無菌製剤処理加算と併せて麻薬加算も算定可能と理解して良いか。 さらに、当該麻薬の服用及び保管状況等について説明の上で必要な薬学管理 等を行った場合は、無菌製剤処理加算及び麻薬加算と併せて麻薬管理指導加算についても算定可能と理解して良いか。
- いずれも貴見のとおり。
- 中心静脈栄養法用輸液、抗悪性腫瘍剤又は麻薬のうち2以上を合わせて一つの注射剤として無菌製剤処理を行った場合、無菌製剤処理加算については、 主たるものの所定点数のみを算定すると理解して良いか。
- 貴見のとおり。
- 無菌調剤室を有しない薬局が他の薬局の無菌調剤室を利用して無菌製剤処 理を行った場合(薬事法施行規則第15条の9第1項のただし書における無菌調 剤室の共同利用)、予め無菌調剤室提供薬局の名称・所在地について地方厚生 局に届け出ていれば、無菌製剤処理加算を算定できると理解して良いか。
- 貴見のとおり。
- 以下について、無菌製剤処理料を算定できると理解して良いか。 ① 無菌製剤処理を行うにつき十分な施設又は設備を有しない薬局の薬剤師 が、他局の無菌調剤室を利用して無菌製剤処理を行う ② 無菌製剤処理を行うにつき十分な施設又は設備を有しない薬局の薬剤師 が、他局のクリーンベンチを利用して無菌製剤処理を行う
- ①については、薬事法施行規則第15条の9第1項のただし書に該当するケー スであり、届出を行った上で算定可能である。 ②の設備(クリーンベンチ、安全キャビネット)の共同利用については、薬事 法において認められていない。
出典:疑義解釈資料の送付について(その1) 事務連絡平成26年3月31日/厚生労働省保険局医療課
算定要件を理解し、正しく算定していきましょう
無菌製剤処理加算を算定するためのポイントは以下の通りです。
無菌製剤処理加算の算定ポイント
- あらかじめ届出が必要
- 無菌室、クリーンベンチ、安全キャビネットで無菌的に調剤した場合に算定可能。
- 無菌室は共同利用でも算定可能
- 対象薬剤や患者様の年齢によって点数が変わってくる
また、2024年の調剤報酬改定で、麻薬の注射薬を無菌的に充填した場合も加算対象となりました。
今後ますます在宅医療が広がり、無菌調剤ができる薬局の重要性は高まることでしょう。
無菌調剤の体制を整える、または共同利用ができる薬局と連携しておくことはもちろん、薬剤師として、無菌調剤ができるスキルも身につけておきましょう。