服用薬剤調整支援料1の算定要件や注意点、具体例について詳しく解説!

高齢化が進む中、ポリファーマシーの解消は医療における重要な課題のひとつです。服用薬剤調整支援料の算定を通して、薬剤師がますます対人業務で力を発揮していくことが期待されていますが、適切に理解し、活用できているでしょうか?また、「実際にどういった処方で減薬提案ができるのかわからない」と感じている方も多いかもしれません。この記事では、服用薬剤調整支援料の算定要件に加え、減薬提案が検討できる処方例についても解説します。今後自信を持って服用薬剤調整支援料1を算定できるよう、ぜひ参考にしてください。
服用薬剤調整支援料1とは
服用薬剤調整支援料1とは、内服薬を6種類以上継続して服用中の患者を対象とした、ポリファーマシー解消の取り組みを評価するために、2018年に新設されました。
近年高齢化が進み、ポリファーマシーが医療における大きな問題となる中、薬剤師が適切に減薬に関わっていくことが期待されています。
服用薬剤調整支援料は、薬局機能の評価基準となる地域支援体制加算を算定する際に必要な実績の一つでもあり、対人業務として今後さらに重要視されていくでしょう。
服用薬剤調整支援料1の算定要件と点数
服用薬剤調製支援料1の算定要件と点数は以下の通りです。
算定対象患者 | 継続服用中の内服薬が6種類以上の患者 |
算定点数 | 月に1回125点 |
算定条件 | 薬局薬剤師が医師へ減薬の必要性を提案し、2種類以上の内服薬が減薬。 減薬した状態が4週間以上継続した場合に算定可能。 |
施設基準 | なし |
※配合剤や内服薬以外の薬剤への変更を保険薬剤師が提案したことで減少した場合は、減少した種類数に含めない。
※減薬した薬のうち、少なくとも1種類は薬局薬剤師が提案した薬でなければいけない。
内服薬の数え方
服用薬剤調整支援料1の算定では、内服薬の種類数が重要となります。ここでは、内服薬の数え方を確認していきましょう。
【内服薬の種類数に含まれるもの】
以下の薬を1銘柄ごとに1種類として計算します。
- 錠剤
- カプセル剤
- 散剤
- 顆粒剤
- 液剤
【内服薬の種類数に含まれないもの】
- 屯服薬
- 浸煎薬、湯薬
- 内服薬の服用を開始して4週間以内の薬剤
- 調剤している調剤している内服薬と同一薬効分類の有効成分を含む配合剤や内服薬以外の薬剤への変更を保険薬剤師が提案したことで減少した場合は、減少した種類数に含めない。
参照:調剤報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成30年3月30日 /厚生労働省
服用薬剤調整支援料1の算定タイミング
服用薬剤調整支援料1を算定するタイミングは、薬局薬剤師が医師に文書にて減薬の提案を行い、その後2種類以上の内服薬が減薬した状態で4週間以上継続したときです。
ただし、服用薬剤調整支援料1は2種類以上の薬剤を同時に減薬していない場合でも算定が可能です。減薬の提案以降2種類以上の減薬がされ、どちらも減薬後4週間以上継続した時点で服用薬剤調整支援料1が算定できます。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成30年3月30日 /厚生労働省
服用薬剤調整支援料1算定時の注意点
ここでは、服用薬剤調製支援料1を算定する際に忘れてはいけない実施事項や、注意が必要なケースについて確認していきます。
薬歴・調剤報酬明細書への記載事項
服用薬剤調整支援料1を算定するためには、必要な情報を薬歴や調剤報酬明細書に記載する必要があります。以下の内容を忘れず記録に残しておきましょう。
【薬歴への記載事項】
- 患者の意向
- 減薬の提案をするまでの薬学的見地から検討した内容
- 医療機関から提供された薬剤調整に関する情報
【調剤報酬明細書への記載事項】
- 保険医療機関名
- 保険医療機関における調整前後の薬剤の種類数
副作用の有無を確認
服用薬剤調整支援料1を算定する際は、当該患者の服薬アドヒアランス及び副作用の可能性等を検討する必要があります。
副作用の確認には以下の資料等を参考にしましょう。
参考資料一覧
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)/厚生労働省
高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))/厚生労働省
病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方 /厚生労働省
日本老年医学会のガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン ) 等
同じ患者に対して2度目の算定をする場合
以前服用薬剤調整支援料1を算定したことがある患者であったとしても、要件満たしていれば再度算定が可能です。
ただし、前回の算定から1年を経過していない場合は注意が必要です。
前回の算定で減薬した後の内服薬の種類数から、さらに2種類以上を減薬があった場合に限り算定が可能です。
〈2回目の服用薬剤調製支援料1 算定可能例〉
1回目の減薬:8種類→6種類
〜1年未満で再度減薬提案〜
2回目の減薬:6種類→4種類
服用薬剤調整支援料1との併算定ができない項目
服用薬剤調整支援料1は以下の調剤技術料及び薬学管理料を算定している場合は、原則算定ができません。
- かかりつけ薬剤師包括管理料
- 特別調剤基本料B
- 重複投薬・相互作用等防止加算
- 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
※重複投薬・相互作用等防止加算、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料については、服用薬剤調整支援料1に係る提案をおこなった直後に受け付けた当該処方医の処方箋が、提案内容と同じ処方内容だった場合は算定できないとされています。
服用薬剤調整支援料1と2の違い
服用薬剤調整支援料は1と2があり、いずれも多剤服用患者に対する取り組みを評価するものですが、その対象となる患者や、評価の基準には違いがあります。大きな違いとして、服用薬剤調整支援料1は、「ポリファーマシーの解消」が主な目的であり、実際に減薬となった結果が算定要件となりますが、服用薬剤調整支援料2は薬効が似た薬を複数服用している患者の「重複投薬の解消」が目的であり、減薬提案をおこなった後の減薬の結果は算定要件には含まれません。
服用薬剤調整支援料1 | 服用薬剤調整支援料2 | |
算定対象患者 | 服用開始後4週間以上経過した内服薬6種類以上を薬局で調剤している患者 | 複数の医療機関から内服薬を6種類以上処方されている患者 |
目的 | ポリファーマシーの解消 | 重複投薬の解消 |
算定点数 | 125点(月1回) | イ 110点 ロ 90点 (3ヶ月に1回) |
算定要件 | 当該保険薬局で調剤している当該内服薬の種類数が2種類以上 (うち少なくとも1種類は当該保険薬局の保険薬剤師が提案したものとする。) 減少し、その状態が4週間以上継続した場合 |
重複投薬解消のための取り組みをおこなった場合 |
患者の意向 | 確認の必要あり | 確認の必要あり |
減薬の必要性 | あり | なし |
服用薬剤調整支援料の算定に関してさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
減薬提案が検討できる処方例
ここからは、実際にどのような処方の場合、薬剤師からの減薬提案がしやすいかを確認していきましょう。
消化器系の薬を長期継続している場合
多くの薬を飲んでいる患者の中には、複数の消化器系の薬を長期継続しているケースがあります。
特に便秘薬や胃薬などの薬は、症状が改善した後も漫然と服用を続けている可能性がありますので、現在の症状の聞き取りが重要です。
服用を続けている理由や、症状が安定しているようであれば減薬の意志があるか、服薬指導時に声かけをしてみるとよいでしょう。
処方カスケードの可能性がある場合
「処方カスケード」とは、薬の副作用によって生じている症状を治療するために、さらに別の薬が処方されている状態のことを指します。
このようにして、本来不要であった薬の処方によりポリファーマシーが進んでしまっていることがあります。
薬剤師は患者の処方内容や症状、聞き取り内容などのあらゆる視点から副作用について検討し、処方カスケードの可能性も踏まえて減薬の提案をしていくことが重要です。
複数の医療機関で薬をもらっている場合
複数の医療機関を受診している場合も、減薬提案が可能か確認すると良いでしょう。患者によっては、他の医療機関でもらっている薬について、別の病院で詳しく伝えておらず、不要な処方が出てしまっていることがあります。
お薬手帳などから、全ての医療機関での処方状況を把握した上で、減薬の必要性があると判断した場合は、その旨を医師に提案をすることで服用薬剤調整支援料1の算定につながる可能性があります。
減薬の提案ができる薬が1種類の場合
複数の薬を服用していても、治療上2種類以上の減薬が難しく、1種類しか提案ができない場合もあるでしょう。
服用薬剤調整支援料1の算定要件では、減薬となった種類数については以下のように定められています。
2種類以上の内服薬
※減薬された薬剤のうち、少なくとも1種類は薬局薬剤師が減薬を提案した薬剤であること
このように、たとえ提案が1種類であったとしても、結果的に2種類以上減薬になった場合は服用薬剤調製支援料1の算定が可能です。
薬局薬剤師の減薬提案がきっかけで再度血液検査をしたり、処方全体の見直しを行ったりすることで2種類以上が減薬となる場合があります。
また、服用薬剤調整支援料1が算定できない場合も、提案を行ったことで服用薬剤調整支援料2や情報提供料といった他の評価項目の算定が可能な場合もありますので、積極的に文書にて医師に提案を行ってみると良いでしょう。
服用薬剤調整支援料1を算定しやすい症例についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
服用薬剤調整支援料1の算定処方例
ここでは服用薬剤調整支援料1の算定が検討可能な例を紹介します。
多剤併用患者の処方を目にする機会が多い一方、減薬のアプローチ方法に迷っている方もいると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
処方例
年齢:78歳
性別:男性
現病歴:高血圧、脂質異常症、慢性便秘、変形性関節症、不眠症
4科に受診、以下の処方を半年以上継続して服用中。毎回全てこちらの薬局で調剤。
① 内科
1. アムロジピン錠 5mg 1錠 分1 朝食後
2. アトルバスタチン錠 10mg 1錠 分1 夕食後
② 整形外科
3. ロキソプロフェンNa錠 60mg 3錠 分3 毎食後
4. レバミピド錠 100mg 3錠 分3 毎食後
③ 精神科
5. エスシタロプラム錠 10mg 1錠 分1 朝食後
6. ロラゼパム錠 0.5mg 1錠 分1 就寝前
④ 消化器科
7. 酸化マグネシウム錠 330mg 2錠 分2 朝・夕食後
8. ピコスルファートNa液 5mL 分1 就寝前
【ポイント】
この患者は、「内服を開始して4週間以上経過」「内服薬6種類以上を保険薬局で調剤」という要件を満たしており、服用薬剤調整支援料1の算定を検討することができます。