【2024年度改定版】専門医療関連連携薬局とは?認定要件などわかりやすく解説
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「専門医療機関連携薬局」は専門的な知識を持つ薬剤師が患者の薬物療法を支える役割ことを目的に、2021年に新たな薬局機能として法的に位置づけられました。
医薬分業に始まり、役割が細分化されている医療・薬剤師業界の中で注目されている専門医療機関連携薬局の求められている機能、認定要件についてまとめています。
専門医療機関連携薬局とは
高齢化社会の進行や医療の高度化に伴い、患者が自身に適した薬局を選択出来るよう、「専門医療機関連携薬局」と「地域連携薬局」が設立されました。
これは2015年に厚生労働省が掲げた「患者のための薬局ビジョン」に基づき、地域における薬局の役割を再定義された動きの一つです。
特に医療の高度化・進歩は目覚ましく、新しい治療が誕生する一方管理の重要性も高まっています。
- 多剤投与による薬剤管理の複雑化や副作用の懸念増加
- 外来による抗がん剤治療の増加
- 高齢化による在宅医療の需要
これらの背景から、患者が安心して高度かつ専門的な薬物療法を受けられるがんなどの特定の傷病に対して専門的な薬学的管理を提供する薬局の必要性が高まりました。
「患者のための薬局ビジョン」とは
厚生労働省が2015年に策定した薬局の転換を目指す道筋を示したものです。薬局を従来の「薬を調剤する場」から「患者に寄り添い、薬物療法を支援する場」へと転換させ、患者・住民から真に評価される医薬分業の実現を目標としています。
このビジョンを具体化するために3つの認定が創設されました。
「患者のための薬局ビジョン」3つの認定薬局
① 健康サポート機能⇒健康サポート薬局
- 国民の病気の予防や健康サポートに貢献
- セルフメディケーション支援や地域住民の健康維持・増進を目的に健康相談や情報提供を行う。
② 高度薬学管理機能⇒専門医療機関連携薬局
- 高度な薬学的管理ニーズへの対応
- 特定疾患の専門知識を有した薬剤師が在籍し、医療機関と連携して高度な薬学的管理を行う。
③ かかりつけ薬剤師/薬局⇒地域連携薬局
- 地域の医療機関や在宅医療を支援し、切れ目のない医療提供体制の構築
- 服薬情報の一元的/継続的把握、24時間対応/在宅対応、医療機関等との連携を行う。
患者中心の医薬分業を進めることで、以下のことが実現できると期待されています。
医薬分業のメリット
- 複数診療科を受診した場合でも、多剤/重複投薬重複投薬等や相互作用が防止される。
- 薬の副作用や期待される効果の継続的な確認を受けられる。
- 在宅で療養する患者も、行き届いた薬学的管理が受けられる
- かかりつけ薬剤師からの丁寧な説明により、薬への理解が深まり、飲み忘れ、飲み残しが防止される。
参照:専門医療機関連携薬局について/令和6年12月16日 第11回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会 資料3/厚生労働省
専門医療機関連携薬局の4つの認定要件
専門医療機関連携薬局の認定には主に以下の4つの要件を満たす必要があります。
1. 傷病区分
認定に当たり必要な基準として厚生労働省令で定める傷病区分は「がん」とすること、となっています。
現時点では認定に当たり、必要な基準はがんの区分に対応しているものの、今後新たに傷病の区分が追加された際にはそれらに対応する基準を定めることとされているため、更新された際には確認をする必要があります。
2. 患者の心身の状況に配慮した構造設備
患者が安心して薬に関する相談をできるよう、プライバシーに配慮した相談スペースを設置する必要があります。具体的な対応は、薬局の規模や構造によって異なるため、特定の設備の記載はないものの、個室またはパーティションなどで区切られた空間を用意し、プライバシー保護を徹底する必要があります。
また、設備だけでなく薬剤師の態度や声の大きさなども患者への安心感に大きな影響を及ぼします。
薬剤師の対応方法についても薬局内で検討・周知を行い、患者が安心できる環境の確保に努めることが求められています。
加えて高齢者や障碍者等にとっても利用しやすいバリアフリーを心掛けた構造設備も必要になります。
具体例として患者の動線や利用するエリアには手すりを設置すること、入り口に談座が無いこと、車いすでも来局できる構造であることなどがあげられます。
3. 患者及び患者に必要な薬剤の情報を他の医療機関と共有ができる体制
病院・診療所などの医療機関と連携し、患者の服薬状況や副作用情報などを迅速に共有できる体制を整える必要があります。
具体的には過去一年間において、患者の治療方針を共有するためにがん治療に係る医療機関との間で開催される会議に参加していること、その医療機関に勤務する薬剤師(病院薬剤師)等との連携の実績あることがあげられます。
医療機関だけでなく、地域の他の薬局との連携体制の構築も求められます。
4. 専門的な薬学的知見に基づく調剤と指導業務を行うことが出来る体制
該当する疾患領域において専門的な研修を修了し、認定を受けた薬剤師を常駐させる必要があります。
加えて、常勤している薬剤師の過半数が継続して1年以上常勤していることも要件となっています。
その他にも
- 麻薬の調剤対応が出来ること
- 充分な在庫を有していること
- 開店時間外でも患者からの相談に対応出来る体制を整えること
- 休日及び夜間であっても調剤の求めがあった際には地域の他の薬局と連携して対応出来る体制を整えること
- 医療安全対策を講じていること
なども記載されています。
専門医療機関連携薬局の認定申請に当たっては認定の基準に適合していることが分かる書類を揃えて都道府県知事に提出します。このとき、専門性の認定を受けた薬剤師の変更があった際には30日以内に届出をする必要があります。
参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)/薬生 発0129第 6号 令和 3 年1 月29日/厚生労働省
地域連携薬局との違い
専門医療機関連携薬局と地域連携薬局は、いずれも患者に適切な薬物療法を提供するための薬局ですが、役割や要件が異なります。
専門医療機関連携薬局 | 地域連携薬局 | |
役割 | がん等の専門的な薬学管理に関係機関と連携して対応できる薬局 | 入退院時の医療機関等との情報連携や、在宅医療等に地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応できる薬局 |
対象疾患 | がん | 幅広い疾患・在宅医療にも対応 |
専門性 | 専門研修を修了した薬剤師の配置が必須 | 薬剤師に特別な専門資格は不要 |
地域連携 | 高度医療機関との情報共有が必須 | 地域の医療機関や薬局との連携が中心 |
相談体制 | 専門的な薬学的相談に対応する体制が必要 | 在宅医療や一般的な相談に幅広く対応 |
このように、専門医療機関連携薬局は疾患ごと(現在はがんのみ)の専門性を担保する役割を担う一方、地域連携薬局は地域に根ざした医療提供を主な目的としています。
専門医療機関連携薬局と地域連携薬局の認定取得に関して詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
参照:地域における薬局・薬剤師のあり方について/令和6年3月25日 第3回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会 資料5/厚生労働省
専門医療機関連携薬局の現状
専門医療機関連携薬局の認定数は年々増加しています。(2023年9月末時点で205件)
また、がんの罹患数は年々増加傾向にあり、2020年には新たに診断されたがん患者数が94,5055人と報告されており、需要は増々高まることが想定されます。
現在、傷病の区分として「がん」のみが対象疾患となっていますが、今後は「HIV」や「小児(疾病)」についても検討が勧められることで専門医療機関連携薬局の役割は重要なものとなります。
患者の薬物療法を安全かつ効果的に支援する体制が整いつつありますが、専門薬剤師の育成や医療機関との連携体制の強化が今後の課題として考えられます。
薬剤師の専門性を活かして地域医療への貢献を
専門医療機関連携薬局は、特定の疾患に対する専門的な薬学的管理を提供する薬局として、地域医療における重要な役割を担っており、今後需要が高まることが予想されます。
認定を受けるためには、専門性の高い薬剤師の配置や医療機関との情報共有体制など、複数の要件を満たす必要があります。
また、地域連携薬局との違いを理解することで、それぞれの薬局が地域医療において補完的な役割を果たしていることが明確になります。
新たな制度の理解を深めることで薬剤師としての知識やスキルがさらに深まり、今後のキャリアを拡げることに繋がると考えられます。
参照:専門医療機関連携薬局について/令和6年12月16日 第11回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会 資料3/厚生労働省