【2024年度改定版】がん薬物療法体制充実加算の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

近年、がん治療といった専門的で高度な治療に、薬剤師が積極的に関わっていくことが期待されています。2024年度の診療報酬改定では、がん治療に関する様々な見直しが行われました。その中でも、病院薬剤師にとって待望の加算とも言われる「がん薬物療法体制充実加算」について今回は詳しく解説していきます。
がん薬物療法体制充実加算の算定要件や点数、施設基準等のみならず、新設された背景や、外来腫瘍化学療法診療料についても確認していきましょう。
がん薬物料法体制充実加算とは?
がん薬物療法体制充実加算とは、2024年度診療報酬改定において、外来腫瘍化学療法診療科の加算として新設された項目です。
患者が外来腫瘍化学療法を受ける際、薬剤師が医師の診察前に服用状況や副作用等の情報を収集したり医師へ処方に関する提案をしたりすることで加算が算定できるようになりました。これにより、さらに安全な外来化学療法を患者が安心して受けられるようになることが期待されています。
外来腫瘍化学療法の普及と推進
日本では2人に1人ががんを発症すると言われるほどその罹患率は高いですが、近年治療方法の選択の幅が広がり、外来で化学療法を受けながら日常生活を続けることが可能なケースも多くなってきています。
そういった中で、医療従事者がいかに患者の負担を減らし、安心して外来で化学療法を受ける場を提供できるかが、重要になってきています。
2024年度の診療報酬改定では、がん治療に関わる項目において要件や評価の見直しが行われました。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【医科全体版】 /厚生労働省
2024年度診療報酬改定のポイント
2024年度診療報酬改定における基本方針の一つとして、「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」が掲げられました。また、具体的に挙げられた例のうち、「外来医療の機能分化・強化等」に基づいて、今回「がん薬物療法体制充実加算」が新設され、その加算対象である外来腫瘍化学療法診療科の算定要件にも変更が加えられました。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【医科全体版】 /厚生労働省
外来腫瘍化学療法診療科とは
外来腫瘍化学療法診療料とは、悪性腫瘍の患者に対する外来における安心・安全な化学療法を実施することを目的とした、抗がん剤投与患者を対象とした医学管理料です。
算定要件は以下のように定められています。
外来腫瘍化学療法診療科の算定要件
外来腫瘍化学療法診療科は、入院中の患者以外の悪性腫瘍を主病とする患者に対して、患者の同意を得た上で化学療法の経験を有する医師、化学療法に従事した経験を有する専任の看護師及び化学療法に係る調剤の経験を有する専任の薬剤師が必要に応じてその他の職種と共同して注射による外来化学療法の実施その他の必要な治療管理を行った場合に算定します。
外来腫瘍化学療法診療科は1・2・3の区分があり、それぞれの算定点数は以下のとおりです。
算定区分 | 外来腫瘍 化学療法 診療科1 |
外来腫瘍 化学療法 診療科2 |
外来腫瘍 化学療法 診療科3 |
||
イ | 抗悪性腫瘍剤を 投与した場合 |
(1)初回から 3回目まで |
800点 | 600点 | 540点 |
(2)4回目以降 | 450点 | 320点 | 280点 | ||
ロ | イ以外の必要な治療管理を行った場合 | 350点 | 220点 | 180点 |
2024年度の診療報酬改定では、外来腫瘍化学療法1、2の算定要件や算定点数が見直されたことに加え、外来腫瘍化学療法3が新設されました。
がん薬物療法体制充実加算が算定できるのは、外来腫瘍化学療法診療科1のイの(1)を算定している場合のみです。
この区分は、抗悪性腫瘍剤の使用を始めたばかりの患者が対象となるため、安全に治療を続けられるよう、服用状況や副作用の有無といった情報の聞き取りを行い、安心して治療を続けられるようにサポートしていきましょう。
参照:医科診療報酬点数表 /厚生労働省
がん薬物療法体制充実加算の算定要件・点数
がん薬物療法体制充実加算の算定要件は以下の通りです。
算定要件 | |
算定点数 | 100点(月1回に限り) |
対象医療機関 | 外来腫瘍化学療法診療科1の施設基準を満たす医療機関 |
対象患者 | 外来腫瘍化学療法診療科1のイの(1)を算定する患者 |
実施するべき業務 | 医師の指示に基づき、以下の業務を実施 ・服薬状況、副作用の有無等の情報の収集及び評価 ・医師の診察前に情報提供や処方の提案等 |
薬剤師が医師の診察前に介入することが算定要件となっており、実際に患者が外来で化学療法を受ける際の流れは以下の通りとなります。
外来腫瘍化学療法当日の流れ
①来院・採血
②薬剤師の面談 ※診察前の時間を活用
・患者情報の収集、評価及び医師との情報共有
(服薬状況、副作用の有無等)
- 患者から聴取した情報
- 薬局から提供された情報
- 自宅での体調変化等を記録した文書(患者日誌等)による情報
・診察前の処方提案
(投与量の変更、支持療法に係る薬剤等)
④医師の診察
⑤外来化学療法室で抗悪性腫瘍剤投与
薬剤師が「医師の診察前に」収集した情報に関して情報共有することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 当日の処方や指示に反映させる
- 診察にかかる時間の短縮
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【外来】 /厚生労働省保健局医療課
がん薬物療法体制充実加算の施設基準
がん薬物療法体制充実加算の施設基準は以下の通りです。
がん薬物療法体制充実加算の施設基準
(1)以下の条件を満たす専任の常勤薬剤師が配置されていること。
・化学療法に係る調剤の経験が5年以上
・40時間以上のがんに係る適切な研修を修了
・がん患者に対する薬剤管理指導の実績を50症例以上
(複数のがん種であることが望ましい。
(2)患者の希望に応じて、患者の心理状況及びプライバシーに十分配慮した構造の個室を使用できるように備えていること。
(3)薬剤師が医師の診察前に患者から服薬状況、副作用等の情報収集及び評価を実施し、情報提供や処方提案等を行った上で、医師がそれを踏まえて、より適切な診療方針を立てることができる体制が整備されていること。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【外来】 /厚生労働省保健局医療課
算定に必要な届出
がん薬物療法体制充実加算を算定するためには、地方厚生局等への届出が必要です。
様式39の3 がん薬物療法体制充実加算の施設基準に係る届出書添付書類 を使用しましょう。
外来腫瘍化学療法で薬剤師に期待されること
これまで解説をしてきたとおり、がん薬物療法体制充実加算の算定を通して、病院薬剤師がますます外来化学療法に対して関わっていくことが期待されています。